「お通し」はなぜ必ず出るのか―ビジネスは飲食店に学べ―
770円(税込)
発売日:2009/05/16
- 新書
- 電子書籍あり
なるほど! 「行列店」と「潰れる店」の“決定的な差”が判明しました。
飲食店には製造、小売、サービス、流通等、あらゆる要素が詰まっている。飲食業はビジネスの原点なのだ。飲食店は本当に儲かるか? 立ち飲みが流行り、ジンギスカンが廃れた理由は? 成功の分かれ道、「少しのビックリ」と「少しのガッカリ」の差とは? 上場すれば成功なのか? 様々なケースを分析することで、成功するビジネスモデルが見えてきた。あらゆるビジネスに通じる「繁盛のセオリー」が明快にわかる一冊。
蕎麦屋の不思議
ランチは儲からない?
書誌情報
読み仮名 | オトオシハナゼカナラズデルノカビジネスハインショクテンニマナベ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-610316-2 |
C-CODE | 0234 |
整理番号 | 316 |
ジャンル | 産業研究 |
定価 | 770円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/04/27 |
インタビュー/対談/エッセイ
勝ちに不思議の勝ちなし
私には昔から長く通っている中華料理店があります。この店の名物は何を差し置いても餃子。ジャンボサイズの餃子は肉汁たっぷりで滅法おいしいのですが、それ以外の料理はと言うと、実は大したことはありません。それでも店はこの餃子一本で、連日大繁盛しています。
繁盛店の中には、このような名物があるケースが多いようです。「あの居酒屋の、あの煮込み」「あの洋食屋の、あのオムライス」というように、店を代表する名物メニューがあるのです。
ただし、名物とは必ずしも料理に限りません。「定食屋の女将の優しい接客」だったり、「バーの夜景の素晴らしさ」だったりすることもあります。
このように、店を語る上で欠かすことのできない「名物」があるというのが、繁盛する飲食店の一つのあり方です。
一方、それとは異なるパターンもあります。
例えば、私が定期的に足を運ぶある居酒屋には特に名物はありません。料理はなかなかのレベル、店員の接客もまずまず、そして店内環境もそれなりに落ち着くように仕上がっています。
この居酒屋は何かが取り立てて素晴らしいと言うわけではないのですが、総合的な魅力という点では非常にまとまっているので、ちょくちょく足を運んでしまいます。
つまり、高いレベルで「バランス」の取れた店と言うことができるでしょう。ミシュランガイドで星を取っているような高級店の多くは、こちらのタイプに分類することができます。
世の中の繁盛店をよく見てみると、前者のような名物がある「一点突破型」か、後者の「バランス型」のいずれかにわけることができるはずです。
ただし、いずれのパターンも、店側が客に愛されるようにと努力を続けた結果として繁盛店になっているという点は共通しています。
楽天イーグルスの野村克也監督が広めた名言に「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というものがあります。
負けに理由があるのは野球も飲食店も同じですが、飲食店においては実は全ての勝ち、すなわち「繁盛」にもきちんと理由があるのです。「たまたま流行った」ということはありません。
勝負事においてもビジネスにおいても、連戦連勝ということは、現実的ではありません。勝率を少しでも高めていくためには、勝ち負けという結果の後ろに隠れた「理由」や「要因」をしっかりと分析して、次に繋げていくのが必要なのは言うまでもありません。
本書では飲食業界につきものの、ブームや繁盛、そして倒産などについて、「なぜそうなるのか?」という背景を分析する「視点」を取り上げました。
こうした「視点」をできるだけ多く獲得し、事象を複眼的・多角的に見ていくことが、日々の仕事や生活にプラスに働くものと信じています。
(こやす・だいすけ 飲食プロデューサー)
波 2009年6月号より
蘊蓄倉庫
厨房の裏の裏
近頃はオープンキッチンなどと言って、厨房がお客から見えるようにしてある店も増えてきました。それでもさらにその裏、ゴミまで見せるところはあまりありません(あっても流行らないでしょうが)。しかし、飲食店にとっては、このゴミ、廃棄物の処理というのは大きな問題です。そのため、「廃棄物マネジメント」に特化した会社まで存在しており、しかも急成長をしているそうです。20兆円産業と言われる外食産業には、まだまだ新しいビジネスチャンスが数多くあります。『「お通し」はなぜ必ず出るのか』を読むと、外食が一層面白くなり、ビジネスの感覚が一層研ぎ澄まされること請け合いです。
掲載:2009年5月25日
担当編集者のひとこと
ジンギスカンはなぜ廃れたのか
根が小心者なので、街を歩いていて、他人の商売なのに心配してしまうことがあります。家の近所に喫茶店が出来ると「こんな田舎に喫茶店なんか大丈夫だろうか」と思います。会社の近所にモツ鍋屋が出来ると、「ブームが終わったらどうなるのだろうか」と思います。そんな心配するくらいなら、客になればいいじゃないか、という気もしますが、「俺が行きたくないような店だから余計に危ないなあ」などと思ったりもします。
『「お通し」はなぜ必ず出るのか』では、飲食業プロデューサーである著者が、現在の飲食業界の流れ、市場について鋭く深い分析をしています。ここで指摘されている「流行る店」と「潰れる店」の違いは、あらゆる商売に通じる普遍的な法則だという気がします。 たとえば著者は、ブームには「さざ波」と「海流」がある、と指摘しています。簡単にいえば、前者は一過性のもので、後者は定着するもの。最近でいえば、前者はジンギスカン・ブーム、後者は立ち飲み屋のブームだそうです。ブームに乗ることは悪くないものの、そのブームがどちらのタイプかを見極めることが、非常に重要だと説きます(もちろん、きちんとお客を捕まえて人気を維持しているジンギスカン屋さんもあります)。
そういえば新書もブームだと言われて、気づけばやたらと参入業者が増えてしまい、現在、市場は大変なことになっています。どうすればお客を惹きつけ続けることができるのか。いつも悩んでいるのですが、それについての示唆も、この本にかなり含まれているので、作りながら勉強をさせてもらったと思っています。
2009/05/25
著者プロフィール
子安大輔
コヤス・ダイスケ
1976(昭和51)年生まれ。東京大学経済学部卒業。博報堂勤務を経て2003年、飲食業界に転身。2005年、共同で株式会社カゲンを設立し、取締役就任。飲食業界のプロデュースやコンサルティングに広く携わる。著書に『「お通し」はなぜ必ず出るのか』がある。