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社長、その服装では説得力ゼロです

中村のん/著

748円(税込)

発売日:2009/09/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

「見た目」の9割は服装だ! 第一線のスタイリストが教える「似合う」の仕組み。

人は意外なほど、自分の姿が見えていない。お客に向かってトレンドを語る部長は、時代遅れのジャケット姿。勘違いした「勝負服」で、パワーを半減させている上司。しなやかな黒髪を捨て、パサパサの茶髪になりたがる若者たち――。第一線のスタイリストが、大人の身だしなみの常識、非常識に切り込む。すり寄るショップ店員への対処法、全身姿見の効用、靴を買うときの心得は。「似合う」の仕組みから分かる一冊。

目次
はじめに
第1章 だから上司を尊敬できない
女性上司の勝負服/「仕事」と「センス」は別?/心に余裕がない証拠
第2章 「服装はご自由に」にこそご用心
毎日だと嫌なもの/朝の会議とジャケット/連れて行くのが恥ずかしい/「着こなし」を訊きに来たダボパン男/「自分らしさ」と一張羅の関係
第3章 服売り場での戦い
今年はこれが主流です/店員が必ず言うセリフ/自分の体型を知っておく
第4章 「クソ真面目」な人のお得な格好
撮影現場の楽しみ/「似合う」の仕組み/あなたの性格に似合う服
第5章 掃除と服装の共通点
大人を脅かす学生たち/「余計なモノ」を見極める/ひとつの格好、ひとつの目的
第6章 服に問題はないの。いけないのは私の体型
松田色になるアルマーニ/似合うものがない/雑誌のドレスに一〇〇万円
第7章 サラリーマンにスタイリストが要る理由
出勤前の消耗/「この際、プラダにする!」/本木雅弘か舘ひろしか/先代から受け継いだテーラー/あなたの服を選ぶ人/「あゆの髪型と化粧にしろよ」/身近にいる適任者
第8章 「安い・早い・流行の」服がやってきた
銀座の老舗が地下に/経済危機とファッションセンス/ファストファッションの上陸/『チープ・シック』とユニフォーム/白シャツから始める
第9章 私には高すぎる、が口癖の人
「女っぽくて気持ち悪い」/「胸元を開けるのはみだら」/タレントも「私は太ってる」/黒しか着ないワケ
第10章 ダライ・ラマの靴の記憶
いつも磨かれていた靴/冷凍ラーメンに迷う/安い靴だから逃げる/靴を買う時の心得と服装/悪口の主の足元
第11章 ナチュラルストッキングを拒む女たち
社会人の常識/幼稚園児の「ママも穿いて」/穿かない女の5分類/大人の証明か、こだわりか
第12章 「デブ」のふたつの分かれ道
やたらかわいい服が好き/小花もレースも倍になる/売り場面積は「9対1」/おしゃれメガネのデブ/フリフリよりブリブリを
第13章 日本人は自分が嫌い?
ソウルで負けを知る/黒髪と素肌を活かして/「若作り」しないご婦人方/あの時代のままストップ/八頭身にはなれないから
第14章 ルールを欲しがる時代
「美人の十戒」を買って読む/戦後復興と「それいゆ」/作るものから買うものへ/「アンノン族」と「ポパイ少年」/「飛んでる格好」がいい/ルールと課題の登場/流行の服じゃ足りない/どう見えるかを楽しむ
おわりに

書誌情報

読み仮名 シャチョウソノフクソウデハセットクリョクゼロデス
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610331-5
C-CODE 0277
整理番号 331
ジャンル ファッション
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/10/28

インタビュー/対談/エッセイ

「服装」があなたを映し出す

中村のん

「会社の女性の格好が、ホント、ストレスなんです。四十代だっていうのに、大事な商談の時はいつでも、背中に大きなピーナッツの絵がついた真っ赤なTシャツ。それを着ると仕事が取れるジンクスつきらしいんですが、こっちは憂鬱で」
 不動産関係の会社に勤める男性が大真面目にこう言うのを聞いたのを皮切りに、「上司の服装を嘆く部下の声」が、次々と集まってきたことがありました。と同時に、上司の立場にいる人たちからも「部下の服装への嘆き」が聞こえてきます。
 職場のストレスの大部分が人間関係にあることはよく知られていますが、その大本が相手の服装にある、ということは想像以上に多いようです。
 自分の見た目のうち、顔や体型は基本的には天からの授かり物です。けれど服装は、まぎれもなく本人自身が選んだもの。周りの人が無意識のうちにも服装から「人となり」を読み取るのは自然なことと言えるでしょう。「あんな格好の人から言われても」なんてこっそり噂されるうちはいいですが、責任ある立場の人ともなると、その常識や実力にまで疑問符がつくことになりかねません。
 にもかかわらず、「服には無頓着だから」あるいは「仕事が忙しいから」を理由に、自分の格好をおざなりにしている人は結構いるものです。
 私は長年に亘ってスタイリストとして仕事をしてきました。その立場から言うと、人と服装との関係がこう複雑になっているのには幾つか理由があります。1970年代以降、「服装」という言葉が「ファッション」という言葉にとって代わったことによって、流行を取り入れるのが得意な人と苦手な人、おしゃれそのものに関心が高い人と無関心な人という差がどんどん広がってきました。また、流行り廃りが加速度を増せば増すほど、さらには、近年のブランドブームに伴って、おしゃれにはお金がかかる、という印象が強まるほど、そこから距離を置きたいと思う人が出てくるのも致し方ないことでしょう。加えて、格好で「自分らしさ」を出そうとする風潮がどこか高まりすぎて、冒頭の例のように、周囲を当惑させるまでになってきているようです。
 そこで、服装を「ファッション」という枠からいったんはずし、「人を印象づけるためのツールのひとつ」と捉え直すことによって何が見えてくるかを考えたのが本書です。すると、「ダサイ格好がオトク」という人もいれば、高い服がかえってソンになることがあるという興味深い事実も見えてきました。また、服装にまつわる悩みやエピソードを盛り込みながら、「似合う」の仕組みから靴を買うときの心得、しつこいショップ店員への対処法、太めの人の見た目作りまで、年代や男女の別なく役立つアイデアをご紹介しています。
 生まれてから死ぬまであなたと共にある、そして身体の一部ともいえる服装について、新しい季節の始まりに見直してみてはいかがでしょうか。

(なかむら・のん スタイリスト)
波 2009年10月号より

蘊蓄倉庫

思い切って買うべきもの

 スタイリストの書いた本というと、「今シーズンはこれを買いなさい」「このブランドのこれを持つべき」といった「アドバイス」が詰まった本ではと思われる方もいるかもしれません。ですが、著者・中村のんさんが本書で購入を勧めているのはひとつだけ。全身が映る鏡です。そして、毎朝家を出る前に、ちょっと時間を取ってみてほしいといいます。第一線のスタイリストが伝授する「似合う」の仕組みは、無闇に買い足すことではなく、自分の姿を見つめることから始まります。

掲載:2009年9月25日

担当編集者のひとこと

毎朝の着替えが面倒でした

 今日は昼に打ち合わせがあって、会社帰りは友人とその職場の人との飲み会がある。そうだ、午後は温めていた企画を出す会議もあった。さて、何を着ていこうか……。
 ここで着るものがぱっと決まる朝もあれば、なかなか決まらずに鏡の前で着たり脱いだりを繰り返す朝もあります。お恥ずかしながら、その間10分ほどになるでしょうか。洋服を買ったり着たりするのは割と好きな方だと思うのですが、この時間の掛かりようはどうしたものかと引っかかっていました。
 本書『社長、その服装では説得力ゼロです』には、同じような男性の話が出てきます(第7章 サラリーマンにスタイリストが要る理由)。この人はより深刻そうで、こう言っています。
「その日のスケジュールを把握している誰かが、枕元に、すべてをコーディネートして置いといてくれたらどんなに楽かと思う。一日の始まりの、あの面倒くささがなくなれば、一年かかって溜まるストレスの量がだいぶ変わる」 原稿を最初に読んだとき、他の人もそうなのか、と少しほっとした思いになりました。
 この男性は、中村さんに買い物に付き合ってもらうことに成功します。そこで伝授されたのは、洋服を丁寧に買っていくということでした。そして、気張って「いいもの」を買うという時には、今持っているものからワンランクだけいいものを選ぶということです。これで自分の持っている服にまとまりをつけられます。
 本書は、中村さんが「服装や身だしなみについて、ファッション情報を伝える雑誌には載らないこと、活字になっていないことを書きたかった」という思いでまとめたものです。自分には自分の格好がいかに見えないものか、服装で得をするとは、「似合う」とはどういうことかを読むと新鮮な思いがすること間違いありません。このほか、ユーモアを交えて紹介されるエピソードの数々には、人に相談するまでもないけれど気になっていた格好についての悩みと解決法が盛り込まれています。
 本書の原稿をやりとりするなかで、私の朝の問題は、改善の兆しが見えてきました。

2009/09/25

著者プロフィール

中村のん

ナカムラ・ノン

1956(昭和31)年東京都生まれ。桑沢デザイン研究所在学中にスタイリストの草分け、高橋靖子のアシスタントになる。以後、フリースタイリストとしてCM、広告を中心に幅広く活躍。著書に『勇気をだして着てごらん』『今すぐ見つかる! 「ホントの私に似合う服」』など。

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