カレーを一晩置くと、なぜおいしくなるのか? 答えは、カレーに使われている、ある食材に隠されていました。あっと驚く、その食材の正体とは!?
本書では、カレーや寿司、お好み焼き、そば、フルーツパフェなどさまざまなメニューに隠された秘密を、食材を手がかりに解き明かしていきます。子どもたちはなぜピーマンが嫌いなのか? どうしてタマネギは加熱すると甘くなるのか? そばが栄養豊富な理由とは? 味、食感、香り、栄養素......すべての謎を解く鍵は、「食材が生きていたときの姿」にありました。
食材の秘密を知ることは、料理の上達にもつながります。ジャガイモを煮崩れさせない方法、タマネギを泣かずに切る技術、ダイコンおろしの辛さを調節する裏技、そして子どもたちがピーマンを喜んで食べるようになる調理法など、今日から試したくなる料理の驚き技も満載です。毎日の調理と食事がグンと楽しくなることまちがいありません。
著者の稲垣栄洋先生(静岡大学大学院教授)は、雑草や生き物の専門家。ベストセラー『生き物の死にざま』でお名前を見た記憶のある方も多いのではないでしょうか。稲垣先生のわかりやすく、おもしろい説明を読んでいると「ねえねえ、これ知ってる?」とつい誰かに話したくなってしまいます。また、そんな文章が人気を集め、国・私立中学の入試問題(国語)では、毎年なんらかの作品が使われ、5年連続で「もっともよく出題された作者」となっています。この本からも、来年2023年入試に出題されるかも?
『三千円の使い方』が大ヒット中の原田ひ香さんの最新作『そのマンション、終の住処でいいですか?』は、とあるマンションが舞台。有名デザイナーが都内の一等地に建てたそのマンションは、これまで真面目に生きてきたとある家族にとってはご褒美のような終の住処になるはずだった。しかし、蓋を開けてみると――。
欠陥住宅だとわかっていながらも、有名デザイナーが手がけたというバリューを捨てられない人たち、有名デザイナーの天才ぶりに振り回された人たち、その家族、その師弟。増えていく登場人物たちの思惑は千々に絡まり合う。
「マンションを建て直す」ということがどうしてこんなにもままならないのか。
読む人誰もが身につまされるであろう、マンション問題あるあるがぎっちり詰まったエンターテイメント小説の登場です。
『橋ものがたり』『蝉しぐれ』『たそがれ清兵衛』......。誰もが耳にしたことがある作品名ではないでしょうか。
作者は藤沢周平。今年は没後25年となります。25年の年に、さらに藤沢作品を深く理解していただきたいと願い、『文豪ナビ 藤沢周平』を刊行しました。
藤沢周平といえば海坂藩。作者の故郷庄内をモデルにした小藩で、海坂藩の地図を自作される熱狂的な読者の方もいらっしゃいます。その筆頭が作家の井上ひさしさん。『文豪ナビ』では井上さんが『蝉しぐれ』を読み解き自作したオリジナルの地図を掲載しています。
また藤沢作品はこれまで多く映像化されてきました。本書では『三屋清左衛門残日録』に出演された北大路欣也さん、麻生祐未さん、伊東四朗さん、『武士の一分』の檀れいさん、『たそがれ清兵衛』の田中泯さん、『山桜』の東山紀之さん、『蝉しぐれ』の十代目松本幸四郎さんにご登場いただき、撮影秘話を深く語っていただきました。
没後25年を記念して、新たな映像化も。『橋ものがたり』に収録されている「殺すな」が1月28日より全国のイオンシネマにて公開されます(2月1日、時代劇専門チャンネルでも放映)。また、新潮文庫の2月新刊では『決闘の辻』、3月には『市塵(上・下)』も刊行予定です。
2021年に『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞し話題となった町田そのこさんですが、著者唯一のシリーズ作品であり、累計15万部突破の人気作『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』の第二巻が、このたび発売されました。
このシリーズは北九州門司港にある小さなコンビニ「テンダネス門司港こがね村店」の店長・志波三彦(老若男女を意図せず魅了してしまう魔性のフェロモンを持つ)の元にやってくる、輪をかけて個性的な常連客たちとのやりとりがたいへん魅力的です。
が、今回のテーマはなんと「恋」。
一体誰の元に恋物語が舞い降りるのか。前作からお読みの方はにやりとなること間違いなしです。
各話に出てくる登場人物達の心の動きはどれもリアリティに溢れ、思わず泣かされたり、くすりと笑えたり、何より「頑張ろう」と背中を押されるような素敵な物語集となりました。ラストにはかなり気になる人物も登場し、ますます目が離せません。著者の門司港愛に溢れた心温まる物語を是非ご堪能ください。
組織のなかで中堅クラスになると、社内の確執や組織の膿、人事の綾が見えてくることが少なくありません。事なかれ主義や、自己保身がはびこる有様を目にして、落胆や絶望する会社員もいるでしょう。そんなとき頭をよぎるのが、「この会社ではやっていられない」「辞めるなら今か」という想いではないでしょうか。
会社員なら一度は考えたことがある「辞表」の二文字......。経済小説の第一人者である著者は、普通の会社員の苦悩に焦点をあてた小説を、数多く発表してきました。本書に収められた作品はどれも、組織と個人の間で、人生の選択に悩む等身大の姿を描きだしています。
「エリートの脱藩」では、会社の将来性にきっぱりと見切りをつけ、自分の道を選択する男を描いています。自分の意思で決断した退職が、いかに力強いか、迷い多き会社員を励ましてくれる短編です。「社長の遺志」は、病魔に倒れた社長の後継人事に奔走する男の意外な秘策がストーリー。鮮やかすぎる進退が見事です。
人員解雇に忙殺される人事部長。そんな皮肉な立場に置かれたら......辛い立場でも清々しい読み味なのが「人事部長の進退」。裏腹に、同期への友情と人事の間で苦悩する「エリートの反乱」は、身につまされる読み応えです。他に暴君社長の劇的な退任「社長、解任さる」を含め、勝ち敗けを超えた人生の瞬間を描きだす名作ぞろいです。