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衆愚の病理

里見清一/著

814円(税込)

発売日:2013/06/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

全員、病人。「日本の病」を臨床医が炙り出す。シニカル、ロジカル、アクロバティックな社会論!

患者名:日本国 病状:極めて深刻……現役医師が、冷徹な眼差しで医療を、社会を、この国を診断。見えてきたのは、国全体を覆う、プロを軽視して素人を持て囃す病だった。「情報が患者の不安を生産する」「敗戦処理はエースの仕事」「民主主義がヒトラーやルーピーを生む」「人は思考停止を欲する」――ロジカルでシニカル、ときにアクロバティックな議論から日本の本当の病状を炙り出す、毒と逆説と笑いに満ちた社会論。

目次
まえがき
I 「敗戦処理」はエースの仕事である
1 「敗戦処理」とは何か
2 「患者の死」は忌むべき敗北なのか
3 「寝たきり」人生の価値
II 情報が害毒を生産する
1 不安のもとになる情報
2 「最悪を想定する」という無責任
III 「惰性」の研究
1 惰性の功罪
2 「タリバンホスピス」の傲慢
3 人は思考停止を欲する
4 惰性の活用とその限界
IV 諸悪の根源、民主主義
1 ルーピーを生み出すシステム
2 自称リーダー多くして国沈む
3 あなたも私もビョーキである
4 「信じる」者は救われない
V 逆風下のプロフェッショナリズム
1 八百長は文化である
2 「原子力村」のプロが日本を救う
3 金で魂を売る作法
4 死神の仕事、実は医者の仕事

書誌情報

読み仮名 シュウグノビョウリ
シリーズ名 新潮新書
雑誌から生まれた本 新潮45から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-610525-8
C-CODE 0236
整理番号 525
ジャンル 社会学
定価 814円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2013/12/20

担当編集者のひとこと

「毒」あります。

 ちょっと前に、「イケメンシェフ」として知られる川越達也さんが、ネットのインタビューでの発言で「炎上」していました。店についてのネットのレビューについて不満を述べたのですが、その表現が拙かったようです。
 確かに表現は拙いものの、その種のレビューにカチンと来る気持ちもわかります。クレバーな川越さんは、騒動になるとすぐに発言を撤回して陳謝していましたが、本音では「とはいえ、あんまり素人に批評して欲しくないんだよなあ」と思っているのではないか、という気がします。それにしても騒動後の頭の下げ方は見事なもので、なかなか素直に謝れないどこかの市長も見習ったほうがいいとは思いました。

 こういう「炎上」といった事態があちこちで起きるのを見ると、うかつに物を言えないなあと思います。そう思う人が多いので、近頃はテレビや活字の世界でも、毒を吐く人が減りました。ラジオの深夜放送あたりには、まだ多少自由な雰囲気もあるようですが、それでも昔と比べると大人しいものです。
 ネットの世界では、とんでもない罵詈雑言が飛び交っていることも珍しくないので、ある種の「毒」を求める人はそちらを読むのかもしれません。
 その点、『衆愚の病理』は今どき珍しいくらいの「毒」の含有率を誇る一冊です。「原発の後始末が、『過程を楽しめる』仕事であるはずはない。だったらなおさら、作業員の方々には敬意を払うべきで、東電をただ罵倒してもなんにもならない。罵声で人が動くのなら、菅直人は大宰相である。」

「弱者に優しい社会は美しいと私も思う。しかし、誰も彼もが自分は弱者だと主張する方が楽である、トクになるという社会が長続きするとは思えない。」

「24時間テレビとやらでは、誰か一人を生贄にして暑い最中に24時間マラソンをやらせている。2011年は徳光さんという古希を迎えた方、しかも別にもともとアスリートでもなんでもない人をランナーに指名した。
 殺人(未遂)罪での告発に値する狂気の沙汰である。」

 全編、こんな感じの刺激的な文章が並んでいます。医療から政治まで、今の日本が抱える「病」を臨床医が冷徹に解剖した一冊です。

2013/06/25

著者プロフィール

里見清一

サトミ・セイイチ

本名・國頭英夫。1961(昭和36)年鳥取県生まれ。1986年東京大学医学部卒業。国立がんセンター中央病院内科などを経て日本赤十字社医療センター化学療法科部長。杏林大学客員教授。著書に『死にゆく患者(ひと)と、どう話すか』『医学の勝利が国家を滅ぼす』『医師の一分』など。

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