観光立国の正体
902円(税込)
発売日:2016/11/17
- 新書
- 電子書籍あり
地元のボスゾンビを一掃せよ。「おもてなし」を押しつけるな。リピーターの獲得を目指せ。地方から日本を再生させる処方箋。
爆買い、インバウンド、東京オリンピック……。訪日外国人の急増とデフレの慢性化で、国策としての「観光立国」への期待が急速に高まってきた。しかし、日本のリゾート・観光地の現場には、いまだに「団体・格安・一泊二日」の旧来型モデルに安住している「地域のボスゾンビ」たちが跋扈している。日本を真の「観光立国」たらしめるには何が必要なのか。地域振興のエキスパートと観光のカリスマが徹底討論。
書誌情報
読み仮名 | カンコウリッコクノショウタイ |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 272ページ |
ISBN | 978-4-10-610692-7 |
C-CODE | 0263 |
整理番号 | 692 |
定価 | 902円 |
電子書籍 価格 | 902円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/11/25 |
蘊蓄倉庫
本マグロまるごと1本解体プラン
北海道の松前町の旅館に、「本マグロまるごと1本解体していかようにでも料理します。値段は21万円から」というプランがあります。このプランの作成に携わったのが、『観光立国の正体』の著者のひとりである山田桂一郎さん。これは富裕層向けの企画として始めたものですが、最初に興味をもってやってきたのは海外の富裕層やメディアだったそうです。明確な旅の目的になるプランであれば、僻地でも値段が高くても選ばれる。今では商社の接待などでもこのプランが活用されているそうです。
掲載:2016年11月25日
担当編集者のひとこと
「おもてなし」という虚構
訪日外国人の数が2000万人を突破し、「爆買い」に注目が集まる中で、「観光立国」によって日本を立て直そうという気運が高まってきました。政府は2030年には訪日外国人の数を6000万人にまで増やすという強気の計画を立てており、東京オリンピックの開催も前のめりの姿勢に拍車をかけています。
しかし、足元を見ると、「観光立国」や「日本はおもてなしの国である」などとは言えない現実があります。圧倒的に不足している都市部の宿泊施設。山手線の駅名表示板にすら英語表記が完備されず、東海道新幹線にもスーツケース置き場がない「おもてなし」の欠如。顧客マーケティングが存在せず、正当な対価を得て価値の向上を目指すよりも「安売り」に流れがちな風潮。なかでも一番の問題は、いまだに「団体・格安・一泊二日」の旧来型モデルに安住している地域の「ボスゾンビ」たちの存在です。「地域創生」が注目され、観光立国に対する期待が高まる中で、有名観光地のあちこちで、こうした「ボスゾンビ」たちが復活しつつあります。
本書の著者である藻谷氏と山田氏は、ともに地域創生や観光地の再生の事業に現場で取り組んでいるスペシャリストです。現場で格闘を続ける中で彼らが見てきた「観光立国の正体」は、相当に生々しいものです。にもかかわらず、その現実に絶望することなく、彼らが導き出した「地方から再生させる処方箋」には、参考になるアイデアがたくさん詰まっています。鍵になる考え方は、商品開発の「マーケットイン」、高付加価値化、ピラミッド型の市場形成、周遊ではなく滞在、地域一体での地域価値の向上の努力、などです。それぞれに付された実例にも、「へぇ~、日本の中でもこんな取り組みが進んでいるのか!」と目から鱗が落ちるものが沢山あります。
絶対の自信を持っておすすめできる一冊です。ぜひご一読ください。
2016/11/25
著者プロフィール
藻谷浩介
モタニ・コウスケ
1964年山口県生れ。地域エコノミスト。株式会社日本総合研究所主席研究員。平成大合併前の約3200の市町村すべて、海外95カ国を私費で訪問。地域特性を多面的に把握し、地域振興や人口問題に関して精力的に研究・執筆・講演を行っている。著書に『デフレの正体』、『里山資本主義』、『完本 しなやかな日本列島のつくりかた』(対談集)、『観光立国の正体』(山田桂一郎氏との共著)、『経済成長なき幸福国家論』(平田オリザ氏との共著)、『世界まちかど地政学』などがある。
山田桂一郎
ヤマダ・ケイイチロウ
1965(昭和40)年三重県生まれ。スイス在住の「観光カリスマ」。JTIC.SWISS代表。和歌山大学客員教授。