チャイナハラスメント―中国にむしられる日本企業―
836円(税込)
発売日:2015/01/16
- 新書
- 電子書籍あり
【詐欺的な契約、デタラメな規制、利用される「反日」】日本企業いじめはここまでひどい!
世界シェアトップのトヨタの販売台数が、なぜ中国ではGMの三分の一なのか。そこには「チャイナハラスメント」とでも呼ぶべき巧妙な嫌がらせが関係している。反日に傾く世論を気にする共産党にとって、中国に進出した日本企業は格好の標的なのだ。改革開放以来三十年の変遷を見てきた著者が、中国人ビジネスマンの頭の中と共産党の思考回路を徹底解説。中国ビジネスに求められる「冷徹な戦略」も詳述する。
書誌情報
読み仮名 | チャイナハラスメントチュウゴクニムシラレルニホンキギョウ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 240ページ |
ISBN | 978-4-10-610602-6 |
C-CODE | 0233 |
整理番号 | 602 |
定価 | 836円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2015/07/17 |
蘊蓄倉庫
中国では公務員であってもさまざまな副業に精を出しますが、その一つに、パトカーの先導サービスがあります。比較的リーズナブルな値段だったので、スズキの中国駐在だった著者の松原氏も、会社トップの訪中の際などには利用することがあったそうです。
ただし、このサービスは近年、北京や上海などの大都市では見かけなくなりました。交通渋滞がひどくなりすぎて、パトカーがクラクションを鳴らした程度では、一般車が道を譲ってくれなくなったからです。
担当編集者のひとこと
「日本企業いじめ」はここまでひどい!
自動車の世界シェアトップはトヨタですが、中国でのシェアはGMの三分の一。これには理由があります。中国では、日本の自動車メーカーにだけ「車台をつくる会社とエンジンをつくる会社は別々の合弁にすること」という規制が施されてきたからです。
中国という大市場へのアクセスを望んだ日本企業は、1990年代以降に「反日」を強めた共産党にとっては格好の「いじめの標的」となり、欧米メーカーとは異なる対応にずっと悩まされてきました。
これに加え、恣意的な規制、資本の原物出資という詐欺的慣行、跋扈する賄賂などの「ビジネス条件」も中国では当たり前。それもあって、人の良い日本企業の中国ビジネスはほとんど儲かっていません。「大きな市場が待っている」「人件費が安い」といった理由で進出した多くの日本企業の期待は、大きく裏切られてきたのです。
どうしてこういう事態が生じてしまったのか。スズキの中国代表などとして改革開放以来の中国と関わってきた著者は、中国人ビジネスマンや中国共産党の思考回路をたどりながら、日本企業の「儲からない構図」を丁寧に解き明かしています。
公衆の面前で平気でウソをつく経営者、「すみません」と言ったら負けだと考える中国人の奇天烈な言い訳、カラオケ店の「えげつなさ」など、本書で繰り出されるエピソードは唖然とするものばかりですが、中国でのビジネスの実態を鮮やかに浮き彫りにしています。外交官や学者の書いた本はあれど、第一線で最高レベルの責任を負ってきたビジネスマンが中国での経験をリアルに伝えた本はこれまでほとんどありません。その意味で、本書はとても貴重な現場報告です。
一読すれば、「日本人に生まれて、まあ良かった」と思うことうけあいです。
2015/01/23
著者プロフィール
松原邦久
マツバラ・クニヒサ
1943(昭和18)年静岡県浜松市生まれ。同志社大学法学部を卒業後、1967年に鈴木自動車工業(現スズキ)に入社、中国部部長、重慶長安鈴木汽車有限公司総経理、北京事務所首席代表を歴任。2004年、中国政府より「国家友誼奨」を授与される。