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気骨の判決―東條英機と闘った裁判官―

清永聡/著

748円(税込)

発売日:2008/08/13

  • 新書
  • 電子書籍あり

日本人の誇りとすべき史実であり、みんなが味読すべき物語である。阿川弘之氏推薦。

吉田久、命がけで東條英機と闘った裁判官――。政府に非協力的な国会議員を排除する意図があったとされる「翼賛選挙」では、聖戦遂行の美名の下、国民の投票の自由を実質的に奪う露骨な選挙妨害が行われた。他の選挙無効の訴えが退けられる中、吉田は特高の監視や政府からの圧力に負けず、戦時中に唯一の「選挙無効」判決を下す。これまでほとんど知られることのなかった気骨ある判決と孤高の裁判官の生涯を追う。

目次
まえがき
第一章「こんな選挙が、許せるか!」
シャンデリアの「伝説」
反対の声の出ない議会
妨害と干渉の翼賛選挙
怒りの提訴
異例の裁判官会議
たたきあげの裁判官
第二章「わたしは、死んでもいい」
東條の傲岸な答弁
死を覚悟した鹿児島出張
炙り出された圧力
顔のみえる判例
強くなる風当たり
東條演説事件
崩壊する戦争末期の司法
第三章「選挙ハ之ヲ無効トス」
昭和二十年三月一日、判決
辞職、そして大審院全焼
鳩山一郎、吉田茂からの要請
消えた判決原本
戦火を生き延びた「信頼」の証
あとがき

主要参考資料一覧

書誌情報

読み仮名 キコツノハンケツトウジョウヒデキトタタカッタサイバンカン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610275-2
C-CODE 0221
整理番号 275
ジャンル 日本史
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/08/31

蘊蓄倉庫

たたきあげの裁判官

 本書の主人公である大審院第三民事部裁判長・吉田久は明治17年、福井市の中心部、佐佳枝上町で生まれました。長男だった吉田は昼間、福井地裁の「小僧」として働いて家計を助けながら、夜間学校に通いました。当時の裁判所には「小僧」「坊や」と呼ばれる、お茶くみや小間使いをする久留米絣に小倉の袴姿の少年がいたそうです。18歳で上京してからは、大審院で小僧をするなどして、今の法政大学や中央大学で勉強を続け、21歳で判事検事登用試験に合格します。司法官の大半が東京帝大を中心とした官学OBで占められていた時代、小僧から私学を経て大審院の裁判長になった吉田の経歴は異色だったようです。
 戦後、吉田は鳩山一郎や吉田茂に請われ、新憲法下での司法の独立の確立に尽力します。これは戦時中に吉田が下した気骨の判決が評価されてのことでした。
掲載:2008年08月25日

著者プロフィール

清永聡

キヨナガ・サトシ

1970(昭和45)年福岡県生まれ。NHK記者。1993年広島大学文学部独語科卒。NHK報道局社会部記者として気象庁や司法クラブなどを担当。大分放送局デスク、司法クラブキャップを経て社会部副部長。著書に『気骨の判決』(新潮新書)、『戦時司法の諸相』(共著)。

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