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新潮新書

今月の編集長便り 毎月10日のメルマガで配信さている「編集長から」を「今月の編集長便り」として再録しました。こんなことを考えながら日々仕事しています。

現代社会の変質を読み解く

 先日、車のディーラーに行ったときのことです。新車で買って2年、まだ何年も走れることは言うまでもありませんが、案の定、乗り換えを勧められました。かつて車の買い替えメドはざっくり10年とか10万キロとかいわれたものですが、今やサブスクやリースが当たり前になり、大枚はたいても長く付き合う「愛車」イメージは年々薄れています。
2025/02

新しい年の始まりに

 2025年、新たな年が始まりました。人それぞれに、新しい目標を立てた方も少なくないと思います。もっとも、私自身はこれまで「新年の誓い」を立てたことがありません。性格ゆえか年齢のせいかはわかりませんが、一度としてそうした気分にならないのです。
 それでも、聞けば「なるほど」と感じる言葉もあります──「メメント・モリ」──ラテン語で、もとは「人間いつ死ぬかわからないから楽しめ」というのが原義だったようですが、転じて「常に死を想え」という、ちょっと戒めめいた定番フレーズになったとか。これなら一年、あるいは人生のどの地点でも、原点に立ち返ることができそうです。
2025/01

年の終わりに考え直してみる

 今年もはや師走になりました。トラックドライバーの労働時間を厳しく管理する「物流2024年問題」をはじめ、国が進める「働き方改革」とあいまって、様々な業界で人手不足が深刻になっています。出版業界はどうかというと、ご多分にもれず10年、20年前と比べれば年々厳しくなっているというのが実感です。とりわけ年末年始の休暇を控えた「年末進行」のこの時期は、雑誌も書籍も、諸々の前倒し作業に追われています。
2024/12

現代の風景、人生の断面

 先日、新宿の某百貨店の前に朝から長蛇の列ができており、その先にあったのは有名な時計のブランドショップでした。いささか奇妙なのは、並んでいるのはどちらかと言うと風采のあがらない、とても高級腕時計を着けそうには見えない若者が多かったこと。そこで思い浮かんだのが11月新刊『転売ヤー 闇の経済学』(奥窪優木・著)。なるほど、行列は人気のモデルを入手して転売するのが目的かと推測されました。
2024/11