個人を幸福にしない日本の組織
814円(税込)
発売日:2016/02/17
- 新書
- 電子書籍あり
「職場」「人事」「大学入試」「PTA」……。報われないのはワケがある。
昔ながらの「日本の組織」はもはや限界である。強い同調圧力や過剰なコンプライアンスゆえに、組織に属す個人の人格や個性を抹殺し、ストレスを増しているのだ。〈組織はバラバラなくらいがよい〉〈厳選された人材は伸びない〉〈大学入試に抽選を取り入れよ〉〈PTAや町内会は自由参加でよい〉……従来の組織論の間違いや欠点を徹底的に追及。個人を尊重する仕組みに変える画期的提言を示す。
一 なぜ、「見せかけの勤勉」がはびこるのか
一 「35歳限界説」を捏造した真犯人
一 過剰管理こそ不祥事の温床
一 公募で逸材が採れないわけ
一 競争試験はなぜダメか
一 地方創生の死角
一 人々を遠ざける無用な壁
引用文献
書誌情報
読み仮名 | コジンヲコウフクニシナイニホンノソシキ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-10-610656-9 |
C-CODE | 0234 |
整理番号 | 656 |
ジャンル | 社会学 |
定価 | 814円 |
電子書籍 価格 | 814円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/05/27 |
蘊蓄倉庫
太田肇氏は、役所や会社で発生する「不祥事」を、以下のような6つに分類しています。
[粗暴型] 暴行、傷害、わいせつ、セクハラ、パワハラなど。
[たるみ型] 不注意による事故、飲酒運転、無断欠勤、職務専念義務違反など。
[私益追求型] 収賄、横領、不正受験、情実人事など。
[未熟型] 単純ミス、事故など。
[組織エゴ型] データや数値の改ざん、捏造、情報の隠蔽など。
[ゴマすり型] 同上。
これらのうち「粗暴型」「たるみ型」「私益追求型」は、管理強化や服務規律の徹底、厳罰化の抑止力によって抑制できるかもしれないのですが、あくまで「短期的」なのだそうです。
「未熟型」には管理強化や厳罰化は全く効果がなく、逆にミスを隠そうとして、重大な不祥事を引き起こす可能性があるそうです。一例は、2005年に起きたJR福知山線の脱線事故です。
「組織エゴ型」や「ゴマすり型」は、管理強化が逆効果になることが多いそうです。このタイプは、組織や上司に対して忠実な組織人が引き起こす不祥事だからだそうです。こうした例では、2009年の大阪地検特捜部の証拠改ざんや2015年の東芝の不適切な会計処理問題が挙げられています。
こうした不祥事を抑制するには、管理強化や厳罰化よりも、組織で個人の「職業的自尊心」を認めることが重要で、世間から尊敬されたり上司から認められたりして自分の職業や職責にプライドを持てれば、不祥事は減るのだそうです。
その具体的な方策については本書の第三章に詳述されています。
担当編集者のひとこと
個人を抹殺する組織、個人を尊重する組織
太田肇氏は、組織論を専門にする学者です。特に、個人を大切にし、個人を生かす組織や社会を追究されています。
理論や実証だけでなく、数多く現場を踏まれ、取材、体験した皮膚感覚も研究に生かされています。これまでに訪れた企業は、家族経営の零細企業から巨大企業まで、国内外で延べ1000社以上になるそうです。
また、研究者になる前に公的機関でも10年あまり働かれた経験があり、今では自治体のコンプライアンス委員なども務め、さらにPTAや町内会の運営にも携わられています。
こうしたキャリアの中で、痛感されたのが、「『組織の論理』が強すぎる」ことです。そのため、個人が生かされていないのだそうです。
日本の「組織の論理」はもう限界にきており、「個人を幸福にしない」病巣がここにあるというのです。
本書は、職場、人事、入試、自治体、PTA、町内会など、生きるうえで否応なしにかかわらざるをえない組織の奥底から病巣をえぐり出し、「組織の論理」の間違いやウソ、偽善を次々に明らかにしています。さらに、個人が尊重され、円滑に機能し、成果があがる新しい仕組みへの改善策や斬新な提言をまとめています。
以下はその一例です。
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「なぜ、『見せかけの勤勉』がはびこるのか」
「こんなチームワークはいらない」
「過剰管理こそ不祥事の温床」
「どうすれば、プロ集団に変わるか」
「厳選された人材は伸びない」
「公募で逸材が採れないわけ」
「入学者選抜に抽選を取り入れる」
「地方分権でトクをするのはだれか?」
「PTAや町内会は自由参加でよい」 etc.
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組織内で、報われない……と感じている方も、いまの組織にいるのが楽しいという方も、本書をぜひご一読ください。
2016/02/25
著者プロフィール
太田肇
オオタ・ハジメ
1954年兵庫県生まれ。同志社大学政策学部教授(大学院総合政策科学研究科教授を兼任)。経済学博士。専門は組織論、人事管理論、モチベーション論。個人を生かす組織・社会について研究。著作に『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)『同調圧力の正体』(PHP新書)など。