オタクはすでに死んでいる
748円(税込)
発売日:2008/04/16
- 新書
脂肪の次は思考を整理。一億総コドモ社会はなぜ生まれたのか。
テレビの企画で、いまどきのオタクたちに対面した著者が覚えた奇妙な違和感。そこから導き出された結論は「オタクはすでに死んでいる」だった。小さな違和感から始まった思索の旅はやがて社会全体の病にまで辿り着く。日本人はなぜ皆、コドモになってしまったのか。自由自在に飛び跳ねる思考の離れ業のダイナミズムを堪能出来る一冊。
書誌情報
読み仮名 | オタクハスデニシンデイル |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 192ページ |
ISBN | 978-4-10-610258-5 |
C-CODE | 0236 |
整理番号 | 258 |
ジャンル | 社会学 |
定価 | 748円 |
インタビュー/対談/エッセイ
波 2008年5月号より 一億総コドモ社会とオタク
僕がそんなふうに言い切ると、こんな怒りの声が飛んできそうだ。
「ケッ、ダイエットがうまくいって、脱デブに成功したからって、今度は脱オタクかよ。調子に乗るんじゃねえ」
確かに僕は一昨年からダイエットを始めて五〇キロの減量に成功した。その経験と自分で考案した「レコーディング・ダイエット」のノウハウをまとめた『いつまでもデブと思うなよ』を、昨年刊行したところ、おかげさまで予想以上に多くの方に読んでいただけた。
でも、それで調子に乗って「脱オタク」を宣言したわけではない。僕が「オタクの死」について最初に語ったのは二〇〇六年。「オタク・イズ・デッド」というタイトルで開いたトーク・イベントでのことだった。つまりデブ時代の話なのだ。
「だからどうだっていうんだ。大体、オタクなんて奴らが生きようが死のうが知ったことか」
今度はそんなふうに言われるかもしれない。
でも、実は死んだのはオタクだけではない。オタクの死は、「昭和の死」も意味しているのだ。もう少し詳しく言うと、戦後の日本に存在していた「高度消費社会」と「勤勉な国民性」の両方が失われたということだ、と僕は考えている。「失われた」というと否定的すぎるかもしれない。日本人は昭和の次のステージに入ってしまった、と言ってもいいだろう。これは世界中の誰も経験したことがないステージだ。
その結果、どんなことになっているか。日本人全体がコドモになってしまった。「大人になるのは損だ」と思う人だらけになってしまった。一億総コドモ化が進んでしまったのだ。
学校ですぐにキレる親、医者を吊し上げる患者。
店員を怒鳴る客、病的なクレーマー。
責任者に土下座させないと納得しないマスコミ。
これらが僕達自身、または、すぐ隣にいる「平均的日本人」の姿になったのである。
それゆえに「大人の見識」を学ぼうとする人がたくさんいるのだ。そう、身についていないから本で学ばざるを得ないのである。
だからといって「昔はよかった」式の話をするつもりはまったくない。ただ、日本中がこうなっている、ということは認識すべきだというだけである。
さて、今度はこんなふうに言われるかもしれない。
「日本人が変わってきたことには思い当たるけれども、そのことと、オタクと何の関係があるっていうんだよ」
なぜオタクの死が、昭和の死でもあり、一億総コドモ社会を生み出したのか。その詳細はこの行数にダイエットして書くことはとても無理だ。
本論については本書をお読みいただきたい。
蘊蓄倉庫
来日した外国人が「日本人はみんなロリコンなのか?」と驚くことがあるそうです。その理由は、駅の売店で売っている雑誌のほとんどが美少女を表紙にしているから。考えてみれば大人向けの雑誌までそうというのは珍しいのでしょう。岡田斗司夫さんは、この起源は「少年マガジン」だといいます。そして、これが最近の「萌え」ブームにつながっているのだ、と。詳しくは本書で。
担当編集者のひとこと
クレーマーとオタク
最近の若い人はおかしい。いや老人だって非常識だ。日本人全体がおかしい。劣化しているのだ。幼稚になっているのだ。
――こういう話をよく聞きます。統計的に証明できるわけではないですが、実感としてそんなふうに感じる場面はよくあるのではないでしょうか。
誰かがちょっとしたミス、失言をしただけで、寄ってたかって叩きまくる。土下座をしても許さない。そんな風潮もあるようです。
マスコミに大きな責任があるのはいうまでもありませんが、どうも日本中にクレーマー気分が蔓延しているかのような感じもします。
なぜそんなことになったのか。
岡田斗司夫さんは、「オタク」を切り口に、それを見事に読み解きます。 オタクの代表、オタキングとして知られる岡田さんは、あるときテレビ番組の企画で、若い「オタク」に会います。そして違和感を覚えます。
「どうもこれは自分の知っているオタクとは違う人たちが増えているようだ」
そこから岡田さんの脳は高速回転を始めます。
どこに違和感があったのか? じゃあオタクって何なのか? なぜオタクは変質したのか? この問題を考えていくうちに、思考は社会全体の変質に行き当たります。
そして「なぜ日本中にクレーマー気分が蔓延したのか」「なぜ日本人が劣化したとされるのか」という問いへの答えが導き出されるのです。
昨年50キロのダイエットで話題になった岡田さんが、「脂肪の次は思考の整理」とばかりに、大胆に日本という「一億総コドモ社会」を斬る社会評論です。
2008/04/25
著者プロフィール
岡田斗司夫
オカダ・トシオ
1958(昭和33)年大阪生れ。文明批評家。大阪芸術大学客員教授。1985年、アニメ・ゲームの制作会社ガイナックス設立、1992(平成4)年退社。1997年、講演・執筆活動のために株式会社オタキング設立。『オタクはすでに死んでいる』『いつまでもデブと思うなよ』『「世界征服」は可能か?』『フロン――結婚生活・19の絶対法則』など著書多数。