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知らざあ言って聞かせやしょう―心に響く歌舞伎の名せりふ―

赤坂治績/著

814円(税込)

発売日:2003/07/19

  • 新書
  • 電子書籍あり

歌舞伎から生まれたあの言葉、この名文句。

歌舞伎の神髄は「名せりふ」にあり――。かつて歌舞伎は娯楽の中心であり、今に残る「名せりふ」は、歌舞伎を支え続けた庶民が培ってきた、日本の文化の結晶に他ならない。近松門左衛門から、鶴屋南北、河竹黙阿弥まで。忘れられかけた日本人の心が詰まった極め付き、四十一の名せりふ。「せりふ」が分かると、歌舞伎がより楽しくなる。巻末に「歌舞伎の台本とせりふ」の概説を付け、せりふから入る歌舞伎の入門書としても役立つ一冊。

目次
はじめに
第一章 近松門左衛門
この世の名残、夜も名残         [曾根崎心中]
鬼は都にありけるぞや          [平家女護島]
思い切っても凡夫心           [平家女護島]
魂抜けて、とぼとぼうかうか       [心中天網島]
女同士の義理立たぬ           [心中天網島]
不義になって貸してくだされ       [女殺油地獄]
第二章 竹田出雲・並木千柳・三好松洛
出合う所が百年め            [菅原伝授手習鑑]
せまじきものは宮仕え          [菅原伝授手習鑑]
腹が減っては出来ぬもの         [義経千本桜]
恋と忠義はいずれが重い         [義経千本桜]
馬鹿ほど怖いものはない         [仮名手本忠臣蔵]
まだ御料簡が若い若い          [仮名手本忠臣蔵]
色に耽ったばっかりに          [仮名手本忠臣蔵]
魂魄この土に留まって          [仮名手本忠臣蔵]
十六年は一昔、アア、夢だ夢だ      [一谷嫩軍記]
第三章 近松半二・菅専助・文耕堂……
死んでも褒美の金が欲しい        [鬼一法眼三略巻]
負うた子に教えられ           [近江源氏先陣館]
道も法も聞く耳持たぬ          [摂州合邦辻]
わたしも女子の端じゃもの        [桂川連理柵]
そりゃ聞こえませぬ伝兵衛さま      [近頃河原の達引]
第四章 並木五瓶・奈河亀輔・瀬川如皐……
花待ち得たる今日の対面         [寿曾我対面]
間夫がなければ女郎は闇         [助六由縁江戸桜]
絶景かな、絶景かな           [金門五三桐]
お腹が空いてもひもじゅうない      [伽羅先代萩]
死ぬるを忠義ということは        [伽羅先代萩]
しがねえ恋の情が仇           [与話情浮名横櫛]
花魁、そりゃあ、ちっと、そでなかろうぜ [籠釣瓶花街酔醒]
第五章 鶴屋南北
世の中よっぽどひねって来たわえ     [桜姫東文章]
雉子も啼かずば討たれまいに       [浮世柄比翼稲妻]
思えば思えば、ええ恨めしい       [東海道四谷怪談]
首が飛んでも動いてみせるわ       [東海道四谷怪談]
第六章 河竹黙阿弥
こいつは滅多に死なれぬわえ       [小袖曾我薊色縫]
こいつは春から縁起がいいわえ      [三人吉三廓初買]
なるほど世間は難しい          [三人吉三廓初買]
知らざあ言って聞かせやしょう      [青砥稿花紅彩画]
問われて名乗るもおこがましいが     [青砥稿花紅彩画]
恨みがあるなら金に言え         [勧善懲悪覗機関]
闇があるから覚えていろ         [曾我綉侠御所染]
こいつは宗旨を替えにゃあならねえ    [船打込橋間白波]
人は見掛けによらないものだ       [島鵆月白浪]
呑んで言うのじゃあございませんが    [新皿屋舗月雨暈]
付章 歌舞伎の台本とせりふ

あとがき

参考文献(台本収録本)

書誌情報

読み仮名 シラザアイッテキカセヤショウココロニヒビクカブキノメイセリフ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610024-6
C-CODE 0274
整理番号 24
ジャンル 日本の伝統文化、演劇・舞台
定価 814円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/04/27

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役者とせりふの関係

 SMAPの木村拓哉主演のTVドラマは、どれも大ヒットです。彼のせりふが、流行語になったりもします。最近のドラマは、主演俳優を最初に決めて、その人のイメージに合わせて脚本を作るそうです。その方が、俳優をよりかっこよく見せられるのでしょう。
 実はこの手法、TVドラマの専売特許じゃありません。先駆けは歌舞伎です。例えば、有名な河竹黙阿弥は、四代目市川小團次の芸風に合わせて多くの名作を生み出しました。
『勧善懲悪覗機関』(かんぜんちょうあくのぞきからくり)に「恨みがあるなら金に言え」というせりふがあります。現代でもそのまま使えそうです。これも、時代を描く名手だった黙阿弥が、小團次の特徴を巧みに捉えていたからこそ生まれた名せりふなのです。

掲載:2003年7月25日

著者プロフィール

赤坂治績

アカサカ・チセキ

1944(昭和19)年山梨県生まれ。江戸文化研究家・演劇評論家。劇団前進座、「演劇界」編集部を経て独立。新聞・雑誌に執筆、テレビ・ラジオヘの出演や、文化・教養講座の講師も務める。著書に『知らざあ言って聞かせやしょう―心に響く歌舞伎の名せりふ―』『江戸っ子と助六』『江戸歌舞伎役者の〈食乱〉日記』(以上、新潮新書)、『浮世絵で読む、江戸の四季とならわし』(NHK出版新書)、『江戸時代 武家政治vs.庶民文化』(朝日新聞出版)、『完全版 広重の富士』(集英社新書ヴィジュアル版)などがある。

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