常磐線(2)『小説新潮』に掲載された彩瀬まるさんの手記

 3月11日の数日後、地震当日の常磐線の列車は、岩沼付近の沿線火事でダイヤが乱れていたらしい、ということを耳にした。確かに前回紹介した貨物92列車は、岩沼発13時53分発のダイヤだから、通常ならもっと南に位置していなければならない。この新地で被災した普通244Mも新地発14時37分発で、通常なら相馬に到着している。
 大震災で混乱する中、岩沼付近で火事があったかどうか、確認しようかどうか迷っていた。そんな折、小社刊『小説新潮』5月号に旅行中に震災に遭遇した作家の手記が掲載されていることを知る。それが作家彩瀬まるさんの「川と星 東日本大震災に遭って」だった。彩瀬さんはなんとこの244Mに仙台から乗車、「線路沿いが燃えている」影響で電車がのろのろ運転するようすをしっかりと書き留めている。やはり沿線の火事でダイヤが乱れていたのだ。
 この手記は津波直前の新地駅の様子を伝える貴重な証言となっている。4両編成の1部が跨線橋の下に停車していたこと、駅舎の窓が割れていること、電信柱が今にも倒れそうになっていることなど、津波で電車は流され、駅舎も電信柱もきれいさっぱりなくなった今となっては確かめようもない。手記は彩瀬さんが見ず知らずの人々に助けられながら、東京の自宅に辿り着くまでの話である。電子書籍化されているので、是非、ご高覧いただきたい。
 本誌には常磐線に関わる部分を抜粋、書き足していただいた原稿を、「ドキュメント 乗客の証言」として掲載した。


乗客を避難させて逃げ遅れた乗務員3人は、跨線橋の上で津波をやり過ごし、一晩をすごしたという 撮影/編集部 4月29日


解体されたE721系。4月末の取材時にはかなり片付けが進んでいた 撮影/編集部 4月29日


常磐線 <投稿日:2011年10月17日>
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