文豪ナビ 太宰 治
649円(税込)
発売日:2004/11/28
- 文庫
文豪新体験宣言! 史上最強のガイド本誕生。
時代を超えて常に若者たちから支持される太宰治。その「恥の多い生涯」は四度の自殺未遂に象徴されるように、道化と愚直を演じ分ける日々だった。だがファンは、そこに自分を見出しホッとする。『走れメロス』で勇気、『人間失格』で絶望を書いた太宰の、純な心に共鳴するのだ。わかりやすい評伝・名作の要約・音読したい名場面・人気作家のエッセイなど、文豪の新しい魅力が発見できる画期的なシリーズ! 文豪ナビ全7冊。
書誌情報
読み仮名 | ブンゴウナビダザイオサム |
---|---|
シリーズ名 | 新潮文庫 |
発行形態 | 文庫 |
判型 | 新潮文庫 |
頁数 | 160ページ |
ISBN | 978-4-10-100600-0 |
C-CODE | 0195 |
整理番号 | た-2-0 |
ジャンル | 文学・評論、ノンフィクション |
定価 | 649円 |
インタビュー/対談/エッセイ
波 2004年11月号より 「文豪作品」の新しい魅力を伝えたい 新シリーズ『文豪ナビ』刊行にあたって
この夏、新潮文庫90周年の特別企画として、各界の著名人50人に「わたしの大切な文庫」を一冊選んでもらい、その本にまつわるエピソードを「週刊新潮」誌上で紹介しました。
興味深かったのは、年齢に関係なく、青春時代の思い出の一冊としてスタンダール、ヘッセ、チェーホフなど海外の大作家と並んで、漱石、太宰、芥川、周五郎といった日本の文豪たちの作品も選ばれていることでした。「大切な」という言葉から文豪の作品が想起された部分もあると思いますが、ともかく、第一線で活躍されている方々からそうした本が選ばれたのは、うれしい限りです。
古今の大作家の作品は、現在の新潮文庫でも多数収められています。しかし、そうした文豪作品が、約2700タイトルを有する新潮文庫の中で、どう位置付けられているかというと、実は、深刻な事態が起こりつつあると言わざるを得ないのです。
昨年私たちは、書店の文庫の棚をもっと活性化させたいという観点から、営業部と共に売れ筋作品にどんな変化が起きているか、10年前まで溯って調査をしました。そこで分かったのはここ数年、売れ行き500位から1000位あたりに入る、名作と呼ばれるロングセラー作品、あるいは内外の古い作家の著名な作品が、少しずつではあるけれど、売上げ部数を減らしているという事実でした。
つまり、お客様の多くは新刊のコーナー、話題作が並ぶ平積みの台には来て下さるが、棚に並んだ文庫の背表紙を眺めて、じっくりと読みたい本を探すということまでは、なかなかしてくれない、と類推できるわけです。
これは、文庫の使命である「ロングセラー作品の確保とその販売維持」という点で考えると、看過できない問題です。これまでも編集部と営業部は、既刊作品をもっと新しい読者に知ってもらおうと、〈新潮文庫の掘り出し本〉〈私の大切な一冊〉〈おとなの時間〉といったキャンペーンを実施し、普段、棚に差してある文庫に新たなキャッチコピーを入れた帯を巻き、平台などに置くことで、その存在をアピールしてきました。
この度の文豪ナビは、こうしたキャンペーンをさらに強化するために企画されたシリーズと言えます。
今回取り上げた七人の文豪、夏目漱石・芥川龍之介・三島由紀夫・太宰治・川端康成・谷崎潤一郎・山本周五郎は、いずれも新潮文庫の定番作品として、幅広く読まれている作家ですが、中学・高校の教科書や副教材で作品が扱われることも多く、若い人たちにも比較的なじみ易いと考えて、選んであります。
かつて文学少女、文学青年だったお母さん、お父さんにも再び読んでもらいたい、リタイアされた熟年世代にも満足してもらえる内容にしたい――そのためには単なる入門書ではない、読み物としても楽しめる濃密なコンテンツをめざす必要がありました。
プロジェクトは編集のほか、営業・装幀・宣伝の各セクションも参加し、コピーライターにも加わってもらうことで、できるだけ文学臭を抑えながら、斬新かつ楽しい読書ガイドにしようと考えました。会議を開くと、文豪への思い入れがスタッフそれぞれで異なることもあり、議論は紛糾、基本方針がまとまるまで半年近い期間を要しました。
文豪ナビは、中学・高校・大学生の皆さんに一番読んでもらいたいシリーズなので、立ち読みだけでも気に入ってもらえるよう、見た目にも工夫を凝らす必要がありました。その点で苦労したのは、カバーデザインです。
どうです、結構大胆なデザインでしょ。その文豪の生き方、作風を一言で表現できる〈つかみ〉のフレーズを、そのままカバーに大きく使っちゃおうと、スタッフ全員でうんうん唸りながら考えました。この手の本に必ず載っている文豪のポートレートも、写真はやめて、新しい感じのイラストにしました。
エッセイの執筆者については、編集部のネットワークを駆使して、作家の皆さんに文豪への興味をお聞きしながら、原稿依頼をしました。重松清、桐野夏生、田口ランディ、石田衣良さんほか計14名の人気作家のご協力をいただきました。
うれしかったのは、皆さんが予想以上に文豪への深い愛着を持っており、若い人たちへ文豪作品の素晴らしさを熱っぽく語ってくれたことです。
ガイドの骨格となる評伝は、電通大の島内景二さんが担当し、できる限りやさしく、現代の風俗や流行に関連させながら書いています。『要約 世界文学全集』などの著書で知られる木原武一さんは文豪作品の要約を担当、原文の特徴や雰囲気をそのまま生かしながら見事にストーリーを凝縮させています。ベストセラー『声に出して読みたい日本語』の著者である齋藤孝さんは、文豪作品の名場面から、ぜひとも声に出して読んでほしいところを抽出し、その理由についてわかりやすく解説しています。抽出した文章は大きな活字で組み、小・中学生にも読めるように、たくさんルビを振りました。
この文豪ナビで特に力を入れたのは、作品の視覚的イメージをカラー写真や図で紹介して、読者の気分に合わせた読書体験を提案した点です。各巻冒頭の〈こんなとき読みたい〉の章で、名作それぞれ3冊を取り上げています。例えば漱石の「夢十夜」では、夜の学校の廊下の写真を大きく見せて、夢の世界の怖さを表現しました。
また〈作品紹介ナビ〉の章では、チャート図を使って、その作家のどの作品から読み進めるべきか、モデルケースを紹介しました。コンパクトな作品解説とインデックス機能も兼ねているので、すぐに作品の中身を知りたい人には重宝なページです。
私たち編集スタッフも久しぶりに文豪作品を読み直し、そのストーリーの面白さ、文体の迫力、表現の巧みさに驚き、古びることのない、文豪のスゴさを実感できました。このシリーズで読者の皆さんが、文豪作品の新たな魅力をたくさん発見し、それぞれの作品集も読んでもらえることを切に願っています。
興味深かったのは、年齢に関係なく、青春時代の思い出の一冊としてスタンダール、ヘッセ、チェーホフなど海外の大作家と並んで、漱石、太宰、芥川、周五郎といった日本の文豪たちの作品も選ばれていることでした。「大切な」という言葉から文豪の作品が想起された部分もあると思いますが、ともかく、第一線で活躍されている方々からそうした本が選ばれたのは、うれしい限りです。
古今の大作家の作品は、現在の新潮文庫でも多数収められています。しかし、そうした文豪作品が、約2700タイトルを有する新潮文庫の中で、どう位置付けられているかというと、実は、深刻な事態が起こりつつあると言わざるを得ないのです。
昨年私たちは、書店の文庫の棚をもっと活性化させたいという観点から、営業部と共に売れ筋作品にどんな変化が起きているか、10年前まで溯って調査をしました。そこで分かったのはここ数年、売れ行き500位から1000位あたりに入る、名作と呼ばれるロングセラー作品、あるいは内外の古い作家の著名な作品が、少しずつではあるけれど、売上げ部数を減らしているという事実でした。
つまり、お客様の多くは新刊のコーナー、話題作が並ぶ平積みの台には来て下さるが、棚に並んだ文庫の背表紙を眺めて、じっくりと読みたい本を探すということまでは、なかなかしてくれない、と類推できるわけです。
これは、文庫の使命である「ロングセラー作品の確保とその販売維持」という点で考えると、看過できない問題です。これまでも編集部と営業部は、既刊作品をもっと新しい読者に知ってもらおうと、〈新潮文庫の掘り出し本〉〈私の大切な一冊〉〈おとなの時間〉といったキャンペーンを実施し、普段、棚に差してある文庫に新たなキャッチコピーを入れた帯を巻き、平台などに置くことで、その存在をアピールしてきました。
この度の文豪ナビは、こうしたキャンペーンをさらに強化するために企画されたシリーズと言えます。
今回取り上げた七人の文豪、夏目漱石・芥川龍之介・三島由紀夫・太宰治・川端康成・谷崎潤一郎・山本周五郎は、いずれも新潮文庫の定番作品として、幅広く読まれている作家ですが、中学・高校の教科書や副教材で作品が扱われることも多く、若い人たちにも比較的なじみ易いと考えて、選んであります。
かつて文学少女、文学青年だったお母さん、お父さんにも再び読んでもらいたい、リタイアされた熟年世代にも満足してもらえる内容にしたい――そのためには単なる入門書ではない、読み物としても楽しめる濃密なコンテンツをめざす必要がありました。
プロジェクトは編集のほか、営業・装幀・宣伝の各セクションも参加し、コピーライターにも加わってもらうことで、できるだけ文学臭を抑えながら、斬新かつ楽しい読書ガイドにしようと考えました。会議を開くと、文豪への思い入れがスタッフそれぞれで異なることもあり、議論は紛糾、基本方針がまとまるまで半年近い期間を要しました。
文豪ナビは、中学・高校・大学生の皆さんに一番読んでもらいたいシリーズなので、立ち読みだけでも気に入ってもらえるよう、見た目にも工夫を凝らす必要がありました。その点で苦労したのは、カバーデザインです。
どうです、結構大胆なデザインでしょ。その文豪の生き方、作風を一言で表現できる〈つかみ〉のフレーズを、そのままカバーに大きく使っちゃおうと、スタッフ全員でうんうん唸りながら考えました。この手の本に必ず載っている文豪のポートレートも、写真はやめて、新しい感じのイラストにしました。
エッセイの執筆者については、編集部のネットワークを駆使して、作家の皆さんに文豪への興味をお聞きしながら、原稿依頼をしました。重松清、桐野夏生、田口ランディ、石田衣良さんほか計14名の人気作家のご協力をいただきました。
うれしかったのは、皆さんが予想以上に文豪への深い愛着を持っており、若い人たちへ文豪作品の素晴らしさを熱っぽく語ってくれたことです。
ガイドの骨格となる評伝は、電通大の島内景二さんが担当し、できる限りやさしく、現代の風俗や流行に関連させながら書いています。『要約 世界文学全集』などの著書で知られる木原武一さんは文豪作品の要約を担当、原文の特徴や雰囲気をそのまま生かしながら見事にストーリーを凝縮させています。ベストセラー『声に出して読みたい日本語』の著者である齋藤孝さんは、文豪作品の名場面から、ぜひとも声に出して読んでほしいところを抽出し、その理由についてわかりやすく解説しています。抽出した文章は大きな活字で組み、小・中学生にも読めるように、たくさんルビを振りました。
この文豪ナビで特に力を入れたのは、作品の視覚的イメージをカラー写真や図で紹介して、読者の気分に合わせた読書体験を提案した点です。各巻冒頭の〈こんなとき読みたい〉の章で、名作それぞれ3冊を取り上げています。例えば漱石の「夢十夜」では、夜の学校の廊下の写真を大きく見せて、夢の世界の怖さを表現しました。
また〈作品紹介ナビ〉の章では、チャート図を使って、その作家のどの作品から読み進めるべきか、モデルケースを紹介しました。コンパクトな作品解説とインデックス機能も兼ねているので、すぐに作品の中身を知りたい人には重宝なページです。
私たち編集スタッフも久しぶりに文豪作品を読み直し、そのストーリーの面白さ、文体の迫力、表現の巧みさに驚き、古びることのない、文豪のスゴさを実感できました。このシリーズで読者の皆さんが、文豪作品の新たな魅力をたくさん発見し、それぞれの作品集も読んでもらえることを切に願っています。
著者プロフィール
新潮文庫
シンチョウブンコ
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