女による女のためのR-18文学賞

新潮社

第21回受賞作品
受賞の言葉

王冠ロゴ 友近賞受賞

「いい人じゃない」

古池ねじ(こいけ・ねじ)

愛知県出身。東京都在住。文筆業。既刊二冊。推理小説が好きです。

受賞の言葉

やってきたこと

 学生の頃、よく作家の講演会に行きました。
 質疑応答のコーナーでの定番の質問は「小説家志望の人へアドバイスは?」です。たいていの作家さんは同じことを答えていました。
「書き続けることです」
 今よりさらにひねくれていた私は「みんな同じことしか言わないな」と思っていました。
 でも今聞かれたら、私もそう答えると思います。
 昔からまっとうな努力が嫌いで、人や自分と向き合うことを避け、ろくに勉強もせず、あまり本も読まず、書きたかったけれど諦めた構想や書き始めたけれど続けられなくなった小説を大量に抱えていますが、それでも書き続けていました。具体的な目標があったとか、ただ楽しかったとか、そういうはっきりした理由もなく、目覚ましい才能も勤勉さもなく、他にも色々と欠けたまま、それでも書き続けて、なんとか小説家になり、今回この賞をいただくことができました。本当に、本当に嬉しい。
 書き続けることを支え、励ましてくれた方々。今回この機会を与えてくれた方々。すぐに顔が浮かぶ方も、顔も知らない方もいます。私が思い至らないような場所で支えてくださった方もたくさんいるのでしょう。すべての方に感謝をしています。
 本当にありがとうございます。書き続けます。