賢者の戦略―生き残るためのインテリジェンス―
880円(税込)
発売日:2014/12/17
- 新書
- 電子書籍あり
反知性主義、イスラム国、ウクライナ危機、新帝国主義……全真相を明かす。
不可解に思える出来事も、巨大なうねりの表層にすぎない。深層はインテリジェンスという叡智により立ち現れるのだ。日本が生き残るための戦略とは? 我々は反知性主義にどう抗うべきか? 「イスラム国」の台頭、中ロの新・帝国主義路線、マレーシア機撃墜、ウクライナ併合、ガザ地区砲撃、集団的自衛権論争など、最新情勢のつぶさな分析から鮮やかに「解」が導き出されていく。最強の外交的知性が贈る現代人必読の書。
書誌情報
読み仮名 | ケンジャノセンリャクイキノコルタメノインテリジェンス |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 272ページ |
ISBN | 978-4-10-610600-2 |
C-CODE | 0231 |
整理番号 | 600 |
ジャンル | 政治 |
定価 | 880円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2015/06/19 |
蘊蓄倉庫
スパイというと、007=ジェームズ・ボンドをイメージする人がいまだ多いかもしれない。超高級車「アストン・マーチン」を乗り回し、高級リゾートホテルに泊り歩き、世界中の美女たちと遊び、お金を湯水の如く使う。
しかし、実際のスパイが幾らぐらいの報酬をもらっているかはまず明かされることはない。無論、CIAやMI6が統計を発表することもない。スパイの報酬はまさにトップシークレット中のトップシークレットである。
それを、本書内で佐藤優氏が自らの実体験としてリアルに暴露している。
佐藤優氏は2002年、鈴木宗男事件に絡んで東京地検特捜部の「国策捜査」によって逮捕され、外務省から休職を命じられている。その際、ロシア、イスラエル、韓国などの情報機関から、スパイとして「うちで働かないか」とリクルートを受けたという。その時の提示金額がなぜかどの国もほぼ同額で、「年収と経費を含めてしめて5000万円でどうか」というオファーだったというのだ。佐藤氏はこう語っている。
「当時の私は、人間としての値札が1000万円、加えて経費を3000~4000万円使わせてやるという、この程度の情報屋だったわけです。愛人を持っていたり、バカラにはまっていたり、そういう趣味がない限り、インテリジェンス・オフィサーが一人で使う金額はだいたい3000万円、プラスアルファ1000万円程度なのだと思います」
スパイ・リクルートの観点から佐藤氏がいま一番その動向を注目しているのは、あのSTAP細胞騒動の小保方晴子さんだという。
「理研の小保方さんの問題が起きたとき、僕がまず心配になったのは、彼女がイランや北朝鮮などにリクルートされたら、とても面倒なことになる、ということでした。彼女には研究者としての一定の能力がある。理系の脳も持っている、恐らく日本に対して恨みを持っている、と三条件が揃っています。そんな彼女に、『あなたは研究が好きでしょう。わが国の新しい研究施設で生物兵器の研究をやりませんか。恨みも晴らせるんじゃないですか』などと声をかけてこないとも限らないのです」
担当編集者のひとこと
手嶋龍一氏と佐藤優氏の対談本を、今年も刊行!
手嶋龍一、佐藤優両氏が最新の世界情勢をつぶさに分析する「インテリジェンス対論」シリーズも、12月刊行の『賢者の戦略―生き残るためのインテリジェンス―』で3弾目。内容、初版部数ともに前作を上回るものとなっています。
第1弾『動乱のインテリジェンス』(2012年10月刊)は6万6000部、『知の武装―救国のインテリジェンス―』(2013年12月刊)は15万部と、年々売上げを伸ばしてきましたが、本書は既に書店からの注文や読者からの予約が殺到し、前作を大きく上回る5万部でスタートすることとなりました。
とりわけ佐藤優氏は著作が多く、特に池上彰氏との共著『新・戦争論』が話題となっていますが、本書の特徴はその内容の「深さ」「新しさ」「濃密さ」にあります。「インテリジェンスの二大巨頭」の分析力と情報力で明らかになる、メディアも報じない、識者も気付けない、まさに衝撃的な事実の数々。一冊で2014年の世界を鷲づかみにし、2015年を見通すことのできる、現代人必読の書です。
2014/12/25
著者プロフィール
手嶋龍一
テシマ・リュウイチ
1949(昭和24)年、北海道生れ。外交ジャーナリスト・作家。冷戦の終焉にNHKワシントン特派員として立会い、FSX・次期支援戦闘機の開発をめぐる日米の暗闘を描いた『たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て―』を発表。続いて湾岸戦争に遭遇して迷走するニッポンの素顔を活写した『外交敗戦―130億ドルは砂に消えた―』(いずれも新潮文庫)を著し、注目を集める。2001(平成13)年の同時多発テロ事件ではワシントン支局長として11日間にわたる昼夜連続の中継放送を担った。2006年には世界各地に張り巡らした極秘の情報源を駆使して北の独裁国家の謎に挑んだ『ウルトラ・ダラー』を発表。「日々のニュースがこの物語を追いかけている」と評され、新たに出現したインテリジェンス小説として出版界に衝撃を与えた。『スギハラ・サバイバル』はその姉妹篇にあたる。ほかに『インテリジェンスの賢者たち』や『宰相のインテリジェンス―9.11から3.11へ―』がある。
佐藤優
サトウ・マサル
1960年生れ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了の後、外務省入省。在英大使館、在露大使館などを経て、1995年から外務本省国際情報局分析第一課に勤務。2002年に背任と偽計業務妨害容疑で逮捕・起訴され、東京拘置所に512日間勾留。2005年2月執行猶予付き有罪判決を受ける。2009年6月に最高裁で上告棄却、執行猶予付き有罪確定で外務省を失職。2013年6月に執行猶予期間を満了、刑の言い渡しが効力を失った。2005年、自らの逮捕の経緯と国策捜査の裏側を綴った『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』で毎日出版文化賞特別賞を受賞。以後、作家として外交から政治、歴史、神学、教養、文学に至る多方面で精力的に活動している。主な単著は『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞)、『獄中記』『私のマルクス』『交渉術』『紳士協定―私のイギリス物語』『先生と私』『いま生きる「資本論」』『神学の思考―キリスト教とは何か』『君たちが知っておくべきこと―未来のエリートとの対話』『十五の夏』(梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞)、『それからの帝国』など膨大で、共著も数多い。2020年、その旺盛で広範な執筆活動に対し菊池寛賞を贈られた。