ワインと外交
770円(税込)
発売日:2007/02/20
- 新書
- 電子書籍あり
安倍総理と小泉総理、中国で厚遇されたのはどっち? 「饗宴のテーブル」から読み解く国際政治。
饗宴のテーブルは時に、表向きの言葉よりも雄弁に「本当の外交関係」を物語ることがある。ブッシュが食べたフレンチフライ、「海の幸だけ」が出された独仏首脳の会食、天皇主催の晩餐会で飲まれなかった高級ワイン、日韓首脳会談における盧武鉉の驚くべき発言……。真の政治的メッセージは、そうした饗宴の細部に宿るのだ。ワインとメニューから読み解く国際政治の現実。
書誌情報
読み仮名 | ワイントガイコウ |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 224ページ |
ISBN | 978-4-10-610204-2 |
C-CODE | 0231 |
整理番号 | 204 |
ジャンル | 政治、ワイン・お酒 |
定価 | 770円 |
電子書籍 価格 | 660円 |
電子書籍 配信開始日 | 2012/02/24 |
蘊蓄倉庫
饗宴外交の場で出される飲物といえば、かつてはフランス産ワインがメインでしたが、各国が接待方法に知恵を絞るようになった近年では、饗宴の場に出される飲物も多様化しています。
移民国家のアメリカでは、接待相手の国の出身者が造るアメリカ産ワインが、しばしばホワイトハウスのテーブルに上ります。紹興酒のイメージが強い中国も、実は世界第六位のワイン産出国で、首脳外交の場では自国産ワインを出しています。日本でも、自国産のワインが饗宴外交のテーブルを飾る日も、そう遠くはないはずです。
ちなみに饗宴外交の本家本元フランスは、時々、これと全く逆の演出を施すことがあります。森首相がフランスを訪問した時、エリゼ宮でのシラク大統領との会食には、焼酎「森伊蔵」が出されたのです。
担当編集者のひとこと
首相よりも「格上」だった日本の政治家
この本には格別の思い入れがあります。三年前に新書編集部にやってきて最初に考えた企画の一つであるだけでなく、本の元になった「フォーサイト」の連載「饗宴外交の舞台裏」を企画したのも自分だったからです。98年2月の連載開始当初から「いつかは本にしたいものだ」と思っていましたが、それが実現したのは実に9年後になってしまいました。 著者の西川恵さんは、著書『エリゼ宮の食卓』でフランス大統領府の饗宴外交を描いたベテランの外交記者。今回の『ワインと外交』では、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、ロシアと取材の対象を国際政治全体に広げ、テーマごとに各国首脳の饗宴外交をまとめています。
外交上の儀典といえば、何だか堅苦しいものをイメージされるかも知れませんが、実は饗宴こそ政治の極致。メニューを子細に眺めていると、そこに込められた政治的メッセージが浮かび上がってきて、興味は尽きません。
例えば、近年では安倍、小泉、小渕の各総理が中国を訪問していますが、実はこれら現役の首相を差し置いて、中国に最も厚遇された日本の政治家がいます。98年7月に訪中した共産党の不破委員長です。当時の胡錦濤副主席主催の歓迎晩餐会に出されたのは、デザートや果物まで含めて合計11品。イカの卵巣やフカひれなどの高級食材もふんだんに使われた豪華なメニューで、飲物も最高級のマオタイ酒です。ちなみに安倍総理の歓迎晩餐会に出されたのは8品で、飲物は中国製ワイン「長城」でした。
こうした対応の差には中国の外交戦略が表現されているわけですが、なぜそうなったのかについては、本書を開いてご確認いただきたいと思います。
2007/02/23
著者プロフィール
西川恵
ニシカワ・メグミ
1947(昭和22)年長崎県生まれ。1971年毎日新聞社入社。パリ、ローマの各支局、外信部長などを経て、2014年から客員編集委員。仏国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『エリゼ宮の食卓』(サントリー学芸賞)『知られざる皇室外交』など。(公財)日本交通文化協会常任理事。