『名探偵のいけにえ』で「2023本格ミステリ・ベスト10」ぶっちぎりの第1位を獲得し、いまミステリ界で最注目の著者、白井智之さんによる姉妹編『名探偵のはらわた』がついに文庫化されました。
ちなみに『~いけにえ』も『~はらわた』も"姉妹編"あるいは「名探偵」シリーズと銘打っていますが、それぞれ独立した長編ミステリですので、どちらからお読みいただいてもお楽しみいただけます。
綾辻行人氏に「鬼畜系特殊設定パズラー」の称号を与えられた著者・白井智之さんですが、「名探偵」シリーズでは、いわゆる"エロ・グロ"な要素は非常に控えめで読みやすいです。その分、二度読み必至の鮮やかな伏線回収や、緻密なロジックによる美しい多重解決といった、本格ミステリの神髄ともいうべき魅力がたっぷりと味わえるシリーズとなっております。
ミステリ好きなら必読です。読んだら感想を言い合いたくなること必至。文庫化を機に、ぜひクセになる魅力の白井智之さんのミステリの世界をお楽しみください。
ドアスコープで覗いたような目線の隠れた不穏な男の子のイラストと『#真相をお話しします』というタイトルをTVやニュースで目にした方も多いのではないでしょうか? 昨年夏の発売以来、口コミで話題沸騰、メディア殺到で一躍大ベストセラーになった連作短編ミステリーです。
その『#真相~』の著者、いま最も注目されている新鋭・結城真一郎による傑作長編『プロジェクト・インソムニア』が、ついに文庫化しました。
極秘人体実験「プロジェクト・インソムニア」の被験者たちが次々と"夢の中"で殺されていく......果たして殺人鬼の驚愕の正体は――!? という手に汗握るサスペンスミステリーです。
ちなみにですが、文庫『プロジェクト・インソムニア』の帯には、『#真相をお話しします』が「10万部突破」と載せましたが、帯のデザイン確定から文庫発売までの間に、「めざましテレビ」で紹介され再び大ブレイク! さらには「本屋大賞」ノミネートが発表され、瞬く間に「20万部突破!」となりました。『#真相~』をお読みになった方も、まだの方も、文庫で手軽に手に取れる長編ミステリー『プロジェクト・インソムニア』をぜひお楽しみください。決して損はさせない大満足の読後感を保証します。
亡き友人、高堂の家を預かる作家の綿貫征四郎。その家の周りにおこる不思議な出来事を静かにつづった梨木香歩さんの名作『家守綺譚』は、その続編である『冬虫夏草』とともに、数々のファンを生み出したベストセラーとなりました。
この『家守綺譚』に姉妹編の作品が存在するのをご存じですか? それが今回、新潮文庫版が刊行された『村田エフェンディ滞土録』です。
主人公は、綿貫の友人である村田。彼は考古学の勉強のため、19世紀末のトルコ、スタンブールに留学中です(エフェンディとは学問を修めた人間に対する敬称)。イギリス人のディクソン夫人が営む下宿に、同じく留学生であるドイツ人のオットー、ギリシア人のディミィトリスとともに暮らし、友情を深めていきます。村田の身の回りに起きるできごとは、『家守綺譚』同様不思議がいっぱい。異国の人々や人ならぬものとの交流しながら、学びを続ける村田でしたが、突如日本からの帰国命令が下ります。やがて、日本で暮らす村田に届いた報せとは――。
物語の舞台は19世紀末~20世紀初頭。村田が暮らしたトルコもまた、不安定な政情にありました。やがて第一次世界大戦が勃発し、村田の友人たちも国同士の争いごとに巻き込まれていくことになります。
美しく豊かな青春の日々と、国と国とに引き裂かれる友情。誰もが胸を打たれずにいられない結末には、号泣必至です。
そして今回の新潮文庫版刊行にあたっては、著者によるあとがき「あの頃のこと」が付け加わりました。このあとがきを読むと、『村田エフェンディ滞土録』はいかにして書かれることになったのか、著者はどうして当時のスタンブールをこれほどリアルに描くことができたのかがわかり、ファンは必読の内容となっております。
「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」シリーズなど、大人気時代小説を数々手がけ、旅や食、映画といった人生の楽しみを味わう名エッセイも多く残した、大作家・池波正太郎。今年2023年は、池波正太郎の生誕100年にあたります。
100周年を記念してこのたび新潮文庫から刊行された作品が『まぼろしの城』です。新潮文庫には、激動の戦国時代を生き抜いた真田昌幸、幸村、信之の親子を描いた大河小説『真田太平記』全12巻をはじめ、直木賞を受賞した「錯乱」が収録された『真田騒動―恩田木工―』、『真田太平記』の後日譚に当たる『獅子』などの、いわゆる「真田もの」が集められていますが、この『まぼろしの城』は、実は『真田太平記』の前日譚とも呼べる作品です。
舞台は上野国、沼田城。城主であり猛将と謳われた沼田万鬼斎は、我が子を跡取りにと目論む愛妾であるゆのみと、その父親である金子の奸計によって、一族に混乱を引き起こします。跡取り争いに巻き込まれた城はやがて、上杉謙信、武田信玄、そして真田昌幸らの狙うところとなり......。戦国時代の波にさらわれる一族の栄枯盛衰をドラマチックに描き、ラストでは『真田太平記』でも大いに発揮された真田昌幸のしたたかな存在感が強い印象を残します。
池波にとってはライフワークでもあった「真田もの」の原点として、ファンは必読の戦国エンタテインメント作品。生誕100年を迎えた池波正太郎の世界にどっぷりはまるきっかけになる一冊です。
ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル・ギターで、2021年に小説『母影(おもかげ)』(新潮社)が芥川賞候補になった尾崎世界観さんと、小説『しろがねの葉』(新潮社)が今年1月19日発表の直木賞候補作に選ばれている作家の千早茜さん。
そんな注目の二人による最強コラボな共作小説『犬も食わない』が、新潮文庫に登場しました。
周りには「なんで付き合ってるの?」と言われてしまう、喧嘩ばかりの同棲中カップルの日常を、男性・大輔視点を尾崎世界観さん、女性・
同じ日の出来事を男女の視点別に交互に綴り、恋愛中のかっこわるい本音をさらけ出す本作は、2018年10月の単行本刊行当時、全国書店で続々第1位を獲得&大重版を果たしました。
そして文庫でも勢い衰えず、発売即重版出来です!!
ブルーが印象的な文庫カバー装画は、映画化された『Strawberry shortcakes』などで人気の漫画家・魚喃キリコさんの『魚喃キリコ 未収録作品集』[上](東京ニュース通信社)所収作品を使用。中扉には、『Strawberry shortcakes』(同)からの一枚を使用しています。
カバーと中扉共に、長らく魚喃作品ファンである尾崎・千早両著者が選び抜いた一枚。魚喃さんからの快諾を得て、めでたく実現しました。
さらに文庫特典として、両著者による約30ページの新規対談を収録。共作の思い出や苦労、書き手としての自分の変化、「恋愛」を書くことについてなど、たっぷり語り合います!
【両著者からのコメント】
◆尾崎世界観(おざき せかいかん)
あれから4年が経って、こうして文庫化されることが嬉しいです。
「成長」よりも「相変わらず」が似合う二人を愛しく思います。
ぜひ手に取っていただきたいです。
◆千早茜(ちはや あかね)
4年ぶりに読み返すと、大輔と福は変わらずダメなままでした。
でも、その変わらなさがなんだか愛おしく、4年の間に変わった自分にも気づけました。
既読の方も、未読の方も、都会の片隅に必ずいるであろうダメなふたりの日々を、苦笑しながら覗いてくれたら嬉しいです。