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会話のきっかけ

梶原しげる/著

814円(税込)

発売日:2014/10/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

気まずい沈黙が続く……。さて、どうする?

初対面の相手を前に沈黙が続く。さて、どうしよう……。苦手な挨拶を頼まれた。さて、どうしよう……。近隣トラブルが深刻だ。さて、どうしよう……。とかく面倒な世間でも、口のきき方と心構えひとつでずいぶん楽になるもの。しゃべりのプロが、時に自ら動き、時に先人の知恵を借り、時に勝手に聞き耳を立てて見出した、あらゆる「気まずさ」からの脱出法とは。人づきあいで気苦労を抱えがちな貴方への特効薬。

目次
はじめに
1 よく知らない人にどう話しかければいいか
エラい人との接し方/分かったようなことは言わない/第一声のコツ/江戸っ子は詮索しない/ぐいぐい来る韓国人/リスクが少ない第一声は/どんな質問なら許されるか
2 良い自己紹介と悪い自己紹介
「普通」に悩む就活生/「普通の人」が良い仕事をしている/結局は人柄/厚化粧はいらない/ワハハ本舗の自己紹介/ネガティブ場面をポジティブ材料に
3 目の前でスマホ検索をするな
スターの名前が出てこない/正解を確認しないと気が済まない人/生放送中に検索してメール/アナログだから成立したラジオ番組
4 損得勘定で考えてみる
迷ったときは損得勘定/一冊のビジネス書のタイトル
5「自問自答」で好き嫌いを減らす
大学でワーク中心の講義を開始/生徒との関係を近づける/「論理的に考えるテクニック」を育てる/自問自答しないと考えなくなる/あの人ならどう言うだろうと考える
6 五月病の上手な利用法
消えた五月病/問題解決のためのアプローチ/朝起きられないのは邪魔をするやつがいるから/問題のありかを外在化しよう
7 部下には弁当を買いに行かせろ
悩む人は成長する/どこまで気を利かせられるか/プレゼントにも必要な配慮/入院患者に酒のお見舞い
8 上座下座はマナー本を無視してみよう
タクシーの座席はどこに乗るべきか/新幹線や飛行機にも「上座」「下座」/洋室の上座が一番奥は正しいか/メールのマナーは
9 美人官能小説家に学ぶ婚活の心得
パンツの中身/婚活に成功しないタイプとは/決められない/自分好き/気が利かない/男性は失敗したくない
10 近隣トラブルは声かけで防ぐ
近隣トラブルの怖さ/裁判外紛争解決手続きはどうか/敵をどのように見分けるか/近所づきあいは声かけから/時には鈍感になることも必要
11 直筆の力は絶大である
礼状は面倒くさい/直筆の手紙が持つ力/ソーシャルスキルとしての手紙/「面倒くさい」から抜け出す方法/相手の立場に立って書く
12 挨拶は誰にとってもしんどい
挨拶は難しい/丸谷才一さんが遺した挨拶原稿/「はなはだ簡単ですが」で一五分
13 人間関係の接着剤
被災地での「人間関係作り」で活躍/接着剤はどうつくる/「アメちゃん食べる?」から会話が/自分なりの「接着剤」を
14 うっかりミスを防ぐには「実況」だ
避けたいと思う緊張感でうっかりする/必要な封筒をうっかりポストへ投函/ヒューマンエラーをどう防ぐか/行動調整機能
15 喫茶店で学んだプレゼンの極意七カ条
驚異の勧誘術/身近な話が有効だ/押し付けないで言わせる/細部と機転が重要
16 静かな職場は理想なのか
IT企業の静寂/喫煙ルームに轟く笑い声/峰竜太さんに教えてもらった村の「秘密」
17 まだ「ピースサイン」ですか
女友達の九割以上が「ピースサイン」/「祝福」を態度で示そう/ピースサインをやめてみよう/「チーズ!」より「キムチ!」
18「名前」はその人の宝物だ
名刺交換で「相互自己開示」を学び取る/「名前の由来」を説明しよう/親の愛情が伝わってくる/生まれ育った背景がほの見える/見当違いな自己開示は禍根を残す
19 話しかけられるのが面倒くさい症候群
プライバシーに踏み込まないサービス/ネット通販が伸びている「本当の理由」/対人言語能力は大丈夫?/プロポーズという言語コミュニケーション
20 ロビイストに交渉力を学ぶ
富士山の「世界文化遺産」登録の立役者/何がどこで役に立つかは分からない/ライフの中にワークのヒントが眠っている/「教養」「ユーモア」「つながる力」
21 嵐メンバーたちの観察力
松本潤さんの観察力/即座に反応した大野智さんの自然な対応/三坪で一日八〇万円を売り上げる達人/トイレ、食事、歯磨きの順番は?
22 スーパーのクレーム鑑賞術
某スーパーで展示された「作品群」/「生協の白石さん」はいずこへ/アドバイスを超えたクレームの嵐/目に余る個人攻撃も/人間は悪い所探しが得意/やる気を出させる「コンプリメント」/作文コンクールの審査会にて/先生のコメントに感激した朝井リョウさん/誰のためにコメントするのか/いい所を探し出す力が必要

書誌情報

読み仮名 カイワノキッカケ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610591-3
C-CODE 0281
整理番号 591
ジャンル ビジネス実用、趣味・実用
定価 814円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2015/04/17

インタビュー/対談/エッセイ

波 2014年11月号より 気まずさからの脱出

梶原しげる

長いことアナウンサーをやっていると「さぞや社交的でおしゃべり好きなんだろう」と私のことを勘違いして下さる方がいらっしゃる。ありがたいことだが私は仕事を一歩離れると人見知りが激しくあがり症で口下手だ。
意外に思われるかもしれないが、お笑い芸人さん達にも私の様なタイプが結構いる。
ある若手芸人が本番前テレビ局のトイレに行った。すると思いがけず司会の大物芸人が「小」をしながらちらっと振り向いたそうだ。
「今日一緒か?」
「はい! よろしく御願いしまーす!!」
元気に挨拶をしたものの、その先、何と話したら良いのか「会話のきっかけ」が思いつかない。一緒に並んで用をたしながら言葉を交わすなどとても無理。彼は洗面台へ直行した。そして鏡に向かい大きく目を開け、「これすぐズレるんですわー」と両指を器用に使いコンタクトレンズを調整する風を演じた。
実は彼、コンタクトはしていない。用を終えた大御所が洗面台にやって来て手を洗う。
「大変だな。じゃお先!」
「失礼します! よろしく御願いしまーす!」
苦しまぎれのウソではあるが、「これすぐズレるんですわー」は彼にとって気まずさを克服する会心の「会話のきっかけ」となったそうだ。
先日、親しい友人の娘さんの結婚披露宴に招待された時のこと。私の席は、新婦側主賓席。そこに座っているのは新婦の勤務先上司、以前の勤め先の女性部長、大学時代のゼミ教授、高校時代の恩師等々、私を含め全員初対面同士だ。
乾杯後、それぞれが気まずさに耐えながらビールを黙々と口に運んだりメニューをじっと見つめたりしている。友人は主賓席の気まずい空気解消を私に期待していたのだろう。「これも仕事だ!」と割り切ったらすっと言葉が出た。
「新郎もなっかなかな男前ですねえ」
「ベタ」な一言が場を和ませたらしい。
「似合いのカップルですね」「○ちゃん好みのアスリートだわ」「彼女もテニスサークルでキャプテンでした」「高校ではインターハイ行きましたから」
知らない者同士の「会話のきっかけ」には「肯定的な言葉」をポンと投げ込むと良い。
高層タワービル。閉まりかけのところを無理矢理乗ったエレベーターに怖い顔の社長が……。
どこかで見たことがあるけど名前が思い出せない「偉い人」と新幹線で隣り合わせに……。
夜の町で女性と腕を組む上司とばったり……。
入院して落ち込んでいる友人をわざとらしくない感じで励ましたいが……。
私たちの日常は常に気まずさや戸惑いと隣り合わせだ。そんな時に何を言えばいいか。どう振る舞えばいいか。普段から考えてきたことをまとめたのが本書である。私同様、人見知り、あがり症、口下手な方の参考になると嬉しい。

(かじわら・しげる フリーアナウンサー)

蘊蓄倉庫

「独り言」の効用

 いつも独り言を言っていると気持ち悪がられるリスク大ですが、よく知らない人と雑談をする際、第一声としてもっともリスクが小さいのが独り言だ、というのが梶原しげるさんの見解です。
「ああ、ここなら、千代田線でも来られる! ホーム直結だったんだ……」
 こんな独り言のような感じで切り出すと、相手も「ええ、意外と便利なんですよ、ここ」という風に返せて、そこから雑談が進むというのです。
 それ以外には「共有」「報告」などの手法も有効だそうですが、詳細は割愛。
『会話のきっかけ』には、この他にも人づきあいを楽にするヒントが満載です。
掲載:2014年10月24日

担当編集者のひとこと

初対面の人とどう話すか

 入社して週刊誌の編集部に配属され、初めての出張は沖縄でした。沖縄に行ったのもそれが初めてでした。
 青い空、青い海を堪能できれば良かったのですが、そんなうまい話はありません。同行のベテラン記者はとても厳しい人で、なおかつ口の悪い人でした。
 取材どころか、大人と話をすることもろくに出来ないというレベルの私は、常に先輩の叱責を恐れながら行動していました。
 取材の過程で、地元の方に道を聞くと、
「そこまで案内しましょう」
 そう言って、タクシーに同乗してくださいました。中年の女性だったと思います(といっても多分今の私よりも若い)。
 タクシーには運転手さん、私、先輩、地元の女性の4人が乗っています。その間、特に話すこともなく、沈黙が続きましたが、無事、目的地に到着することができました。
 取材を終えて、その夜。
 先輩は私にこう言いました。
「君さあ、あのタクシーで、一言も喋らなかったよな。ずーっと黙っていた。せっかく案内してくれる人に、少しでも何か話すのが当然じゃないのか。その程度の気も使えないんなら、駄目だ。この仕事、向いていないと思うよ」
 そう言われると返す言葉がありませんでした。初対面の素性も良くわからない人と何を話せばいいのか。さっぱりわからなかったのです。
 で、宣伝ですが、あの頃、もしも『会話のきっかけ』を読んでいれば、こんなことにはならなかっただろう、と思います。この本にはまったく初対面の人と会話を続けるための具体的なアドバイスが書かれているのです。それ以外にも、人間関係の様々な局面で役に立つ知恵が満載です。
 ちなみに、「向いていない」と言われた後、私は早く異動にならないかなあと思っていたのですが、結局、その編集部に10年以上いることになりました。

2014/10/24

著者プロフィール

梶原しげる

カジワラ・シゲル

1950(昭和25)年神奈川県生まれ。早稲田大学第一法学部卒。文化放送に入社してアナウンサーとなり、1992年からフリー。司会業を中心に活躍中。東京成徳大学客員教授(心理学修士)、日本語検定審議委員。著書に『口のきき方』『すべらない敬語』『即答するバカ』など。

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