がんばると迷惑な人
792円(税込)
発売日:2014/12/17
- 新書
- 電子書籍あり
合理的手抜きが成果をあげる! ビジネスの質を高める画期的仕事論。
はりきるほど、ズレる。意欲はあるのに、スベる。やる気ばかりで、ツカえない。そんな人っていませんか? “努力は必ず実を結ぶ”は幻想です。重要なのは「がんばり」ではなく仕事の「質」。確実に成果を上げる「合理的手抜き」とは――。やる気を育む人事表彰制度、ムダを省く技術、野心を業績に変える思考法、部下の承認欲求に応える管理術、自営業集団としてのチーム運営など、“残念な働き方”にならない為の画期的提言。
引用文献
書誌情報
読み仮名 | ガンバルトメイワクナヒト |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610599-9 |
C-CODE | 0234 |
整理番号 | 599 |
ジャンル | マネジメント・人材管理、ビジネス実用 |
定価 | 792円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2015/06/19 |
インタビュー/対談/エッセイ
波 2015年1月号より がんばると、なぜ迷惑になるのか
順調に会社員生活を歩んでいたが、三〇歳を越え、開発部隊の中心的な役割を担うようになったとき、突然スランプに陥った。表情から生気が消えて口数も減り、体調不良で会社を休みがちになった。そして、とうとう退社してしまった。本人曰く、どんなにがんばっても空回りし、仕事の結果が出ないうえ、後輩もついてこなくなったそうなのだ。職場では周囲に煙たがられていたという。
私のゼミの卒業生でも、近年はN君と同じようにまじめな努力家が、壁にぶつかり、挫折するケースが目につく。企業の人事担当者に尋ねても、高学歴で模範的な社員がメンタルを患い長期休職したり、適応できずに辞めていったりする事例が急増しているという。がんばり続けた挙句、成果があがらず、会社に認められもせず、遂には社会生活を棄ててしまうのだ。私の調査では、これは一九九〇年代半ば頃から顕在化した現象である。
ちょうど日本の労働生産性や国際競争力が急落した時期である。当初はバブルの後遺症と考察されていたが、「失われた一〇年、二〇年」と低迷が長引くうちに、別の原因を疑われるようになった。
ここに挙げた二つの変化は、たまたま時期が一致しただけのようにも見える。しかし、さまざまなデータから分析すると、両者は無関係ではない。
実はこの時期に起きた“あること”がきっかけで、日本人のモットーである“がんばり”、すなわち、勤勉という努力の〈量〉の価値が暴落し、逆に努力の〈質〉の価値が急騰してきたのである。
しかも、この〈量〉と〈質〉は反比例する。つまりがむしゃらにがんばると成果があがらないばかりか、かえってマイナスになることが多いのだ。
連日の残業や駆け回る姿など努力の〈量〉は目に見えるが、〈質〉は見えにくい。しかも日本人は汗水たらしてがんばることが尊いと見なされてきただけに、その思考を切り換えられない。
目の前に理不尽な現実を突きつけられても「精一杯」「全力で」「一丸で」がんばる以外のすべを知らないのだ。これではイノベーションもブレークスルーも生まれず、「隠れブラック企業」ばかり増えるのがオチである。そして欧米企業や新興企業には水をあけられ、成長戦略どころではない。
本書では、相変わらず勤勉な日本人が、なぜ“迷惑な人”になってしまうのか、また日本人の「がんばり病」がどれだけ怖いかを明らかにした。さらに努力を〈量〉から〈質〉へと転換する思考法や、会社など組織が罹る「がんばり病」の正体を見極めて退治し、効率よく働いて成果につながる方法も提示した。
「がんばると迷惑な人」は日本社会の深部に巣食う病巣から今も続々と出現している。あなたの周りにも既にいるはずだ。他人事(ひとごと)ではなく、あなたも「がんばると迷惑な人」になってはいないか。
蘊蓄倉庫
チームワークには二種類ある、と太田氏は分析し、そのちがいを、以下のように説いています。
ひとつは、同じような能力や考えを持った人たちが、力を合わせて一つの目標に突き進む「同質性を軸としたチームワーク」です。
このチーム内では、必然的に、チームのために「自分を殺す」ことが求められます。一人ひとりの個性は必要ありませんし、むしろ個性的な人は排除されます。団結や結束はありますが、それ以上の相互作用は期待できません。
また、チームよりもリーダーやほかのメンバーから認めてもらおうという心理が働きます。そのため表面上は仲がよくても、陰では妬みや足の引っ張り合いが起きます。
もうひとつは、異なる能力や考えを持った人たちが、それぞれの力を発揮してチームの目標に貢献する「異質性を軸としたチームワーク」です。
このメンバーは、「自分を活かすこと」でチームに貢献します。それぞれが専門家や職人であり、それぞれが専門的な役割を担っています。メンバーの一人が欠けても、チームが機能しません。こちらは、“がんばり”を認めてもらうよりも、メンバーは、自分の役割を果たすことやチームの目標を達成することに関心が向けられます。いってみれば、自営業なメンバーの集まりです。このようなチームは、自分の役割が明確で、時代や目的の変化にも強く、個々の役割の「質」を高めようとするのだそうです。
努力の「量」より「質」が大切になったように、いまは、後者のようなチームワークが求められています。
担当編集者のひとこと
やる気は無用。努力は正しく。――「画期的仕事論」
「毎晩、遅くまで残業しているのに、成果が出ない」
「毎日、一生懸命に外回りをしているが、業績に全然つながらない」
「がんばれ、がんばれ、と上司からいつもハッパをかけられるたびに、部下はやる気をなくしていく」
そんな“迷惑な人”は、あなたの周りにいませんか。
長年にわたり企業や官庁の調査を重ね、「個人を尊重する組織」を研究されている太田肇氏(同志社大学政策学部教授)は、そのような“迷惑な人”がどのように現れ、なぜに職場の弊害になっているのか、『がんばると迷惑な人』でわかりやすく解説しています。
90年代に仕事は「量」より「質」が重要になり、その転換ができない人や旧態依然とした働き方が、いまや会社を蝕んでいるとのこと。この「量」と「質」は反比例するのだそうです。
本書で太田氏は、“働き方“を刷新し、ビジネスの質を高めるために、多くの提言を挙げています。以下は、その一部です。
・がんばらなくても、確実に成果を上げる「合理的手抜き」
・モチベーションを高める人事表彰制度
・ムダな努力を省く技術
・部下の承認欲求に応える管理術
・人間関係を破綻させない作法
・野心を業績に変える思考法
・自営業集団としてのチームワーク
・「人を動かす」ための方法
“残念な働き方“を生まないために、すぐに使える実践法が満載です。
ぜひご一読ください。
2014/12/25
著者プロフィール
太田肇
オオタ・ハジメ
1954年兵庫県生まれ。同志社大学政策学部教授(大学院総合政策科学研究科教授を兼任)。経済学博士。専門は組織論、人事管理論、モチベーション論。個人を生かす組織・社会について研究。著作に『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)『同調圧力の正体』(PHP新書)など。