被差別のグルメ
880円(税込)
発売日:2015/10/19
- 新書
- 電子書籍あり
「そこ」でしか、食べられない美味がある。アブラカス、サイボシ、ゴシドリ、鹿肉、イラブー、ホルモン……。
差別されてきた人びとが生きる場所には、そこでしか食べられないグルメがある。無名で、見た目もよくない、でも、これほど美味しい料理はない……。大阪のアブラカス、サイボシ、ゴシドリ。アイヌの鹿肉、川魚、鍋料理。北方少数民族の魚皮でつくったデザート。沖縄の島々に伝わるイラブー、ソテツ。そして在日韓国・朝鮮人から広がった焼肉など。垂涎の美味と異色の食文化を大宅賞作家が描く傑作ノンフィクション。
書誌情報
読み仮名 | ヒサベツノグルメ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
雑誌から生まれた本 | 週刊新潮から生まれた本 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-10-610640-8 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 640 |
定価 | 880円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2016/04/08 |
蘊蓄倉庫
松阪牛で有名な三重県松阪には、黒毛和牛の肺臓を小さく切って、赤味噌で煮込んだ「クワ」という料理があるそうです。
この「クワ」を出す現地のお店は、毎週水曜日だけにしか作らないそうです。
著者は水曜日に取材に行き、内臓と赤味噌の色が混じった泥色の料理に驚きながらも、食べてみたところ、味噌で煮込んだハラミのような触感で、味は意外においしかったそうです。
この「クワ」も差別されてきた人びとに愛されるグルメのひとつなのです。
担当編集者のひとこと
無名なれど美味!
ノンフィクション作家の上原善広さんは、10年余にわたって「ソウルフード」を取材してきました。
本書では、上原さんの出身地である大阪の同和地区でのアブラカス、サイボシをはじめ、アイヌが愛する鹿肉、川魚や鍋料理、北方少数民族が食べている魚皮のデザート、沖縄の離島に伝わるイラブー、ソテツ、タンナー料理、そして、日本人に好きな人も多い焼肉のルーツまで、全国各地で、差別されてきた人びとが生きる場所に行き、上原さん自らがその料理を食べ、その背景にある食文化にまで深く迫っているルポルタージュです。
一般的には知られていない料理で、見た目もよいとはいえませんが、とても美味な料理ばかりなのだそうです。
「ソウルフード」とは「魂の料理」であり、その料理を愛する人たちの食文化と精神性を抜きには語れない、と上原さんは論じています。
『被差別の食卓』とともに、上原さんでなければ書けなかった本書を、ぜひご賞味ください。
2015/10/23
著者プロフィール
上原善広
ウエハラ・ヨシヒロ
1973(昭和48)年、大阪府生れ。大阪体育大学卒業後、ノンフィクション作家となる。2010(平成22)年、『日本の路地を旅する』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞。主な著書に『被差別の食卓』『聖路加病院訪問看護科 11人のナースたち』『異形の日本人』『私家版 差別語辞典』『異邦人 世界の辺境を旅する』『被差別のグルメ』『一投に賭ける 溝口和洋、最後の無頼派アスリート』『発掘狂騒史 「岩宿」から「神の手」まで』『差別と教育と私』『カナダ 歴史街道をゆく』『辺境の路地へ』『断薬記 私がうつ病の薬をやめた理由』などがある。