原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史―
924円(税込)
発売日:2008/02/18
- 新書
指令:讀賣新聞社主ノ正力ト協力シ、親米世論ヲ形成セヨ。CIA文書が語る「対日情報戦」の全貌!
一九五四年の第五福竜丸事件以降、日本では「反米」「反原子力」気運が高まっていく。そんな中、衆院議員に当選した正力松太郎・讀賣新聞社主とCIAは、原子力に好意的な親米世論を形成するための「工作」を開始する。原潜、讀賣新聞、日本テレビ、保守大合同、そしてディズニー。正力とCIAの協力関係から始まった、巨大メディア、政界、産業界を巡る連鎖とは――。機密文書が明らかにした衝撃の事実。
本書のソース 年表
書誌情報
読み仮名 | ゲンパツショウリキシーアイエーキミツブンショデヨムショウワリメンシ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 256ページ |
ISBN | 978-4-10-610249-3 |
C-CODE | 0221 |
整理番号 | 249 |
ジャンル | 日本史 |
定価 | 924円 |
蘊蓄倉庫
1959年、アメリカのディズニーランドに「潜水艦の旅」というアトラクションがオープンしました。そこに登場する潜水艦の名前はノーチラス、トライトン、シーウルフ等々、すべて実在の原子力潜水艦のものばかりでした。その理由はスポンサーが原潜を作ったメーカーとアメリカ海軍だったからです。夢の国にも色んな事情があるのです。
担当編集者のひとこと
アメリカの怖さと大らかさ
『原発・正力・CIA―機密文書で読む昭和裏面史―』で著者は、CIAの機密文書を読み解き、様々な新事実を明らかにしています。
1950年代、第五福竜丸事件をきっかけに日本では反核、反米の世論が盛り上がっていました。このままでは日本が共産化してしまうのではないか。そんな危惧を持ったアメリカは、CIAを中心に、日本で「情報戦」を展開します。その協力者の一人が正力松太郎・読売新聞社主でした。 CIAは「原子力の平和利用」に日本人が好感を持つようになることを望みました。そのために大メディアを支配していた正力に協力を求めたのです。正力の側も、様々な思惑からこの提案に乗りました。
時には、読売新聞社の「数千人の記者」をも情報源として使おうとして、正力に持ちかけていました(ちなみに個々の記者はそんな事情は知らされていませんでした)。他にも、米国に批判的な記事を書いた記者の身元を割り出すといったこともしています。やはりCIAは怖い、という印象を受けます。
しかし一方で、何十年かするとこういう文書を公開することになっているのが、アメリカの大らかさというか、良いところなのだろう、とも思います。
当時、アメリカが脅威としていた敵国は、いまだにそんな文書を公開していません。おそらくはそういう国も日本で様々な情報戦、メディア戦略を展開していたはずですが、それについては闇の中のままなのです。
2008/02/25
著者プロフィール
有馬哲夫
アリマ・テツオ
1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学総合学術院教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『原発・正力・CIA』『日本人はなぜ自虐的になったのか』など。