数学と聞いただけで逃げ出したくなる貴女も、物理と聞いただけでトラウマが蘇る貴兄も。「社会に出てから加減乗除以外使ったことはない」と強がってはいても、心のどこかで自分も理系脳だったらなあと思ったことはありませんか?
ヒッグス粒子、ABC予想、iPS細胞、MERS等々。新聞記事を読んでも分からず、何が分からないかもよく分からない。いや、たぶん記事を書いてる記者だって、完全には分かってないのでしょう。
かといって理系の人の言葉は専門家同士の符丁に満ちていて、そもそも文系に分かってもらおうとしていない。まるで理系と文系の間には深くて暗い川があるかのようです。
そんな川に我々が舟を漕ぎ出さなくとも、橋を架け、向こう岸へ渡らせてくれる人たちがいます。文学に名訳者がいるように、「理」を「文」に通訳できる達人が、ごく稀にいるのです。
深く理解した「理」の世界を、平易な言葉で「文」の民に伝える。本当に分かっているから彼らの言葉は明快だし、ジャーゴン(専門用語)に頼ることもない。そんな素敵な“通訳者”たちが新潮文庫には揃っています。理系に対するコンプレックスをしばし忘れ、読み進めれば思わず「エウレカ!」と叫びたくなる新潮文庫のラインナップです。
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『博士の愛した数式』副読本。「数学者たちが生涯を賭けて求めたのは、たった一行の真理だった」小川洋子さん推薦。
17世紀、ひとりの数学者が謎に満ちた言葉を残した。「私はこの命題の真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」以後、あまりにも有名になったこの数学界最大の超難問「フェルマーの最終定理」への挑戦が始まったが――。天才数学者ワイルズの完全証明に至る波乱のドラマを軸に、3世紀に及ぶ数学者たちの苦闘を描く、感動の数学ノンフィクション!
●サイモン・シン 青木薫『フェルマーの最終定理』
『美味しんぼ』を筆頭に、漫画の世界ではグルメ・料理をテーマとする作品が目白押し。書店には「食マンガコーナー」まで出来るほどの“食ブーム”です。テレビでも「深夜食堂」など、食がテーマのドラマは今や鉄板の人気。
そんなに溢れかえる“食”情報で「もうお腹がいっぱい」とおっしゃるあなたがまだ知らない、「究極の食」を巡る新潮文庫をご紹介いたします。『美味しんぼ』で仕入れた知識をひけらかすグルメ通を黙らせる、とっておきの食の情報をご堪能あれ。
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大食、美食、偏食、粗食。名作も傑作も、「食卓」から生れた。
「何か喰いたい」臨終の漱石は訴え、葡萄酒一匙を口に、亡くなった。鴎外はご飯に饅頭を乗せ、煎茶をかけて食べるのが好きだった。鏡花は病的な潔癖症で大根おろしも煮て食べたし、谷崎は鰻や天ぷらなど、こってりした食事を愉しんだ。そして、中也は酒を食らって狂暴になり、誰彼構わず絡んでいた。三十七人の文士の食卓それぞれに物語があり、それは作品そのものと深く結びついている。
●嵐山光三郎『文人悪食』
ネットで爆発的なブームとなり、出版後は瞬く間にベストセラー、漫画・映画・テレビドラマ・舞台にもなったネット発の本といえば、『電車男』が有名です。その他に『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』もありますが、圧倒的に話題なったのは『電車男』でしょう。
これらは「2ちゃんねる」という掲示板で話題になったのですが、最近はTwitter(ツイッター)やmixi(ミクシィ)で人気の投稿が書籍化されることも稀ではありません。
今月の新潮文庫で発売された『それ、どこで覚えたの?』という本は、Twitterでつぶやかれたこどもたちの名場面をまとめた愛くるしい本です。例えば……
小学4年の息子が、「ぼくね、本当の無敵っていうのは敵がいないほど強いんじゃなくて、誰とでも仲良くなって、敵なんかいなくなることだと思うんだ」と話してくれた。子供にはいろんなことに気づかされる。(vega_nao)
娘(小1)に「人間の体は何で出来てると思う?」と聞かれ、「肉と血と骨じゃないの?」と言ったら、「あとひとつあるよ」と言われて、「あとひとつはなあに?」と聞いたら、「愛だよ」と言われ 頭を何かでブン殴られた思いなので寝ます。(torryo)
など、心に鋭く突き刺さってくる名言や
社会人一年目の新入社員にお薦めされるビジネス本の多くは、真面目に読んでいると途中で投げ出したくなるものばかり。“知っておくべきこと”“やるべきこと”“やらざるべきこと”の多さに辟易し、だんだんと自己嫌悪に陥る傾向が多い。これは、まだ経験したことのない悩みを先取りしているからで、ビジネス本は社会生活の中でぶち当たった悩みを解消するために使うのがもっとも効率がよい。
今回の文庫セレクトでは、状況に合わせて読める実用書を取り上げました。
とりわけ、山口瞳さんの『礼儀作法入門』は、祝儀袋の渡し方から酒の飲み方、ギャンブル、さらには女性との別れ方まで、あなたのピンチを救ってくれる一冊になっています。ビジネスマンにとって礼儀作法は基本ですが、マナーやエチケットに困ってしまい、インターネットに頼ってみたら余計に混乱したという方におすすめです。
Yonda?Mailにご登録いただいている読者の皆さまに〈犬や猫、イルカなど動物が登場する小説やエッセイ〉で印象に残っている本についてアンケートを取った結果を発表いたします。
『老人と海』(ヘミングウェイ・著)や『かもめのジョナサン』(リチャード・バック・著)などの名作や昨年「女子が男子に読んでほしい恋愛小説No.1」として話題になり、映画化も決まった『陽だまりの彼女』(越谷オサム・著)などがオススメされる中、最も多くの推薦があった本をご紹介いたします。
推薦コメント
夏目漱石先生の言わずと知れた名作です。これ以上の動物が主役の小説はないと思うのであえて推させて頂きました。日本の誇りだと思います。(40代女性 神奈川県)
子供時代に読んだときと、大人になってから読んでもまた違った楽しみ方ができる一冊。家に飼ってる猫と照らし合わせて読んでしまう。暖かい気持ちになります。子供にも読ませたい一冊です。(30代女性 神奈川県)
猫を通じての人間への風刺、落語や講談調の文体や知識の豊富さ等若い者から年長者まで十分に読み応えがあります。いつになってもベストセラーである最高の読み物です。(60代男性 東京都)●夏目漱石『吾輩は猫である』
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推薦コメント
とにかく、疾風(オオカミ犬)がかっこ良い!(20代女性 神奈川県)
乃南アサさんの初めて読んだ本が『凍える牙』でした。切なくて切なくて……オオカミ犬が飼い主の深い悲しみを理解してくれるのです。。。この本が縁で乃南アサさんの本をむさぼり読みました。(40代女性 東京都)
ストーリーの巧みさ、緊張感と疾走感、魅力的な主人公の、一気に読ませる本です。そして、登場する人間の誰よりも話の核となる、オオカミ犬“疾風”。気品に満ち賢く、凛として自分の意思を貫き、深い悲しみを抱えている。“疾風”は、人間の愚かさを知らしめるために舞い降りてきて、駆け抜けていった犬のように思える、そんな1冊です。(60代女性 青森県)●乃南アサ『凍える牙』
推薦コメント
高校生の時に、読書感想文用に読み始めた本。読み始めてすぐに、宿題など関係なく、どっぷりはまってしまいました。不思議な犬の愛らしさに心打たれます。(20代男性 千葉県)
ネコ派な僕ですが犬もいいなと思わせる泣ける一冊です。(30代男性 長崎県)
自分の人生の最後のほうをどのように生きていきたいか考える機会を与えてくれます。(40代男性 青森県)●テリー・ケイ 兼武進『白い犬とワルツを』