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センスのいい脳

山口真美/著

748円(税込)

発売日:2009/08/13

  • 新書
  • 電子書籍あり

センスの悪さは親ゆずり!? 認知心理学で迫る「センス」の本質、不思議、磨き方。

人の評価基準のひとつである「センス」。そのよしあしを左右しているのが、私たちの脳だ。視覚や聴覚を通じてもたらされる外界の情報を、脳はどう処理しているのか――。「だから赤ちゃんはディズニーが好き」「幽霊が見える理由」「ありえない話だから騙される」「大阪のおばちゃんが派手なわけ」「センスの個性は人類の生存戦略」等々、気鋭の認知心理学者がセンス(=感覚)の不思議な世界の最前線に迫る!

目次
はじめに
1 センスがいいってどんなこと?――センスを科学する
赤ちゃんのセンス/見ることで脳を鍛える/視覚の文法/なにが見えますか/人は美しい形を見る/「かわいさ」からは逃げられない/お母さんは大事なお客/感覚を研究する
2 幽霊はなぜ見えるのか――感覚は歪む
「行間が読めない」のは当たり前/盲点という盲点/脳は勝手なことをする/ありえない話だから騙される/大人は影に気づかない
3 新緑と紅葉はどちらが美しいか――色覚とセンス
色は訓練しなくても見える/赤を見分ける生物は少ない/色の見え方は人それぞれ/見えないはずの色が見える/昼間でも夕方でも白は白/原色の国とアースカラーの国
4 本当は怖い「目かくし」――感覚を遮断する
内と外との架け橋/感覚がないと耐えられない/脳は睡眠中に働く/金縛りにかかるわけ/幻覚かヒーリングか/目かくしの危険性/視覚はどんな世界にも適応できる/身体感覚を揺るがすめがね/「見えない」ものが見える
5 身体はだまされない――「新しい感覚」と「古い感覚」
動作はだまされない/見えない障害物を避ける/両目が距離をつくりだす/遠近法は学ぶもの/赤ちゃんは感覚に正直/見えない人の世界
6 どんな絵が“うまい”のか――絵画とセンス
大人びた絵、子どもらしい絵/おおざっぱに捉える/言葉の代わりに得たもの/文字が読めない人たち/はじめて見ても絵がわかる/写実性と社会性/部分を見る、全体を見る/触覚で描いた絵/絵らしくする方法
7 個性がなければ生きていけない――感覚の多様性
色に匂いを感じ、数字に音楽を聞く/共感覚者発見テスト/共感覚は誰にでもある?/視覚の人と触覚の人/脳がすり替わる/どうやって目的地にたどりつくか/帰り道がわからない/ハーメルンのネズミ
8 外国語は習うな!――感覚を鍛える
感覚は鍛えられるか/先入観を持て/サルの顔が見分けられますか/覚えやすい顔、覚えにくい顔/赤ちゃんはマルチリンガル/人の能力には限界がある/赤ちゃんはあえて覚えない/大人はCMに釣られやすい
9 他人のセンスを理解するために――進化する感覚
大阪のおばちゃんが派手なわけ/味覚は親譲り/原始的な感覚と言葉/バリアフリーは想像力/先入観をリセットする/感覚の未来
おわりに
主要参考文献一覧

書誌情報

読み仮名 センスノイイノウ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610326-1
C-CODE 0211
整理番号 326
ジャンル 心理学
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/05/25

蘊蓄倉庫

早期英語教育の危険性

 2011年から、小学校で英語の授業が必修になります。いまですら、乳幼児向けの英語教材は枚挙に暇ありません。ましてや今後は、より多くの親がより早くから、わが子に英語を学ばせようとすることでしょう。
 さて、本書の著者は赤ちゃんの感覚を研究する認知心理学者です。実験を通じてたくさんの赤ちゃんと接するなかで、赤ちゃんの驚くべき能力を目の当たりにしています。
 語学に関していえば、日本人の赤ちゃんは、日本の大人がもっとも不得意とする「R」と「L」の発音を聞き分けることができるそうです。それどころか、生後10カ月頃までなら、どこの国の言葉でも聞き分けられるといいます。
 ただし、いつも聞いている日本語の意味がわかるようになるにつれて、外国語の聞き分けはつかなくなってくるのです。それは、限られた能力をより有効に活用し、母語を自由自在に使いこなすための戦略です。
 つまり、日本語を身につける時期に、ほかの言葉を覚えさえようとすれば、どの言葉も中途半端になってしまう可能性があるということです。著者が勤める大学にも、言語能力に問題のある帰国子女は少なくないといいます。
 日本語を身につけてから外国語を学んでも、けっして遅くないのではないでしょうか。発音や聞き取りがネイティブと同じではなくても、意思の疎通に問題はないのですから。
掲載:2009年08月25日

担当編集者のひとこと

そのセンスで大丈夫

 もとより、ひとさまのセンスを云々するような身でもないのに、本書のタイトルは『センスのいい脳』。センスは脳が決める、というテーマなのですから、お手上げです。そうなると、オビのメインコピーのように「センスの悪さは親ゆずり!?」と逃げたくもなりますが、幸い本書にはいくつもの救いがあります。
 まずは、本書でいうセンスとは、英語のsenseつまり「感覚」であるということ。さらに、人のセンスはそれぞれ異なるけれども、それは個体差にすぎないということ。そして、その個体差は人類の生存戦略であるということ。つまり、いわゆる「センスのよしあし」は、人類が生き残っていくために必要なものだったのです!
 これで、心ない人に「センスが悪い」なんていわれても、もう大丈夫。さらに、センスは努力次第では磨くこともできるというのだから、至れり尽くせり(?)です。
 ほかにも本書には、「なぜありえない話に騙されるのか」「大阪のおばちゃんが派手なわけ」「赤ちゃんはサルの顔が見分けられる」など、身近な疑問や意外な事実がたくさん詰まっています。自分のセンスに自信のある人は、他人のセンスを理解するために、自信のない人は安心するために、ぜひご一読ください。

2009/08/25

著者プロフィール

山口真美

ヤマグチ・マサミ

1964(昭和39)年神奈川県生まれ。中央大学文学部教授、博士(人文科学)。中央大学文学部卒業、お茶の水女子大学大学院博士課程人間発達学専攻単位取得退学。認知心理学、なかでも乳児の視覚についての研究が専門。著書に『赤ちゃんは世界をどう見ているのか』ほか。

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