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まいにち富士山

佐々木茂良/著

748円(税込)

発売日:2011/06/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

64歳で初登頂! 通算800回超の名人が明かす醍醐味とコツ。「毎日登って飽きませんか?」「いいえ、あの達成感は格別です。だから明日も行っちゃうんです」

富士山を目指すのに遅すぎることはない。必要なのはある程度の体力と事前の準備。64歳の初登頂以来、天気が許す限り毎日登って800回を超える名人が「安全に行って帰るまで」を指南する。どれほど辛いのか? 景色以外の楽しみは? どんな忘れ物が痛い? 高山病のマル秘対策は? 迷ったときの対処法は? 登山客が見せた落涙のドラマや九死に一生の恐怖体験も交えた、富士登山の醍醐味、勘所が満載の一冊。

目次
はじめに
[五合目]山頂はいつも見えている
「胸突き八丁」を行く二人/頂上まであと五分/山頂の上の山頂/なぜこの山なのか/「日本一の強力」に憧れて/登山シーズンがある理由/登りは「二時間四〇分」/山小屋に新聞を届ける
[六合目]安全に行って帰るための全身装備
選ぶなら速乾性衣類/レインウェアの最期/半袖半ズボンはご法度/冬も日焼け止めが必須/口にも服にも靴にも砂が/佐々木のポール二刀流/牛乳もジュースも試した水筒の中身
[七合目]四つの登山ルート、どれを選ぶか
初心者かどうか/急峻の「富士宮ルート」/賑やかな「富士吉田ルート」/「須走ルート」の砂走り/「御殿場ルート」の醍醐味
[八合目]頑張っても防げないのが高山病
一〇人中三人は行き着けない/「治療は下山のほかなし」/寝不足をどうするか/予防の秘訣は「窓全開」/五合目でどれくらい食べるか/調子が乗らない時の「儀式」/歩幅は靴の半分?/別行動する時のルール/座る休憩、立ったままの休憩/行けども行けども砂漠/苦しい時の「へっぴり腰」/山頂到達後に倒れた若者
[九合目]眺める、飲む、触れる「ご利益」
消印は富士山頂郵便局/山頂は神社の境内/噴火口の「お鉢めぐり」/富士山測候所を惜しむ/折れたままの避雷針/バイオ式トイレの大渋滞/今年のテーマは「剣士」/登って下りると二kg減/富士山が生み出す水
[山頂]富士山に登る資格のない人たち
挨拶が億劫という人へ/なぜ喋りまくるのはダメか/点々と撒かれた爪楊枝/杖の先にご用心/衛生センター、焼かれる/山頂神社に寝そべる迷惑男/「俺は自分の力で登った」/山小屋主が言ったこと
[剣ヶ峰]進むか、撤退するかの分かれ道
恐怖体験その一――人間を吹き飛ばす突風/下半身は動くだろうか/恐怖体験その二――視界を奪うホワイトアウト/大きな鳥居が見えてきた/樹海と眠気/恐怖体験その三――クレバス落下/ピッケルがなかったら/恐怖体験その四――全身を殴りつける豪雨/低体温のショック/恐怖体験その五――あの火口底に何がある?/どこかに熱気の噴出口は/亡骸と山の神/一歩、一歩の面白み
おわりに

参考文献

書誌情報

読み仮名 マイニチフジサン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610425-1
C-CODE 0226
整理番号 425
ジャンル 登山・ハイキング
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/12/23

蘊蓄倉庫

富士山「山頂」は5つある

 青い空に聳えるあのてっぺんへ――と胸膨らませて富士登山ガイドを広げると、戸惑うかもしれません。富士山には4つの登山道があり、それぞれに「頂上」があるからです。そこへ到達すれば山頂を極めたことになり、登頂証が発行されてもいるのですが、日本最高峰の「剣ヶ峰」はさらに上。ここに二等三角点が設置されており、疲労困憊の末にたどり着いた「頂上」から、20~40分は歩かなければなりません。どうしたら一番上の山頂に自分の足で立てるのか。『まいにち富士山』(佐々木茂良著)にはそのコツが満載です。
掲載:2011年6月24日

担当編集者のひとこと

前代未聞の富士山名人

 毎日富士山に登っているなんて、いったいどんな山男なのか――。
 編集担当のかすかな緊張をよそに、打ち合わせの当日来社された佐々木茂良さんは、柔和な顔立ちの「名人」でした。言われなければ、富士山を人の2倍の速さで登って下りてこられる人とは分かりません。ただし服装は上下ともに登山仕様でした。
 佐々木さんは64歳のある日、友人に誘われて初登頂。それからの7年間で通算800回を重ねてきました。なぜそんなことができるのでしょうか。それは佐々木さんが超人的な体力の持ち主だからでなく、周到な準備を欠かさないからということに尽きます。
 例えば、道中で何を飲むか。道中、喉を潤すひとときはリズム調整のアクセントや疲労回復のきっかけになります。さらに1回の登頂で必要な量は1.5リットルにもなります。そこで大好きな牛乳やジュース、コーヒーを水筒に入れて持っていき「研究」を重ねた結果、麦茶に落ち着いたそうです。いくら栄養価が高くても、喉ごしが悪いのは困るのだとか。
 装備についてもうひとつ言えば、佐々木さんの一歩一歩を支えてきたのが金剛杖です。140センチほどの木製の杖で、登山が趣味の方ならよくご存知のもの。本書『まいにち富士山』の編集にあたり、お持ちのものを見せて頂いたところ、先端が徐々に削れて30センチも短くなっていたのには「通算800回」の片鱗を見るような思いがしました。現在は杖をチタン製のトレッキングポールに持ち代え、両方の手に1本ずつ持つ「二刀流」を採用しています。これが日帰りで富士山に行って帰ってこられる理由のひとつとか。
 昨今の登山ブームで様々な商品が売り出されていますが、新商品に飛びつくのでなく、ひとつずつ吟味しながら使っていく姿勢を強く感じさせられました。佐々木さんの全身装備をご覧になりたい方は、54ページの図をご覧下さい。
 周到な準備をしても、山で危険に見舞われてしまったらどうするか。本書では失敗談から九死に一生の恐怖体験まで包み隠さず語られています。「いつか自分も」と思ったことのある方はぜひ、どこにもない富士山ガイドをお手にとってみてください。

2011/06/24

著者プロフィール

佐々木茂良

ササキ・シゲヨシ

1940(昭和15)年岩手県生まれ。弘前大学卒業、立正大学大学院修士課程修了。青森県、神奈川県で中学校教諭、養護学校校長を務める。定年後の2004年に初めて富士山に登って以来、毎日山頂を目指す生活に。通算登頂回数は819回、現在も更新中。『まいにち富士山』が初の著作。

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