暴力団
858円(税込)
発売日:2011/09/16
- 新書
- 電子書籍あり
世界一わかりやすい“わるいやつら”の基礎知識! 芸能人も一般人も知っておくべき最新情報が満載。
なぜ暴力団はなくならないのか? 学歴、年収、出世の条件とは? 覚醒剤や野球賭博でどのように儲けるのか? 女はヤクザになれるのか? なぜヒモが多いのか? 刺青や指詰めのワケは? 警察との瘉着は? ヤクザが恐れる集団とは何か? 出会った時の対処法とは? その筋をも唸らせた第一人者が、時代ごとに変化し、社会の裏で生き延びる「わるいやつら」を、やさしく解き明かす「現代極道の基礎知識」。
書誌情報
読み仮名 | ボウリョクダン |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610434-3 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 434 |
ジャンル | 社会学、事件・犯罪 |
定価 | 858円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/03/02 |
インタビュー/対談/エッセイ
波 2011年10月号より 今こそ知っておきたい「暴力団」
経緯を辿ると――吉本興業が、紳助と暴力団幹部との親交を示す携帯メールを入手し、同社としては放置できないので、紳助を呼び出して事情を聞いた。紳助はメールが事実だと認め、自らの引退を言い出し、結局、吉本興業は紳助の引退を受け入れた――という流れになる。つまり紳助は暴力団幹部と交際を断つか、それとも吉本興業を辞めるかという選択を迫られ、結局、暴力団幹部との交際を選んだ、とこの騒動を解釈できよう。
ここで疑問が起きる。高視聴率を誇る人気タレントに芸能界を捨てさせるほど、暴力団は魅力があるのか、と。
次のようなことが、仮説として考えられる。今回の引退は魅力ゆえではなく、暴力団への恐怖からだった、と。十数年前、紳助は右翼から街宣車動員の集中攻撃を受けた。それを収めてくれたのが件の暴力団幹部だった。大恩がある。足を向けて寝られない。その幹部と絶交すると言い出せば、幹部は激昂し、命さえ狙われかねない。恐怖が紳助に芸能界を捨てさせた……と。
紳助は暴力団の実態をある程度知っているだろう。今後も大けがをしないようにつかず離れず事業に専念していきたいと考えているかもしれない。
だが、これは甘い。「つかず離れず」をやろうとした多くの者が、骨までしゃぶられてきた。
暴力団について関心が高まる最中に、本書を出すことになった。
芸能人と暴力団の交際は本書でも記している。
今の暴力団は冬の時代というもおろか、お先真っ暗な状況に突入している。末端層は稼ぎのネタが見つからず、窃盗や強盗にまで手を染めている。組事務所に納める月の会費さえ払えず、生活保護を受けた果て、組織からドロップアウトする組員も少なくない。相変わらず上層部は贅沢に暮らしているが、その生活は下の組員が支えてこそ成立する。末端層が崩壊しているなら、上層部の将来が暗くなるのは当然である。
自治体の暴力団排除条例、金融、不動産業に対する警察の行政指導などに追い詰められ、今や暴力団は崖っぷちにいる。飢えている者は手当たり次第に食える者を食う。暴力団を牧歌的なヤクザや侠客と考えるのは、大けがの元なのだ。
本書では、多くの人がイメージや風評でしか知らない暴力団について、正しい情報をふんだんに盛り込んだ。暴力団の所在から組織の成り立ち、覚醒剤や闇賭博でのシノギ、学歴・年収・出世の条件、女とヤクザ、警察との癒着、出会った時の対処法など、基礎的な知識から最新の実態までを「です・ます」調のやさしい文章で、わかりやすく書いた。日頃、暴力団に出会いそうにない人でも、知っておいた方がよい情報がある。
恐いもの見たさの方や暴力団に興味のなかった女性読者も大歓迎である。
蘊蓄倉庫
暴力団の組員になる志望動機で、最も多いのが「格好よさにあこがれて」という理由です。
また、実際に入団後には、「大きな顔ができる」「気ままに暮らせる」「女にもてるようになった」などという意見が、かつて統計されています。
組員になるには、どんなに無理をしてでも「格好よく」なくてはなりません。
そうでないと、女性にもてないからです。
女性は暴力団など毛嫌いするでしょうが、実は「格好よい」「貢いでくれる」という理由から組員を好きになる女性も少なくないそうです。
肉体と心を奪った後で、暴力団員と判明したケースもあります。
組員はそこにつけこみ、逆に「女に貢がせる」ようになります。
なにしろ、入団後に生きていくためには、まず「女のヒモになる」ことが生活の手段なのです。
もしも困窮したら、風俗や水商売で「売り物」になるような美女や艶っぽい女性が標的です。目をつけたらどんなことをしても、モノにします。
これがヤクザには不可欠な条件で、基本的な「シノギ」(稼ぎ)の手口というわけです。
美貌の女性や可愛い女の子は、やさしくて、何でも奢ってくれるようなイケメンには、くれぐれも気を付けなくてはなりません。この詳細は本書をご覧ください。
担当編集者のひとこと
「暴力団」を知っていますか?
新潮新書には、「組織解剖」をテーマにした既刊があります。
『朝鮮総連』(金賛汀・著)、『創価学会』(島田裕巳・著)、『日本共産党』(筆坂秀世)、『民主党』(伊藤惇夫・著)、『日教組』(森口朗・著)、『公安は誰をマークしているか』(大島真生・著)など、いずれも多くの方々に読んでいただき、好評を博しています。
本書もその流れを汲んでいます。
風評やイメージでしか知らない「暴力団」について、わかりやすい講演を聴くように書いてもらいました。
暴力団の所在、人員構成、日常生活、求人活動、学歴、収入、出世の条件、シノギ(稼ぎ)の手口などに加え、繁華街でよく聞く「みかじめ」、指詰めや刺青などの慣習、美女とヤクザの関係(「薀蓄倉庫」参照)、マフィアとのちがい、そして、出会った時の対処法など、あらゆる疑問を提示して、この世界の第一人者であるノンフィクション作家の溝口敦さんに、それらへの答えを解き明かしていただきました。
しかも、今までの著作にはない、初めての「です・ます」調で書かれています。そのため、ハードな内容もやわらかい筆致に包まれ、読みやすく、独特の読後感もあります。
ところで、本書を校了寸前の8月下旬、島田紳助の引退騒動が起きました。
巷間囁かれていた「芸能界と暴力団のつながり」を、誰もが認識したはずです。
では、暴力団と芸能人はどんなメリットがあって交際しているのでしょうか?
もちろん、本書にはその答えも記されています。
かつて暴漢に刺されても筆を止めず、食肉界の禁忌や人気占い師の素性等、現代のタブーや闇組織にも敢然と挑んできた溝口さんですが、本書は40年以上追及してきた「暴力団」の基礎情報を網羅した集大成です。ぜひお読みください。
2011/09/22
著者プロフィール
溝口敦
ミゾグチ・アツシ
1942(昭和17)年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業。ノンフィクション作家。『食肉の帝王』で2004年に講談社ノンフィクション賞を受賞。著作に『暴力団』『続・暴力団』『詐欺の帝王』『危険ドラッグ』『山口組動乱!! 2008〜2015』『闇経済の怪物たち』など多数。