気づいたら先頭に立っていた日本経済
880円(税込)
発売日:2016/12/16
- 新書
- 電子書籍あり
「第2の人生」市場、ギャンブル、観光……「遊民経済学」で未来が拓ける。
金融を緩和しても財政を拡大してもデフレは一向に止まらない。それは先進国に共通した悩みである。しかし悲観することはない。経済が「実需」から遊離し、「遊び」でしか伸ばせなくなった時代、もっとも可能性に満ちている国は日本なのだから。ゲーム、観光、ギャンブル、「第二の人生」マーケットと、成長のタネは無限にある。競馬と麻雀を愛するエコノミストが独自の「遊民経済学」で読み解いた日本経済の姿。
長期停滞時代の勝ち組は日本である
アベノミクスは世界のお手本?
JR九州は遊民経済学の優等生
フェイスブックが旅の道連れに
水木しげると出雲大社
「司馬遼太郎」が上げた四国の価値
「フロンティア」でなくなった北海道の生きる道
ゲーム産業は「摂取される小作人」?
サービス業化する「お葬式」
ソニーとディズニー
産業としての競馬の可能性
日本版カジノ法案の本当のところ
台湾で選挙見物を楽しむ
夏は福島競馬に通う理由
どうすれば高齢者はカネを使うのか
「第2の人生の達人」伊能忠敬
「50代のお父さん」になった日本経済
書誌情報
読み仮名 | キヅイタラセントウニタッテイタニホンケイザイ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 256ページ |
ISBN | 978-4-10-610697-2 |
C-CODE | 0233 |
整理番号 | 697 |
定価 | 880円 |
電子書籍 価格 | 880円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/12/23 |
蘊蓄倉庫
「第二の人生の達人」伊能忠敬
著者が「第二の人生の達人」と呼ぶ伊能忠敬が引退したのは50歳の時でした。亡くなるのは73歳。その23年間で日本中を実測して歩き、地図を作り上げたわけです。それを可能にしたのは、忠敬の健康な身体と潤沢な資産。事業で成功した忠敬の資産は、現在の価値で30億円から50億円くらいはあったと見積もられています。ともあれ、健康と資産に恵まれ好きなことに没頭した忠敬の「第二の人生」は、現代人にも貴重な示唆を与えてくれます。
掲載:2016年12月22日
担当編集者のひとこと
真面目に遊ぶサラリーマン
『気づいたら先頭に立っていた日本経済』の著者、吉崎達彦さんとは、11年前に『1985年』という本を一緒に作ったことがあるのですが、私はそのずっと前から吉崎さんのサイト「溜池通信」の読者でした。「溜池通信」では、同名のレポートが二週間に一回更新されるのですが、「かんべえの不規則発言」と称するつぶやきも日々更新されております。これが実に面白い。
吉崎さんの面白さは、議論が建前論やキレイゴトに流れそうになった時に、味も素っ気もない事実や本音ベースの発言をぶつけて、ものの見方を正常化してくれるところにあります。「そうだよな。物事ってこういう風に動くものだよな」と納得させてくれる。私は常々、吉崎さんの言論活動は、日本のサラリーマンが普通に抱く感覚や意見をもっとも的確に言語化してくれているものだと思っています。
本書はその吉崎さんの面白さが十全に発揮された著作です。根本にある問題意識は、「金融緩和も財政出動もほとんど効果がなく、先進国で共通して進むデフレはどうすれば克服できるのか」といったものですが、吉崎さんはその解を「もっと遊ぶこと!」と定めると、野暮な議論はほどほどにして、自分が遊び続けているところを見せるのです。
で、この遊んでいる姿がいいんですね。「プライベートジェットでドバイに行って5つ星ホテルに泊まって豪遊しました」だったら共感もできないですが、吉崎さんのお楽しみは週末の競馬とか出張先のひとりグルメ、時折の麻雀やカジノなのです。休日にラーメン次郎に出かけるときには、しっかりと家人の目を気にしている。ああ、この日本の真面目なサラリーマンの感覚、お分かり頂けるでしょうか?
ともあれ、吉崎さんオリジナルの「遊民経済学」を楽しんでいるうちに、遙かに遠いところまで連れて行ってくれるのがこの本です。ぜひご一読あれ。
2016/12/22
著者プロフィール
吉崎達彦
ヨシザキ・タツヒコ
1960(昭和35)年富山県生まれ。双日総合研究所チーフエコノミスト。一橋大学社会学部を卒業後、日商岩井(現・双日)に入社。ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会代表幹事秘書などを経て現職。著書に『アメリカの論理』『1985年』など。