センスのいい脳
748円(税込)
発売日:2009/08/13
- 新書
- 電子書籍あり
センスの悪さは親ゆずり!? 認知心理学で迫る「センス」の本質、不思議、磨き方。
人の評価基準のひとつである「センス」。そのよしあしを左右しているのが、私たちの脳だ。視覚や聴覚を通じてもたらされる外界の情報を、脳はどう処理しているのか――。「だから赤ちゃんはディズニーが好き」「幽霊が見える理由」「ありえない話だから騙される」「大阪のおばちゃんが派手なわけ」「センスの個性は人類の生存戦略」等々、気鋭の認知心理学者がセンス(=感覚)の不思議な世界の最前線に迫る!
主要参考文献一覧
書誌情報
読み仮名 | センスノイイノウ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610326-1 |
C-CODE | 0211 |
整理番号 | 326 |
ジャンル | 心理学 |
定価 | 748円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/05/25 |
蘊蓄倉庫
2011年から、小学校で英語の授業が必修になります。いまですら、乳幼児向けの英語教材は枚挙に暇ありません。ましてや今後は、より多くの親がより早くから、わが子に英語を学ばせようとすることでしょう。
さて、本書の著者は赤ちゃんの感覚を研究する認知心理学者です。実験を通じてたくさんの赤ちゃんと接するなかで、赤ちゃんの驚くべき能力を目の当たりにしています。
語学に関していえば、日本人の赤ちゃんは、日本の大人がもっとも不得意とする「R」と「L」の発音を聞き分けることができるそうです。それどころか、生後10カ月頃までなら、どこの国の言葉でも聞き分けられるといいます。
ただし、いつも聞いている日本語の意味がわかるようになるにつれて、外国語の聞き分けはつかなくなってくるのです。それは、限られた能力をより有効に活用し、母語を自由自在に使いこなすための戦略です。
つまり、日本語を身につける時期に、ほかの言葉を覚えさえようとすれば、どの言葉も中途半端になってしまう可能性があるということです。著者が勤める大学にも、言語能力に問題のある帰国子女は少なくないといいます。
日本語を身につけてから外国語を学んでも、けっして遅くないのではないでしょうか。発音や聞き取りがネイティブと同じではなくても、意思の疎通に問題はないのですから。
担当編集者のひとこと
そのセンスで大丈夫
もとより、ひとさまのセンスを云々するような身でもないのに、本書のタイトルは『センスのいい脳』。センスは脳が決める、というテーマなのですから、お手上げです。そうなると、オビのメインコピーのように「センスの悪さは親ゆずり!?」と逃げたくもなりますが、幸い本書にはいくつもの救いがあります。
まずは、本書でいうセンスとは、英語のsenseつまり「感覚」であるということ。さらに、人のセンスはそれぞれ異なるけれども、それは個体差にすぎないということ。そして、その個体差は人類の生存戦略であるということ。つまり、いわゆる「センスのよしあし」は、人類が生き残っていくために必要なものだったのです!
これで、心ない人に「センスが悪い」なんていわれても、もう大丈夫。さらに、センスは努力次第では磨くこともできるというのだから、至れり尽くせり(?)です。
ほかにも本書には、「なぜありえない話に騙されるのか」「大阪のおばちゃんが派手なわけ」「赤ちゃんはサルの顔が見分けられる」など、身近な疑問や意外な事実がたくさん詰まっています。自分のセンスに自信のある人は、他人のセンスを理解するために、自信のない人は安心するために、ぜひご一読ください。
2009/08/25
著者プロフィール
山口真美
ヤマグチ・マサミ
1964(昭和39)年神奈川県生まれ。中央大学文学部教授、博士(人文科学)。中央大学文学部卒業、お茶の水女子大学大学院博士課程人間発達学専攻単位取得退学。認知心理学、なかでも乳児の視覚についての研究が専門。著書に『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』ほか。