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日本の国境

山田吉彦/著

748円(税込)

発売日:2005/03/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

中国潜水艦の侵犯、北朝鮮不審船、北方領土問題……そこでは何が起きているのか。

東は南鳥島から西は与那国島、北は択捉島から南は沖ノ鳥島まで。主権的権利を持つ排他的経済水域(EEZ)は約四四七万平方キロ、世界で六番目の広さである。しかし残念ながら日本が広い国であることを知っている日本人は少ない――。中国潜水艦の侵犯、北朝鮮不審船、北方領土など連日のように報道される領土問題、そこでは何が起きているのか。歴史を紐解き、現地からの迫真レポートも交えながら「日本の国境」を考える。

目次
プロローグ
第一章 海洋国家日本の肖像
この国のかたち
領土とは何か
海洋管理の根拠法
沿岸一二海里の領海
排他的経済水域の管轄権
一〇兆円の資源が眠る大陸棚
海から忍び寄る脅威
北朝鮮工作船事件の全容
原子力潜水艦による領海侵犯
違法な海洋調査船
永楽帝以来六〇〇年ぶりの中国海洋拡大政策
東シナ海におけるエネルギー開発
海洋経済に本腰を入れる中国
海国を意識した日本人・林子平
「海国兵談」に書かれたこと
江戸期に引かれた国境線
第二章 日本の国境を行く
沖ノ鳥島
日本唯一の熱帯気候
広大な排他的経済水域を持つサンゴの小島
「島」か「岩」か
島の要件を満たすために
南海を行く貨客船「だいとう」
沖ノ鳥島の土を踏む
標高九○センチの東小島
島の有効利用策
生命線ともなる重要航路
星の砂で国土の再生を
石垣島
南海の楽園
中国・台湾の貿易を日本が結ぶ
大事故の危険をはらむクリアランス船
莫大な「トン税」の利益
海上保安庁石垣海上保安部
国境を越えた犯罪
多発するシュノーケリング事故
日台漁民マグロ戦争
明和の大津波
大東諸島
東の彼方「ウフアガリジマ」
サトウキビで生きる島
絶海の孤島の暮らし
人の暮らしが領土を守る
根室・羅臼
北方領土を望む街
根室海上保安部の戦い
第三章 領土紛争最前線から
尖閣諸島
狙われた島
日本固有の領土
政府、総務省、そして民間人が所有
対馬
檜造りの巡視艇「たまゆき」
前線基地・対馬海上保安部
韓国不法操業漁船との戦い
緊迫の不審船拿捕
漁業資源維持のために
七世紀の白村江の戦いから
古来、日本の玄関として
記紀に描かれた倭の国
戦いに明け暮れた対馬海峡
ロシア軍艦が侵入
竹島
還らぬ島
すり替えられた歴史
北方領土
北方領土問題への認識
現在の四島
歴史的背景を紐解く
日本とロシアの境界線
ロシア・水産マフィアの台頭
国境警備庁ガモフ将軍の暗殺
北方海上での仁義無き戦い
第四章 「日本の海」を守る
世界の領有権紛争
中国が狙う南シナ海に浮かぶ島々
平和的に解決したペドラ・ブランカ島
国境を守る海上保安庁
歴史を知り海洋国家として考える
海洋政策を急げ!
あとがき

主な参考文献

書誌情報

読み仮名 ニホンノコッキョウ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610107-6
C-CODE 0231
整理番号 107
ジャンル 政治、軍事
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/06/29

蘊蓄倉庫

もはや還らぬ島、竹島?

 北緯三七度九分、東経一三一度五五分、隠岐島の北西一五七キロの海上に存する竹島。日本が竹島を正式に領有したのは、一九〇五(明治三八)年のことであった。本来、無人島で、かつては初夏になるとアシカが群集し魚介類も豊富に取れ、島根県や鳥取県の漁民の貴重な漁場となっていた。ところが一九五二(昭和二七)年、事態は一変する……。
 戦後処理の総決算である一九五一年に締結されたサンフランシスコ平和条約において、竹島は日本の領土として認められることとなった。だが、この条約の草案を入手した韓国は、独島(竹島)を返還するよう米国に強く要求。当然のことながら、朝鮮が竹島を領有した歴史的事実がないことから、要求が受け入れられることはなかった。それを不満に思った韓国大統領・李承晩は武力占領に出たのだ。当時の日本はGHQの支配下にあり、国家の主権も容易に主張できる状況ではなかった。いわば韓国は先手を打ったのである。
 日本政府は、竹島の領有権を国際司法裁判所に委ねることを韓国に提案するが、未だ韓国は受け入れる気配はない。現在も泣き寝入りのままである。国際司法裁判所への審判請求は関係両国の同意がなければ受理されない制度になっているからだ。

掲載:2005年3月25日

担当編集者のひとこと

もはや還らぬ島?、竹島

 日本の国土面積は三八万平方キロ、世界で五九番目の広さである。陸地の面積だけみれば、決して広いとはいえないだろう。しかし、我国が漁業管轄権や海底資源の調査・採掘権などの主権的権利を持つ、「日本の海」=排他的経済水域(EZZ)でいえば、約四四七万平方キロ。これは世界で六番目の広さとなるのだ。この広い海の中に六八五二の島があり、およそ一億二〇〇〇万人が暮している。私たちの国、日本はとても広い国なのである。しかし、日本が広い国であり、豊かな海洋国であることを認識している日本の国民は一体どれだけいるだろうか……。 さて、島根県が条例制定した「竹島の日」で物議をかもし現在注目されている竹島――北緯三七度九分、東経一三一度五五分、隠岐島の北西一五七キロの日本海海上に点のように浮かぶ岩礁である。本来、無人島で、かつては初夏になるとアシカが群集し魚介類も豊富に取れ、島根県や鳥取県の漁民の貴重な漁場となっていた。
 日本が竹島を正式に領有したのは、一九〇五(明治三八)年二月二二日のことである。だが、それより以前から漁師たちは渡航していた。日韓併合以前に、日本は竹島を領土としていたのであった。ところが一九五二(昭和二七)年、事態は一変する……。
 敗戦後、連合国最高司令部(GHQ)は「一定の遠隔地域の日本からの政治的・行政的分離」という訓令を出し、一旦は、竹島は日本領から外れることとなる。しかしその後、戦後処理の総決算である一九五一年に締結されたサンフランシスコ平和条約において、竹島が正式に日本の領土として再び認められることになった。だがその時のこと、この条約の草案を入手した韓国は、独島(韓国側の竹島の呼び名)を返還するよう米国に強く要求する。当然のことながら、朝鮮が竹島を領有した歴史的事実がないことから、連合国に要求が受け入れられることはなかった。それを不満に思った韓国大統領・李承晩は武力占領に出たのだ。当時の日本はGHQの支配下にあり、国家の主権も容易に主張できる状況ではなかった。日本がサンフランシスコ平和条約を批准し、発効することで国家の体制を立て直す前に、韓国は先手を打ったのである。
 日本政府は、竹島の領有権を国際司法裁判所に委ねることを韓国に提案するが、未だ韓国は受け入れる気配はない。現在も泣き寝入りのままである。国際司法裁判所への審判請求は関係両国の同意がなければ受理されない制度になっているからだ。

2005年3月刊より

2005/03/20

著者プロフィール

山田吉彦

ヤマダ・ヨシヒコ

1962年千葉県生まれ。学習院大学卒業。東海大学海洋学部教授。海上保安体制、現代海賊問題などに詳しい。著作に『日本の国境』、『海賊の掟』(新潮新書)、『海の政治経済学』(成山堂書店)、『日本は世界4位の海洋大国』(講談社+α新書)、『海洋資源大国 日本は「海」から再生できる』(海竜社)、『日本国境戦争』(ソフトバンク新書)、『驚いた! 知らなかった 日本国境の新事実』(じっぴコンパクト新書)などがある。

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