穏やか(メロウ)な事件
新潮編集長 矢野優
「新潮」8月号
定価900円
7月7日発売
'94年刊行の『ラヴリィ』(小社刊・絶版)を最後に、その作家は文学界から姿を消し、世紀の変わり目に、ようやく評価を得た。「この作品以後、ありうべき小説というものを、すくなくとも日本語において、筆者は想像することができないからだ。それほどまでに『ラヴリィ』は美しく、かっこ悪く、そして過激だ」(椹木野衣氏)。「『ラヴリィ』こそ、九〇年代を象徴する作品として記憶されるべきかもしれない。(略)今日の時点から見れば、いわゆるJ文学的なるものが展開しているようなもの――アヴァン・ポップ、ポスト・パンクの日本的展開――すべてを、あらかじめ、しかも彼ら(中原昌也を除く)が今後百年書き続けても到達できないような高い水準で実現してしまっている」(福田和也氏)。十年の沈黙を破り、その作家、田口賢司氏が『メロウ1983』(180枚)を発表する。
柄谷行人氏と福田和也氏による対話「現代批評の核(コア)」は、国家・テクノロジー・文学の今を生々しく提示する。
|