何十万もの熱狂的読者を持ち、バックパッカーのバイブルと呼ばれ、既に古典の風格すら備えている『深夜特急』。第三便の刊行から十六年の時を経て、遂に〈最終便〉が走り出す! 本編には書かれていない裏話や、沢木耕太郎ができるまで、ともいうべきデビュー直後の秘話など、旅に関する文章の集大成となる、初の長編エッセイ。
ISBN:978-4-10-327513-8/2008年11月28日発売/1,760円
あるとき、老齢になられた外国文学の研究者が、誰にでも一世一代の旅というのがあるものらしい、と語っていたことがありました。でも、その「一世一代」というのは必ずしも距離の遠さや期間の長さについて述べられたものではないはずです。どんなに遠くに、どんなに長く旅したとしても、ただの旅にすぎないということはありえるからです。もし、私がその「一世一代の旅」を翻訳すれば、「取り返しのつかない旅」ということになるような気がします。良くも悪くも取り返しがつかない。それは、もうそのような旅は二度とできない、ということを意味します。私の『深夜特急』の旅も、たぶん「取り返しのつかない旅」だったのです。(筆者談)