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東大法学部

水木楊/著

748円(税込)

発売日:2005/12/16

  • 新書
  • 電子書籍あり

巨大なる予備校、壮大なる公共投資。日本を支配してきたエリート養成機関の歴史と現在。

明治政府の国策として、創立以来、官僚機構はもちろん政財界にも幹部候補生を供給してきた東大法学部。それは、そもそもが国家公務員試験および司法試験にむけた「予備校」であり、巨大な公共投資であった。維新から高度経済成長期へと続くその栄光の歴史、そして霞ヶ関の落日以降に訪れた変化とは――。現代社会における「真のエリート教育」についても考察。

目次
はじめに
一章 近代国家の人材供給源
邑ニ不学ノ戸ナク
徳川幕府の遺産
初代総長はドイツ派
コネなき若者たちの階段
目に見えない公共事業
胃痛になった団長
東大は昔から予備校だった
松永安左エ門の怒り
民から官、官から総理に
強盗と呼ばれた男
席取り競争激化
新人会の発足
学内騒然
天皇機関説
革新官僚・岸信介
六・三・三・四の発足
パブロフの犬
選ばれし者の恍惚
パワーエリートの苗床
複々線から画一的単線へ
大学という名の規制業種
社会主義運動の衰退
二章 霞ヶ関の時代
四つに分かれる戦後官僚史
ずらり並ぶ総理大臣
次官になれぬ非法学部卒
官僚たちの夏
大臣を相手にせず
暗夜行路なき若者たち
ボート部は大蔵省予備軍
霞ヶ関を牛耳った海軍出身者
海軍出身者の残したもの
急増した外貨準備
東大法学部卒・金ぴかエリートの敗北
数は正義なり
田中の作った「治外法権」
矮小化した仕事
登りつめた坂の上
聖域・大蔵省に地検の手
タイタニック号のネズミ
プライドが持てない
細る天下り先
ある政治家のケース
MOF担の活躍
ミンカンという東大法学部用語
社長・役員は「私高国低」
三章 優秀なる若者たちは何処を目指す
唖然とした面接会場
浮上した法曹界
ハゲタカの雛は政治家を夢見る
「代替可能」でない自分
東大を見放す高校生
一番探しの若者たち
蒸留水の明るさ
家にピアノがないと東大生になれない
独立行政法人化で何が変わったのか
「改革」という名の壮大なるまやかし
安すぎる授業料
神は市場原理
東大法学部不要論
四章 真のエリート教育とは
国立大学の論拠
質疑応答のない講義
自分の意見は書くな
大学に入っても予備校通い
宅建を受ける法学部生
学問的ピークは昭和十年代
専門バカの東大生
教育と研究は両立する
エリートのマスプロ光景
一応、東大なんですけど
“エリート”過剰時代のエリート喪失
IQ秀才はリーダーになれない
リーダーの条件
卑しい世代
富士山型から八ヶ岳型へ
戦略的価値を持つ私立大学
国家補助は奨学金で
あとがき

主要参考文献

書誌情報

読み仮名 トウダイホウガクブ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610146-5
C-CODE 0237
整理番号 146
ジャンル 教育学、社会学
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2008/10/03

蘊蓄倉庫

東大法学部は出世魚か

 この季節、北陸で珍重されるのがブリ。成長を追って名前が変わる、いわゆる「出世魚」です。関東ではワカシ→イナダ→ワラサ→ブリと大きくなっていきますが、北陸ではツバイソ→コズクラ→フクラギ→ガンド→ブリと呼ぶのが一般的だとか。
 日本を支配してきた「エリート養成機関」東大法学部も、その名称にはかなりの変遷がありました。明治10年の発足時には東京大学法学部、その後、東京大学法政学部→帝国大学法科大学→東京帝国大学法科大学→東京帝国大学法学部ときて、昭和22年に東京大学法学部となっています。
 一巡して同じ名前になってからは霞ヶ関で不祥事を起こしたOBも多く、これが「出世」かどうかは不明です。

掲載:2005年12月22日

著者プロフィール

水木楊

ミズキ・ヨウ

1937(昭和12)年上海生まれ。自由学園最高学部卒。日本経済新聞社ワシントン支局長、外報部長、論説主幹などを経て1997年より作家専業に。『現代老後の基礎知識』(共著)『青いあひる』『誠心誠意、嘘をつく――自民党を生んだ男・三木武吉の生涯』など著書多数。

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