「いいね!」が社会を破壊する
814円(税込)
発売日:2013/10/17
- 新書
- 電子書籍あり
「便利の毒」に殺される前に――経済小説の第一人者が見据えたネット進化の冷徹な事実。
すべてのモノと情報が、ネットのプラットフォーマーに呑み込まれていく。「いいね!」をクリックするたびに、われわれは知らず知らず、自分の首を絞めているのではないか? より快適な、より便利な生活を追い求め、「無駄」の排除を続けた果てに生まれるのは、皮肉にも人間そのものが「無駄」になる社会……。ネットの進化が実社会にもたらすインパクトを、「ビジネスモデル小説」の第一人者が冷徹に見据える。
書誌情報
読み仮名 | イイネガシャカイヲハカイスル |
---|---|
シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 240ページ |
ISBN | 978-4-10-610542-5 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 542 |
ジャンル | 社会学、IT |
定価 | 814円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2014/04/18 |
蘊蓄倉庫
「素早く動き、破壊せよ」
この言葉は、フェイスブックを創業したマーク・ザッカーバーグ氏が、同社のモットーとして語ったものです。かつてのイノベーションは多くの雇用を生み、人々を豊かにしましたが、現代のイノベーションは多くの産業と雇用を破壊し、富の独占をもたらしてしまう。著者の楡さんは、「これほどネット時代のイノベーションの本質を言い当てた言葉はない」と語っています。
担当編集者のひとこと
いずれ人間は無駄になる?
本書の著者・楡周平さんはかつて、米コダックで働いておられました。当時のコダックはアメリカでも有数の優良企業であり、フィルムは「1ドルで70セントの利益が出る」と言われるほど儲かっていました。そのコダックが昨年、「チャプター11(連邦倒産法第11章)」の適用を申請し、倒産に追い込まれたのは記憶に新しいところです。
いま、すべてのモノと情報が、ネットのプラットフォーマーに呑み込まれつつあります。ネット化の進展は、フィルム産業という巨大な雇用の吸収源をまるごと消滅させました。フィルム産業に起こったことは、これから多くの業界で起こるにちがいありません。楡さんは特に、出版業界では「フィルム産業とまったく同じことが起こる」と予想されています。「いいね!」とクリックするたびに、我々はこの流れに手を貸し続けているわけです。
ネットによって何でも「便利」になっていくことは、本当に良いことと言えるのか。従来の産業が破壊されていくだけでなく、究極的には「人間が無駄になる社会」「凡人の雇用がなくなる社会」が来るのではないか──楡さんはそう危惧しています。
かなり悲観的な展望ですが、ネットの進化が実社会にもたらすインパクトを冷徹に見据えた本質的な議論には、傾聴すべき洞察が多々含まれています。ご一読頂ければ幸いです。
2013/10/25
著者プロフィール
楡周平
ニレ・シュウヘイ
1957(昭和32)年生れ。慶應義塾大学大学院修了。1996(平成8)年、米国企業在職中に執筆した『Cの福音』が、いきなりベストセラーとなり、衝撃のデビューを飾る。翌年より執筆に専念し、以後、『Cの福音』を始めとする朝倉恭介シリーズの他、『マリア・プロジェクト』『フェイク』『再生巨流』『異端の大義』『陪審法廷』『ラスト ワン マイル』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・東京』『プラチナタウン』『修羅の宴』『羅針』『虚空の冠』『ドッグファイト』『バルス』『サンセット・サンライズ』など、時代を先取りしたテーマと幅広い作風で、つねに話題作を発表し続けている。