社畜のススメ
748円(税込)
発売日:2011/11/17
- 新書
- 電子書籍あり
【自己啓発本マニア】【口ばっかり若手社員】【夢見がちな転職難民】イタい社員はもういらない!
「社畜」なんて哀れで情けない存在だ――この「常識」は本当なのだろうか?「自分らしさ」を必要以上に求め、自己啓発書をうのみにすることから生まれるのは、ずっと半人前のままという悲劇だ。そこから抜け出す最適の手段は、あえて意識的に組織の歯車になることである。「ワーク・ライフ・バランス」「残業は悪」「転職によるキャリアアップ」等の美辞麗句に踊らされない、現代サラリーマンの正しい戦略を指南する。
書誌情報
読み仮名 | シャチクノススメ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610445-9 |
C-CODE | 0234 |
整理番号 | 445 |
ジャンル | ビジネス実用 |
定価 | 748円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/05/11 |
インタビュー/対談/エッセイ
波 2011年12月号より サラリーマンへの処方箋
「こんな人生を送るために生まれたのではない!」と心の中で叫びながら、その解決策が見つかることはなく、ただ時間だけが過ぎていく。
こんなサラリーマンは珍しくない。
この国で会社員として働いている人は五千万人を超える。その家族も含めれば、国民の生活を支えている最大勢力はサラリーマンだといえるだろう。この人たちの幸せの総和が、国民の幸せのバロメーターと言っていい。ところが、日本人の幸福度は、世界の中でも低いというデータばかりだ。
幸せのかたちは人それぞれとしても、サラリーマンの大半は、組織から必要とされたいし、成長を実感したいと思っているだろう。そのための処方箋やハウツーも実にたくさんある。
それでもなぜ、幸せを感じるサラリーマンが少ないままなのか。それが、本書を書こうと思ったきっかけだ。何かボタンの掛け違いがあるはずだ、と。処方箋に落とし穴があるのではないか、と。
巷には、「仕事が楽しくなる三つの習慣」「起業すれば現状から脱出できる」などという甘い囁きが溢れている。とりわけオピニオンリーダーたる成功者の仕事術や思考法は、サラリーマンがこぞって真似したがるものだ。
たしかにこうした処方箋は魅力的だし、提唱する本人は実際に結果を出している。これにならえば自分も成長できるはずと、期待するのも当然だ。
しかし、最大のミスリードはそこにあるのではないか。天才にとっては有効な処方も、普通の人には副作用の強すぎる劇薬になってしまう。たとえば、ゴルフを始めたばかりの人が、プロのテクニックをそのまま実践しようとしても、かえって飛距離がでなくなってしまうようなものだ。
私が見てきた職場でも、「余計な仕事は断る」「残業はしない」「仕事は自分で選ぶ」といった、はやりのルールを実践している者がいたが、残念ながら快適なサラリーマン人生を送っているのは僅かだった。職場で孤立したり、必要以上に他人との能力差を突き付けられたり、仕事がうまく回らずストレスを増大させてしまうだけだったのだ。
では、サラリーマンにとって、本当に必要な処方箋とは何か。長年胸に抱いてきた一つの提案を、今回本書にぶつけてみた。
それは、「社畜」になることだ。
私はあえて最も嫌悪されそうな言葉を選んだ。しかし、「会社に飼い慣らされた奴隷」という意味では決してない。ひとりよがりの価値観を捨て、まっさらな頭で仕事と向き合うサラリーマンこそが確実に成長していくのを、私はずっと見てきた。この事実をどうしても伝えたかったのだ。
本書が、会社で働くみなさんにとって、本当の幸せを掴む処方箋になればと願う。
蘊蓄倉庫
そもそも「社畜」という言葉はいつ生まれたのでしょうか。評論家の佐高信氏が使ったという印象が強いですが、流通大手の社長を務め、企業小説家でもある荒井伸也氏が発案者だと言われています。
バブル真っ只中の1988年には「今年の言葉」に選ばれました。当時のサラリーマンの間で「会社に飼い慣らされるのは情けない」という気分が強まり、批判や侮辱の意味でこの言葉が流行したようです。その後バブルは崩壊し、雇用が不安定になり、会社への帰属意識が薄れるにつれ、「社畜」は死語になりつつありました。
ところが最近の若手社員たちは、この言葉をふたたび使い始めているそうです。ただ、かつての意味合いは薄れ、現状を諦めて受け入れたり、自分を慰めたりする意味で使うのだとか。「残業は多いし給料も低いけれど、所詮『社畜』だから頑張るしかない」と、こういうわけなのです。
このタイトルも、世代や職業によって受け止められ方は大きく違うでしょう。しかし、「社畜」という言葉がまだ残っているように、サラリーマンの本質は今も昔もさほど変わっていないように思います。
担当編集者のひとこと
イタい社員にならないために
「社畜」というこのタイトルに、ギョっとされた方もいるでしょう。実際に社内でも、60歳前後の役員たちから「嫌悪感がある」と難色を示されました。一方で若手社員からは、「自虐的な意味でよく使う」という声も。世代によってこの言葉への印象は随分違っているようです。
いずれにせよポジティブに使われることはないのでしょうが、だからこそあえて筆者はこの言葉を選びました。ここでいう社畜とは、「自分のこだわりを捨て、頭を空っぽにして、一から仕事を学ぼう」という姿勢を持つサラリーマン、つまり「まっとうな人」のことです。夢を追求しすぎた転職難民、不平ばかりの新入社員、カリスマ経営者に憧れる一匹狼などなど、そんな「イタいサラリーマン」が増殖するのも、「社畜経験」をしていない人が多いからなのです。
いわゆるビジネス書、自己啓発本の真逆を突っ走る本ですが、そのぶん綺麗事の一切ない「真のサラリーマン論」です。
2011/11/25
著者プロフィール
藤本篤志
フジモト・アツシ
1961(昭和36)年大阪府生まれ。大阪市立大学法学部卒。USEN取締役、スタッフサービス・ホールディングス取締役を歴任。2005年、(株)グランド・デザインズを設立して代表取締役に就任。主な著書に『御社の営業がダメな理由』『社畜のススメ』など。