「ダ・ヴィンチ1月号」で「記憶に残った今年最良の1冊 BOOK OF THE YEAR 2013」のランキングが発表されました。
嬉しいことに新潮文庫から刊行されている「十二国記」シリーズ12年ぶりの新作『丕緒の鳥 十二国記』(小野不由美著)が小説ランキング部門で1位を受賞しました。
コミック部門では、アニメ化で2013年最も注目された作品の一つ諫山創さんの『進撃の巨人』(講談社少年マガジンKC)が1位を受賞しています。
「十二国記」シリーズは、神獣である麒麟が天意に従って王を選ぶ、十二の国を舞台にしたファンタジー小説。幸福な国を目指す王や民たちが繰り広げる壮大な物語です。『進撃の巨人』は、巨人に支配された世界で人類が戦いを挑む作品になっています。どちらも異世界を舞台にした作品であると同時に、様々な立場の人物の苦悩や葛藤を描いた作品になっています。
TVアニメシリーズが話題になった「魔法少女まどか☆マギカ」も劇場版([新編]叛逆の物語)では新世界での出来事を描いていて、公開から7週目に動員数130万人を突破し、宮崎駿監督の「風立ちぬ」などと並んで米アカデミー賞長編アニメーション部門への出品が決まっています。“じぇじぇじぇ”や“倍返し”を抜きにすれば、今年はハイ・ファンタジーも活躍した年ではないでしょうか。
異世界での出来事を通して、現実で見失っていた気持ちを取り戻すこともあれば、人間関係や仕事などの悩みを解消してくれたりするのがハイ・ファンタジーの魅力です。今年の年末年始は、トリップしてしまうほど壮大な世界観に浸って、自分を見つめ直すことも含めて楽しんで戴ければと思います。
Yonda?Mail購読者の皆さん、こんにちは。
青豆と天吾が10歳のとき出会い、20年後に再会する『1Q84』が究極の「再会愛」ならば、現在大ヒット公開中映画の原作『陽だまりの彼女』も、まさしく「再会愛」の物語。
映画で嵐の松本潤が演ずる主人公浩介は、中学のとき淡い恋心を抱きながらも離れ離れとなった真緒(上野樹里)と10年ぶりに再会する。2度目の恋に落ち、結婚を決めた二人だが、真緒には誰にも言えない“不思議な秘密”があった。二人の一途な愛と絆がその秘密を乗り越えたとき、物語は奇跡のハッピーエンドへと走りだす……。
先日、皆さんの「再会愛エピソード」をYonda?Mailでも募集しました。上手くいかなかったカップルもあれば、再会後25年経った今でも夫婦ですという方もいたり。エピソードを読ませていただくと、偶然の再会があたかも必然のようにも思えてきました。甘酸っぱい記憶に彩られた「再会愛」は、まさしく文学の普遍的なテーマの一つではないでしょうか。
「再会愛」なぞしたことがないと仰る貴方のために、今月は「再会」がキーワードとなる新潮文庫をセレクトしてみました。
「やられたら、やり返す! 倍返しだ!」
池井戸潤原作のドラマ「半沢直樹」が大ヒット中!
型破りのバンカー(銀行員)・半沢直樹が組織ぐるみの陰謀や上司による裏切りに立ち向かい、非道な奴らを窮地に陥れる姿にスカッとさせられる。
バブル期以降、日本経済が減衰するにつれ職場環境も悪化の一途を辿り、中にはブラックと称される企業すら出てくる始末。閉塞的な職場に絶望感を抱く多くの会社員たちにとって、半沢直樹の「倍返し」は遠山の金さんの啖呵のように悪を裁き、我々の溜飲を下げる「決めゼリフ」になっているのではないでしょうか。
今回は、半沢直樹が苦悩と葛藤の末に倍返しする姿に、心揺さぶられ、勇気を与えられた「半沢直樹」ファンにおすすめしたい、不屈の魂を持つヒーローを描いた小説をご紹介します。
腐敗した組織や上司からの圧力に負けず、信念を貫き通し、権力に屈しなかった男たちは、半沢直樹だけじゃない! 力強く、勇ましい会社員のヒーローはここにもいる!
国税当局の横暴と闘い続け勝利した税理士の生涯! |
国家権力は、かくも抗う者に牙を剥くのか!
権力は、抗う者には容赦なく牙を剥く──。税理士・飯塚毅は、中小企業のためにとった税務手法を否定され、当局を相手に訴訟を起こした。だが、横暴な大蔵キャリア官僚は、それを許しはしない。メンツのためだけに、飯塚の顧客へ理不尽な税務調査が行われ、さらに彼の事務所には検察の捜査までもが及んだ。それでも男は権力と闘いつづけるのか。生きる勇気を与える、実名経済小説。
不撓不屈〔上〕
高杉良/著 |
不撓不屈〔下〕
高杉良/著 |
Yonda?Mail購読者の皆さん、こんにちは。
7月20日に公開されたスタジオジブリのアニメ映画「風立ちぬ」。巨匠宮崎駿監督5年ぶりの長編、しかも“宮崎駿の遺言”なんて煽られたら、見逃すわけにはまいりません。さっそく観てきました。
(以下、「風立ちぬ」のネタバレありです。ご注意を)
1930年代に青春を送った二人の人生をごちゃまぜにして「風立ちぬ」を作ったと、宮崎監督は明言しています。
そのうちの一人は零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の設計主任として高名な堀越二郎技師です。旧家に生まれ育った主人公堀越少年の「美しい風のような飛行機を造る」という夢から、映画「風立ちぬ」は始まります。
もう一人が文学者の堀辰雄です。その代表作『風立ちぬ』は、堀辰雄の実体験から生まれた小説。結核に冒された婚約者とそれに付き添う作家が高原のサナトリウムを舞台に、残されたわずかな時間を共に生きた美しくも悲しい恋愛小説です。この物語が映画「風立ちぬ」後半の骨格となっています。
生ビール片手にプロ野球を観るのが楽しみな方や白球を追いかける青年達の勇姿に胸熱くさせられる方にオススメしたい野球本があります。
まず、紹介したいのは、松井秀喜さん自身が「ワタシの一行」プロジェクトで取り上げた『甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実―』。
この本は、1992年夏、星稜vs明徳義塾――高校野球史上に今なお“事件”として記憶される松井秀喜5連続敬遠の真実を丹念に追ったノンフィクションで、松井秀喜さんはこの本の中から「両校の野球観の違いの背景にあったもの。それは、野球に純粋だったのか、勝負に純粋だったのか、その違いだった。」という一行を選びました。
その他、2007年に無名の公立校だった「佐賀県立佐賀北高等学校」が全国制覇を成し遂げる漫画のようなストーリーの舞台裏を知ることができる本があり、野球ファンならずとも興味深く読めると思います。
また、知性派のエース桑田真澄さんや数々の伝説と記録を打ちたてた江夏豊さんなど、プロ野球選手が綴った本。ベーチェット病と闘いながら野球を続ける柴田章吾選手、メジャーで活躍するイチロー選手に密着した本が揃っていますので、ご興味ある方は是非お手にとって頂ければと思います。
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あの敬遠から始まった、球児たちの苦悩と葛藤。気鋭のノンフィクションライターが描く、熱過ぎる夏の裏側。ミズノスポーツライター賞受賞。
「甲子園なんてこなければよかった」──。球史に刻まれた一戦、1992年夏、星稜vs明徳義塾。松井との勝負を避けた明徳は非難を受け、試合をきっかけに両校ナインには大きな葛藤が生まれた。あれから15年、自らの人生を歩みだした監督・元球児たちが語る、封印された記憶。高校野球の聖地で、彼らは何を思い、何が行われたのか。球児たちの軌跡を丹念に追ったノンフィクション。
●中村計『甲子園が割れた日―松井秀喜5連続敬遠の真実―』