第39回 川端康成文学賞
主催・公益財団法人 川端康成記念会 後援・株式会社 新潮社 発表誌:「新潮」
第39回 川端康成文学賞 受賞作品
給水塔と亀
「文学界」 平成24年3月号
受賞のことば
「無縁社会」という言葉を作り出したテレビ番組で取り上げられた、青森出身の男性の話に影響されて書いた小説です。男性は、六十代の家族のない人で、青森の両親の菩提寺にずっとお布施を送金しており、東京の自宅で亡くなられた時点でも仕事をしていたそうです。わたしは、この人は一人で亡くなることにさしたる思いがあったわけではなく、たまたま亡くなってしまっただけなんだろうなあ、という印象を持ちました。そして、故郷に帰っていたらどんな感じだったか、ひいては故郷とは何かということについて考えるようになりました。親も兄弟も親戚も知人もいないとして、故郷はその人にとって、再び辿り着きたい場所なのか。血縁のない場所に戻って、その人は何を見ることになるのか。わたしは、そこには風景や空気や土地そのものがあるだろうと思い、この小説を書きました。最後になりましたが、身に余る賞を頂き、今も信じられない思いでおります。どうもありがとうございました。
〔津村記久子氏略歴〕
一九七八年大阪市生まれ。二〇〇五年「マンイーター」で太宰治賞を受賞してデビュー(単行本化にあたり『君は永遠にそいつらより若い』に改題)。〇八年『ミュージック・ブレス・ユー!!』で野間文芸新人賞、〇九年「ポトスライムの舟」で芥川龍之介賞、一一年『ワーカーズ・ダイジェスト』で織田作之助賞を受賞。
第39回 川端康成文学賞 候補作品
明滅 | 藤沢周 | |
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ある日の、ふらいじん | 伊藤たかみ | |
給水塔と亀 | 津村記久子 | 「文学界」 平成24年3月号 |
癒しの豆スープ | よしもとばなな | |
mundus | 川上弘美 | |
日和山 | 佐伯一麦 |
過去の受賞作品
- 私の批評
- 反対方向行き
- 旅のない