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中村好文『住宅読本』

いま住宅はブームです。自然素材、高断熱、高気密等々、ノウハウ本もたくさん出ています。もちろんそれらも大事です。けれど、もっと大切なことが住宅にはあるのではないか――そう思って、この本をつくりました。少しでもたくさんの方々に読んでいただけたら幸いです。(中村好文)
多少の散乱ぐらいでへこたれない大らかな台所、階段の手摺の手ざわりのよさ、格式張らない床の間のような場所、家具と一緒に暮らすという気持ち……住宅設計の達人が考え抜いた「心地よい住まい」に必要な条件を、約70点のカラー写真やイラストでわかりやすく解説します。

住宅を“暮らしの内側から”考えた待望の書!

目次
■ 第1章 風景 ■ 第7章 子供
■ 第2章 ワンルーム ■ 第8章 手ざわり
■ 第3章 居心地 ■ 第9章 床の間
■ 第4章 火 ■ 第10章 家具
■ 第5章 遊び心 ■ 第11章 住み継ぐ
■ 第6章 台所&食卓 ■ 第12章 あかり

購入

『住宅読本』中村好文

定価2940円/B5判/
ハードカバー/128頁
ISBN:978-4-10-435003-2
6月22日発売


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「心地よい住まい」の条件……その2 ワンルーム


『森の生活』のゆかりの地、マサチューセッツ州ウォールデン・ポンドのほとりに復原されたヘンリー・デヴィッド・ソローの小屋。床面積を日本風に言えば4.2坪のワンルームの小屋。知識人が人里離れて隠棲し、たったひとりで、あるいはもうひとりの自分と向かい合って暮らす小屋、という意味では、鴨長明の方丈に酷似しています。こういう小屋が、私のような「小屋好き人間」の琴線を容赦なくピンピン弾くのです。

「心地よい住まい」の条件……その10 家具
「家具は人に付く」といいますが本当ですね。写真は20年ほど前の我が家ですが、このときから今までに三度の引っ越しがあったのに、大テーブルをはじめ取り巻いている椅子たちは、いまだに健在で私たちに付いてまわり、家族の一員みたいな顔をして仲良くいっしょに暮らしています。

「心地よい住まい」の条件……その11 住み継ぐ
古い街並の残っている京都などで、道路に面した千本格子が塵ひとつなく拭き清められ、惚れ惚れする風合になっている様子に見とれることがありますが、そうした日々の手入れを大切にしているのは日本ばかりではありません。上は、私がイタリア南部、アルベロベッロの街を早朝に散歩していて見かけた光景です。年配のおばさんが、なんと石畳の道路を、一心不乱に雑巾掛けしていました。