すでに2区間で運転再開をしている北リアス線とは違い、未だ全線で運休が続いている。「トンネルを出ると津波被害」が南リアス線の状況。全線至る所で寸断されている。ホーム下の駅事務所が浸水した釜石から2駅目の唐丹。奥州藤原氏の唐との密貿易を起源とする説もある地名らしい。
唐丹駅は唐丹湾に面して、道路を隔ててすぐ前が海。地形からするとひとたまりもない感じがある。しかし、駅前の自動販売機等は流出したようだが、ホーム、待合室などはほぼ無事。われわれが訪れた時は、瓦礫が多少残っている程度だった。
ひとたまりもなかったのは、唐丹から吉浜に向かう途中の熊木トンネルと鍬台トンネルの間の熊野川(この川は鮭が遡上することで有名)に架かる荒川橋梁(コンクリート橋)。 無残にも崩れ落ち、線路がトンネルから大きく曲がって落ちているところが、雑誌のグラビアにもなった。
3月11日の地震が発生したとき、盛発釜石行きの列車は2人の乗客を乗せて、鍬台トンネル(3906m)内を走行中だった。つまり津波で崩れ落ちた橋に向かっていたことになるが、そのエピソードは『週刊プレイボーイ』6月6日号、6月30日付け毎日新聞、7月4日付け朝日新聞などで紹介されている。列車は約2時間の停車ののち、休石(やすみいし)運転士が乗客2名とともに、吉浜側に逃れ無事だった。
写真は6月24日、3ヵ月半ぶりにトンネルから引き出された車両で、休石さんが自ら運転した。
鍬台トンネルから出る車両 撮影/三陸鉄道 6月24日
手前の海から津波はこの駅を乗り越えた 撮影/編集部 5月2日
砂利が抉れたり、電柱が傾斜はしているものの、ホームや待合室は無事だった 撮影/編集部 5月2日
唐丹~吉浜の熊木トンネル吉浜側 撮影/編集部 5月28日
熊野川に架かる荒川橋梁の全容 撮影/編集部 5月28日