今からちょうど100年前。第一次世界大戦がはじまった1914(大正3)年、最初の新潮文庫は創刊されました。
第1期の初回配本は、トルストイ『人生論』、ギヨオテ『ヱルテルの悲み』、マルコ・ポーロ『マルコポーロ旅行記 上』、ダスタエーフスキイ『白痴 一』、イブセン『イブセン書簡集』、ツルゲーネフ『はつ戀』の6点でした。
一般向けにはまだ抄訳が多かった時代に、海外の名作文学を「全訳」し、それを「廉価」で提供するという画期的な取り組みでした。以来100年、新潮文庫は何度かその形を変えながら1万点を越える作品を世に送り出し続けています。
創刊100年記念出版「100年前の新潮文庫 創刊版 完全復刻」発売を機に、公式サイトでは「100年前の新潮文庫 復刻ドキュメント」を公開しています。
詳細は「新潮文庫創刊100年」公式サイトでご覧ください。
宮部みゆきさんの最大にして最高の現代ミステリー『ソロモンの偽証』[全6冊]が3ヶ月連続で刊行中です。第I部は、発売一週間で増刷決定。この秋一番の話題作となっています。「第II部 決意(上・下)」は9月末発売。「第III部 法廷(上・下)」は10月末に発売です。
クリスマス未明に転落死したひとりの中学生。彼の死は、殺人か、自殺か――。謎の死は疑念を呼び、やがて学校は悪意で満たされていきます。目撃者を名乗る匿名の告発状。マスコミによる一方的な報道。大人の都合に翻弄される生徒たちは、真実を求め、ある決断を下します。それは「学校内裁判」という伝説の始まりでした――。
現在開催中の「第4回ワタシの一行アワード」(赤毛のアンを読んでカナダへ行こう! プリンス・エドワード島ご招待)は当初、8月31日を応募締切とご案内していましたが、NHK連続テレビ小説「花子とアン」の盛り上がりもあり、ドラマ終了直後の「9月30日」まで応募期間を延長することとなりました。
まだまだ時間がありますので、ぜひご応募ください!
1984年8月30日、53歳の若さで急逝した有吉佐和子作品が文庫で続々と復刊されています。
旺盛な好奇心で、初期には歴史や古典芸能に取材した作品を発表。後期には社会矛盾を告発する数々のベストセラーを書いた有吉佐和子さん。
高齢化社会に警鐘を鳴らした『恍惚の人』、食の安全について先駆的に問い掛けた『複合汚染』、代表作とされる紀州を舞台にした女の三代記『紀ノ川』、120万部のベストセラー『華岡青洲の妻』をはじめ、新潮文庫ではこれまで累計1000万部を超える有吉作品を刊行し続けてきました。
没後30年を機に『悪女について』の新装版を刊行(8月末発売)するほか、『鬼怒川』(8月末発売)『私は忘れない』(9月末発売)『助左衛門四代記』(10月末発売)の3作品を復刊いたします。
是非この機会にお手に取ってください。
悪女について 有吉佐和子 《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは、騙された男たちにもそれと気付かれぬ、恐ろしくも奇想天外な女の悪の愉しみ方だった。男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を愉しんだ女の一生を綴る長編小説。 ISBN:978-4-10-113219-8 発売日:1983/03/29 |
塩野七生さんの大作『ローマ人の物語』の続編とも言うべき『ローマ亡き後の地中海世界』。その単行本が刊行されたのは2008年12月(上巻、文庫版での1・2巻に相当)、そして2009年1月(下巻、文庫版3・4巻)のこと。
ローマ帝国が健在だった時代、地中海は「内海」であり、交通路ともいえる存在でした。ところが西ローマ帝国が滅亡すると、地中海の制海権を握ったのはイスラム化した北アフリカの海賊になります。人々をつなげる穏やかな海だったのが、人々を分断する戦争の舞台になってしまったのです。本作ではヨーロッパのキリスト教連合国が北アフリカの海賊、そしてその海賊を海軍として吸収したオスマントルコ帝国との対立が描かれます。
刊行当時はインド洋ソマリア沖での海賊行為が飛躍的に増え、日本籍船の被害もさかんに報道された時期でもあります。2009年3月からは海上自衛隊が対策のために現地での活動を開始、現在も約600人の隊員が護衛艦2隻とP3C哨戒機2機で警戒に当たっています。いま自分が編集している作品と現代のニュース報道とが呼応するのに、とても驚いたのをよく憶えています。