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考える障害者

ホーキング青山/著

836円(税込)

発売日:2017/12/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

「24時間テレビ」「乙武氏」「パラリンピック」「やまゆり園事件」「バリバラ」……ってどうよ? タブーと偽善を吹き飛ばす、本音度100%の障害者論。

往々にして世間は障害者を汚れなき存在のように扱う。一方で、表には出てこないが、「厄介者」扱いする人もいる。そんな両極端の捉え方ってなんかヘンじゃないか――身体障害者芸人として20余年活動してきた著者は、偽善と建前を痛烈に嗤い、矛盾と盲点を鋭く衝く。「24時間テレビ」「バリバラ」「乙武氏」「パラリンピック」から「やまゆり園事件」まで、本音度100パーセントで書き尽くした、前代未聞の障害者論。

目次
まえがき
1「タブー」を考える
障害者は気を遣われる/バカにしてるのか?/理解されないのはなぜか/そしてタブーになる/障害と障がいと障碍/差別用語は使う人の問題/税金の問題/働かない方がいいのか/労働は何のためか
2「タテマエ」を考える
タテマエの弊害/人間みな平等だが/個性で片づけるな/こんな個性は嫌だ/治せるものなら治したい/多様性のために生きているのではない/一口には言えない/ボランティアが障害者を弱くする/私が見たボランティア
3「社会進出」を考える
セックスボランティア/『バリバラ』への違和感/今さら感/何のための笑いなのか/パラリンピック/先人がいない苦労
4「美談」を考える
『24時間テレビ』のこと/聖人君子のイメージ/ご意見は?/喜ぶ人がいる限り変わらない/感動ポルノ批判は容易だが/「感動するな」もおかしい/感動するなら評価をくれ
5「乙武氏」を考える
日本一有名な障害者/よだれは見たくない/消臭されたウンコ/子どもは遠慮なし/不倫騒動をどう見るか/健常者の感覚
6「やまゆり園事件」を考える
やまゆり園事件とは/介護者は天使ではない/容疑者はかなり極端/生きていい理由/本当に考える必要があること
7「本音」を考える
同じ人間として扱ってほしい/ナンセンスな質問/バニラ・エア騒動を考える/異議申し立ての意義/愛想は大事/できれば大らかに/親切な人が壁になる/なぜダメ出しを/適切な線引き/結論というほどではないが/もっと胸襟を開いて話し合いたい
あとがき

書誌情報

読み仮名 カンガエルショウガイシャ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610746-7
C-CODE 0236
整理番号 746
ジャンル 暮らし・健康・料理
定価 836円
電子書籍 価格 792円
電子書籍 配信開始日 2017/12/22

インタビュー/対談/エッセイ

バリアフリー化は進んだけれど

ホーキング青山

「バリアフリー」という言葉が世間に登場するようになったのは20年以上前である。少子高齢化社会に突入する中、福祉や介護の分野により注目が集まるようになり、よく使われるようになった。私はこの言葉が飛び交い始めたころに、身体障害者のお笑い芸人としてデビューした。
 最初はとにかくなにをやって良いのかわからず、世間が障害者に抱いているであろう先入観や思いを逆手に取って利用しながら「24時間テレビ」の悪口を言い、やたら美化されがちな「パラリンピック」を嗤い、皆が知らないであろう障害者の日常や実は切実な性の問題をぶちまけ――と、とにかく、私以外はネタにしづらいテーマをしゃべりまくってきた。
 別に「障害者を理解してもらうために」なんて崇高な使命感のようなものはまったくなく、自分がしゃべったら一番ウケるだろうネタを選んで、しゃべってきたのだ。芸人なのだから。
 そして、気がついたらデビューしてから20年以上経っていた。
 NHK-Eテレでは「バリバラ」という障害者のバラエティー番組が始まった。「障害者の既成概念を破る番組!」と結構話題にもなったが、内容は私がデビューしたころやってた話を焼き直しているだけのようでピンとこなかった。
 しばらくして今度は乙武洋匡氏の不倫問題が起きた。「障害者のスキャンダル」はかなり珍しく大騒ぎになったが、どうもコメンテーター等が語っていることがいまひとつ本質を突いていないように見えた。「障害者だからって特別扱いすべきではない」というタテマエから乙武氏を批判している人がいる一方で「障害者をそこまで責めていいものか」という妙な遠慮も垣間見えた。どこか及び腰なのだ。ひょっとするとわざと本質を突かないようにずらしているのでは? とさえ思える論調も多く、すごく違和感を覚えたものである。
 その数か月後には日本中の障害者を震撼させる事件が起きた。あの相模原での「やまゆり園事件」だ。今もあの被告は「障害者は殺していい」と主張し続けているという。この事件についての議論も、どこかピンボケに私には思えた。
 これらの障害者に関する様々な出来事、事件は「社会にとって障害者とはなにか」「社会(健常者)は障害者とどう接するべきか」という根本的な問題を社会や個人に突きつけていると思う。
 この20年で、障害者のためのインフラはかなり整い、バリアフリー化は進んだと思う。その一方で、実は右に述べたような根本的な問題に関してはあまり進歩がないようにも感じる。
 こんなご時世だからこそ、あえて自分の考えを世の中に問いかけてみたい。そんなことを考えながら書いたのが拙著『考える障害者』である。

(ほーきんぐ・あおやま お笑い芸人)
波 2018年1月号より

薀蓄倉庫

電動車イスを押さないでください

 街で車イスの障害者の方を見かけると、何か手助けしたほうがいいのだろうか、と思われる方もいらっしゃるかと思います。実際に手助けが必要であれば、すべきでしょうが、一方で頼まれもしないのにいきなり何かするのは止めたほうがいいでしょう。『考える障害者』の著者、ホーキング青山さんは普段、電動車イスで移動しています。それでも「押しましょうか?」と聞かれることがあるとか。当然ながら、電動なので基本的に人力は不要。下手に押したらかえって危ないのです。
 同書は普段は聞けない障害者の本心が詰まった、唯一無二の障害者論です。

掲載:2017年12月25日

担当編集者のひとこと

唯一無二の障害者論

 著者のホーキング青山さんは、すでにキャリア20年以上を誇るお笑い芸人で、著作も多くあります。今回の『考える障害者』は、その中でも集大成的な1冊だと言えます。
 最近は、NHK‐Eテレの「バリバラ」に代表されるように、かなり障害者についてオープンな議論もされるようになってきました。こうした動きのきっかけになった1人がホーキングさんであることは間違いないでしょう。デビューから一貫して、さまざまなタテマエを排して、常に本音で勝負してきました。
 今回も、ホーキングさんならではの視点で、障害者を巡るさまざまな問題について論じていきます。たとえば「24時間テレビ」について「あれは偽善だ」と言うのは簡単です。しかし、必ずしもそんな単純な見方をホーキングさんは示しません。かといってもちろん「素晴らしい」と絶賛もしていません。もっと微妙なところについて、あれこれと思索を重ねていくのです。
 また「やまゆり園事件」についての見解は、他の論者からは見られないもので、必読ではないかと思います。
 しかも凄いのはこうした重いテーマを扱いながらも、随所に笑いを散りばめているところです。唯一無二の「障害者論」をぜひお読みください。

2017/12/25

著者プロフィール

ホーキング青山

ホーキング・アオヤマ

1973(昭和48)年、東京都生まれ。先天性多発性関節拘縮症のため、生まれたときから両手両足は使えない。1994年、お笑い芸人としてデビュー。ライブを中心に活動中。著書に『差別をしよう!』『日本の差法』(ビートたけしとの対談)など。

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