累計900万部を突破した畠中恵氏による大人気しゃばけシリーズは、今年で20周年。
しゃばけの文庫が出るのは毎年年末でしたが、今年は20周年のサプライズとして、第18弾『てんげんつう』が夏に刊行されました! もちろん今年の年末にも特別なしゃばけ文庫最新刊をご用意しております。
そしてさらなる嬉しいニュースが! 20周年のアニバーサリーを記念し、「劇場版 夏目友人帳 うつせみに結ぶ」などの作品で知られる伊藤秀樹氏、同じく「夏目友人帳」シリーズを手がけるアニメスタジオ、朱夏が制作した「20周年記念スペシャルアニメ『しゃばけ』」を、しゃばけ公式サイトにて配信することが決定いたしました。
シリーズ20作目にあたる単行本新刊『もういちど』の発売日である、7月19日より配信スタート。若だんな役に榎木淳弥、仁吉役に内山昂輝、佐助役に阿座上洋平、屏風のぞき役に木村良平、鈴彦姫役に金元寿子と、今をときめく大人気声優が豪華共演。約3分のなかにしゃばけシリーズの名場面が凝縮され、シリーズの魅力を堪能することができる贅沢な一作です! 20年間支え続けてくださったファンの皆さまと、新たに「しゃばけ」を知りたいという読者の皆さまに贈る、待望の「しゃばけ」アニメ、配信をお楽しみにお待ちください!
20周年記念スペシャルアニメ「しゃばけ」
監督 伊藤秀樹(『劇場版 夏目友人帳』)
音楽 和田薫(「犬夜叉」シリーズ)
CV
若だんな:榎木淳弥
仁吉:内山昂輝
佐助:阿座上洋平
屏風のぞき:木村良平
鈴彦姫:金元寿子
アニメーション制作 朱夏
英国ブライトンに暮らすライターのブレイディみかこさんが、中学校に通う息子さんとの日々を綴った作品『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を文庫化しました。この作品が大ヒットするなか、キーワードとなったのは「エンパシー」という言葉です。
英国の公立学校教育には「シティズンシップ・エデュケーション」というカリキュラムがあるそうです。英国政府の定義によると「社会において充実した積極的な役割を果たす準備をするための知識とスキル、理解を生徒たちに提供することを助ける」ためのもので、期末試験では「エンパシーとは何か」といった問題が課されるそうですが、これに対してブレイディさんの息子さんは「自分で誰かの靴を履いてみること」と回答します。自分で、誰かの靴を、履いてみることーー。
英国ほどではないにせよ、日本でも外国人居住者が250万人を超え、社会全体が多様化しています。そうしたなか、自分とは信念や価値観がちがう(かもしれない)人の靴を履いてみて、「何を考えているのだろう」と想像してみる能力が、今後はますます大切になってくるのかもしれないーー。そんなことを考えさせてくれる作品です。
作品の一部は以下のサイトで読むことができますので、ぜひお楽しみください。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』特設サイト
このエンパシーという概念をブレイディさんがさらに掘り下げて思考した、『ぼくイエ』の"副読本"といってもいい本も刊行されています。『アナーキック・エンパシー』(文藝春秋刊)。『ぼくイエ』で感じることのあった人は、ぜひそちらも読んでみてください。
目の前を航行している船が北朝鮮の工作船で、その艦内には日本人が拉致されていたら......。当然、日本人を救出するために、その船に乗り込むでしょう。誰が? 海上自衛隊員です。
拉致された人間を奪還するのは当たり前のこと。簡単にできそうなものですが、実は手も足も出なかったという事件がありました。元海上自衛官の伊藤祐靖さん(階級は二佐)が『自衛隊失格―私が「特殊部隊」を去った理由―』で明らかにしました。
1999年のことです。海上自衛隊のイージス艦「みょうこう」は能登半島沖で北朝鮮拉致工作船と対峙。ところが隊員たちは工作船を止めるだけの訓練をしたことがなかったのです。拳銃を握ったこともないし、防弾チョッキもありません。結局、手も足も出ないまま不審船に悠然と逃げられてしまうのです。船の中には日本人がいたかもしれないのに。
現実を突きつけられた伊藤さんは、自衛隊初の特殊部隊を創設、邦人奪還に向けて命を削った秘密訓練を行いました。
初めて明かされる特殊部隊の実態に驚いたのが、漫画家のかわぐちかいじさん。「本書は日本の防衛を考えるひとつのファクトであり、その存在意味を考える手助けとなる最高の書であると断言する」と絶賛です。
伊藤さんは防衛大学校で教官をしていたこともあります。防大を離任する日、伊藤さんが学生に送った言葉にかわぐちさんは感動。「是非これから社会人になる方に読んでいただきたい」と熱く語ります。離任の辞を少しだけ紹介します。
「若者にとって、過去というものは、反省するときに使うだけのものだ。省みるためのみに存在する。懐かしがるのは退官してからにしろ。現在と未来のために生きろ。チラチラ後ろなんか振り向くな」
胸がカッと熱くなる名演説、是非全文をお読みください。
元女性白バイ隊員だった著者が、本格的な警察小説に挑んだのが昨年刊行した『女副署長』(新潮文庫)でした。発売直後から、目利きのミステリー評論家に高く評価され、たちまち増刷。一つの警察署がまるごと「事件現場」になるという異例の設定で、主人公の田添杏美(たぞえあずみ)副署長の捜査魂が冴えるストーリーでした。この田添杏美は、捜査畑育ちのエリートではない、というところがミソ。捜査一課の刑事が警察の花形としたら、杏美はいわば組織の傍系から女性としてナンバー2になった警察官です。そんな非主流出身だからこそ、見えてくるものがある。黙々と働く部下の心を見抜く目がある。第二弾『女副署長 緊急配備』も、活躍するのは杏美の部下である一般の署員で、刑事ですらありません。
30歳の木崎亜津子は、交通課の巡査部長でシングルマザー。夕方の退庁時刻には、娘を迎えに保育園に駆けつける日々だが、誰にも言えない秘密を抱えている。43歳の巡査部長甲斐祥吾は、プライベートでは父の介護を一人抱えている。たとえ事件が起きても、ヘルパーの終了時刻には帰宅しなければならないのだ。そして地域課駐在員の伴藤弘敏。定年を目前に控えた巡査部長だが、息子のことで頭を悩ませ、しかも杏美とは過去の因縁がある......。
警察官もごく普通の人と同じ、屈託と葛藤を抱えて働いている――。そんな名もなき警官たちが、前代未聞の凶悪事件が発生したとき、どう動くのか。危機を前に、彼らがとった行動とは。上司と部下の絆が目頭を熱くさせてやまない傑作です。どうぞ読み逃しなく!
「ナイスですね!」「きみは素晴らしい。ファンタースティック!」この軽重浮薄な速射砲に時代は揺れ動いた。この稚拙な英単語まじりの誉め言葉を浴びた女性たちは恍惚の表情を浮かべて、この男の自由になった。時代はこの男を「AVの帝王」と呼んだ。男――村西とおる――は、いわきから上京し、バーのボーイを皮切りに、百科事典の販売、英会話教材の販売、英会話学校の経営、インベーダーゲーム機の設置・販売を通じて、この独特の話法「応酬話法」を磨き上げていった。やがて北大神田書店グループを設立し、ビニ本・裏本の制作販売を始め、またたく間に全国に65店舗、ビニ本市場の7割を占める売り上げを叩き出した。やがて新英出版を立ち上げ、一般的な出版物の編集刊行に乗り出すが......。裏本の制作販売で、「わいせつ図画販売」で逮捕される。一度目の逮捕だった。
やがてAV制作に乗り出す。海外のAV作品を関税審査手続きを経ず輸入し、前科二犯。無許可モデル事務所からモデルを派遣させたとして職業安定法違反。AV制作当初こそは、このしゃべりが不愉快だと散々だったが、黒木香「SMぽいの好き」で一躍時代の寵児となる。ハワイで逮捕(求刑懲役370年)、17歳の少女をAV出演させたとして児童福祉法違反、16歳の少女のAV出演により児童福祉法違反、職業安定法違反、〆て前科七犯。
弁舌さわやかに事業を立ち上げ、あっという間に軌道に載せ、驕り高ぶり調子に乗って逮捕倒産。無一文から再び立ち上がり、再び驕り高ぶり逮捕倒産......。前科を重ね、莫大な借金を背負うが、村西の不屈のバイタリティはもはや神々しいものがある。
自殺を考えていた人がネット検索で村西のトークショーを知り、参加して生きる力を授けられ、自殺を思いとどまったなど、奇跡の逸話もある。
この先行きの不透明な現代という閉塞の時代にこそ、この村西の前しか見ない怒涛の生命力は見直されるべきだ。