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【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛

池内恵/著

1,540円(税込)

発売日:2016/05/27

  • 書籍
  • 電子書籍あり

百年前、英・仏・露によって結ばれた秘密協定。それは本当に諸悪の根源なのか。

いまや中東の地は、ヨーロッパへ世界へと難民、テロを拡散する「蓋のないパンドラの箱」と化している。列強によって無理やり引かれた国境線こそが、その混乱を運命づけたとする説が今日では主流だ。しかし、中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知らなければ、決して正解には至れない。危機の本質を捉える緊急出版!

目次
はじめに
1 サイクス=ピコ協定から百年
2 蘇る密約
3 では、なくせばいいのか
第1章 サイクス=ピコ協定とは何だったのか
1 分かった気にさせるマジックワード
2 二種類の批判
3 中東問題への「解決策」
4 セーヴル条約からローザンヌ条約へ
5 サイクス=ピコ協定と現代
第2章 露土戦争と東方問題の時代
1 新しい「東方問題」
2 クリミア併合で蘇るロシアの「南下政策」
3 露土戦争の中東史
4 「東方問題」の発生
5 冷戦期に影を潜めた「露土戦争」と「東方問題」
6 トルコは今も「ヨーロッパの病人」なのか?
第3章 クルドの夢はなるか?
1 シリア北部のクルド「独立」への一歩
2 注目すべき米国とロシアの反応
3 「民族」と「国家」の偶然性
4 クルド民族の悲願
5 シリアの三つの飛び地
6 自治から独立へ モデルはイラク
7 イラクにシリアが続き、そしてトルコへ?
8 クルド問題をめぐる大国の協調はなるか
第4章 再び難民の世紀へ
1 二十世紀は難民の世紀
2 オスマン帝国崩壊と難民
3 アルメニア人虐殺とは
4 ギリシアとの住民交換
5 いくつもの「民族の故郷」
6 難民の選択
7 西欧の対岸で抑圧的政権の「ダム」が決壊
第5章 アラビアのロレンスと現代
1 映画『アラビアのロレンス』に見る中東国際政治
2 メディアと国際政治
3 「老人の和平」は可能か
参考文献

書誌情報

読み仮名 チュウトウダイコンメイヲトクサイクスピコキョウテイヒャクネンノジュバク
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 144ページ
ISBN 978-4-10-603786-3
C-CODE 0331
ジャンル 世界史
定価 1,540円
電子書籍 価格 1,100円
電子書籍 配信開始日 2023/05/26

インタビュー/対談/エッセイ

日本人が陥る中東問題のワナ

池内恵

――なぜ、この本を書こうと?

 中東が大混乱しています。その原因は何か。五里霧中に見える中東情勢の、将来をどう見通せばいいのか。どうすれば中東に平和と秩序が戻ってくるのか。何をキーワードにすると色々なものが見えてくるのかと考えた時に行き着いたのが、世界史の教科書でおなじみの「サイクス=ピコ協定」だったのです。
 ちょうど今年はサイクス=ピコ協定から百年目。第一次世界大戦の最中、イギリスとフランスが謀議して、オスマン帝国が崩壊した後にその領土・支配地、特に現在のイラクやシリアやイスラエル・パレスチナあたりの、アラブ人が多く住む土地を分割して支配しようと約束した。交渉に当たった英仏の植民地行政官の名前をつなげてサイクス=ピコ協定と呼ばれる。有名、というか、世界史上最も悪名高い国際合意と言えます。

――中東の混乱は、英仏がこの協定で勝手に国境線を引いたからなんですね?

 いや、そう言ってしまうとちょっと違います。確かにサイクス=ピコ協定が今日の状況の一つの起点になっていることは間違いない。でも、それが全ての問題の元凶だというわけではないんです。
 中東問題が紛糾すると、テレビにコメンテーターなどが出てきて、中には「サイクス=ピコ協定」という言葉を知っていて、「結局これが問題なんです」と解説してみせるのだけれども、よく分からずに言っているようにしか聞こえない。何も関わりがないことまで、この協定のせいだ、と決めつけてしまうのですから。
 確かに、英仏が引いた国境線の中で独立を果たしたアラブ諸国は、国としての自立性やまとまりに欠ける面がある。恣意的に引かれた国境線の中には、民族問題や宗派問題が時限爆弾のように埋め込まれている。でも、それは複雑な物事のごく一面に過ぎない。サイクス=ピコ協定のようなかなり人口に膾炙した言葉には、それなりに必ず重要な面があります。しかしそれはあくまでも物事への「とっかかり」であって、あるところから先の本質を考えていくには、素人の大雑把な直感に頼るだけでは先に進めない。そこでこの本では提案してみたのです。サイクス=ピコ協定を知っているなら、ついでにセーヴル条約とローザンヌ条約についても知ってみてはいかがですか、と。

――途端に聞き慣れない用語ですね。

 そうでしょう。高校の世界史でもほとんど教えられていません。別に私は条約の文面を諳(そら)んじなさいとかは言っていません。歴史は「暗記もの」ではない。それよりも、この三つの協定・条約の「論理」を知って欲しいのです。サイクス=ピコ協定から四年後、一九二〇年に結ばれたセーヴル条約では、オスマン帝国の中心、今のトルコの領土であるアナトリア半島が分割されます。それも、ギリシア人とかアルメニア人とかクルド人とかいう、トルコ人でもアラブ人でもペルシア人でもない少数民族が、分割の主体になろうとするのです。それぞれロシアや英国など域外の大国を後ろ盾につけて。
 しかしセーヴル条約で徹底的にズタズタにされてしまったオスマン帝国のトルコ人の軍人などエリートたちは、この条約の受け入れを拒否し、オスマン帝国のスルターン=カリフの支配も覆して、独立戦争に打って出る。そうして、少数民族たちが独立・自治を要求し武装して挑んでくるのを制圧し、現在のトルコ共和国の国境・領土まで押し戻して終戦を迎え、独立を果たした。それを認めたのが一九二三年のローザンヌ条約です。

現代的な関心によって更新される歴史

――うーん、全然知りませんでした。

 やはりね(笑)。協定の後に中東の情勢が大きく移り変わっていった。それに応じて、全く違う論理と原則に基づいて、二つの条約が結ばれたのです。
 サイクス=ピコ協定の論理とは、大国間の協調によって中東の秩序を形成するというものです。当時の超大国、列強と呼ばれた英仏が談合してオスマン帝国の支配地を分割しようとし、ロシアも乗った。当時のロシアは、現在のアルメニアやアゼルバイジャン、さらにイラン北部まで勢力を伸ばしており、域外大国というよりは中東の域内大国でもありました。
 協定を結ぶ者たちは、現地の勢力はただ従えばいいものとみなしていた。しかし現地の人たちにも意志と主体性があるので、列強の思い通りにはならなかった。少数民族や少数宗教・宗派の勢力が台頭して、それぞれの民族の国家独立や自治を求めて戦っていきます。第一次大戦が終わった直後から、オスマン帝国の領域、特にトルコでは激しい戦争が、今度は大国間の戦争ではなく、オスマン帝国の領域内の諸民族・諸宗教・宗派集団間の内戦が、勃発していたのです。
 この諸民族間の内戦に列強も関与していた。ロシアはアルメニア人を使いトルコのアナトリア東部に進出し、イギリスはクルド人を支援してアナトリア東部に勢力圏を作って対抗しようとした。隣国ギリシアはオスマン帝国内のギリシア人の住む領域を全て自国に編入しようと侵略してくる。それに対してオスマン帝国の軍の中枢にいたトルコ人が、ケマル・アタチュルクの指揮下で奮起し、実力で少数民族を排除して、その結果を固定化するという形で秩序が形成されました。

――現在その秩序が再び崩れつつある?

 そうです。きっかけは二〇一一年の「アラブの春」でした。アラブ諸国は、独裁者が押さえつけることで、国家や国民社会がかろうじてまとまっていた。政権の揺らぎや崩壊によって、国家のまとまりもまた失われたのです。つまり、三つの協定・条約で何とか解決あるいは押さえ込もうとした問題が、もう一度表に現れてきた。そうなると、セーヴル条約やローザンヌ条約も、新たな意味を持って思い出すべき対象となる。歴史というのは、現代的な関心から思い出されることで、常に更新されていくのです。

「中東ブックレット」の狙いとは

――この薄めの選書にした意図は?

 これが、今私がどうしても書きたい、このテーマにとっての、ちょうどいいサイズだからです。ばらばらの情報ならインターネットに溢れ、ほとんど飽和状態です。だからこそ、一冊の本という有限の器の中に、本当に必要な情報だけを収めることに意味が出てくる。無限に情報があると、選べないし捨てられなくなるのです。必要なものを選び、不要なものを選んでくれる媒体として、本はいまだに最適の容れ物だと思っています。
 そして選書という媒体に私は以前から興味を持っていました。学術的な内容を軽快な装丁で本にできる。ただし、選書の通常の厚さだと、世の中の現場の最前線にいる忙しい人たちに、そういう人たちにこそ実は私の本を読んで欲しいのだけれども、なかなか読み通してもらえない。ならば要点に絞って極限まで薄くしよう、と。出張で新幹線に乗る前に買って、東京・新大阪間でじっくり読めば読みきれるぐらいの厚さ。朝のニュースで気にかかっていた中東の事件について、背後にある歴史や政治や国際関係がまとまって頭に入ることを意図しています。
 文字数は通常よりは少ないですが、決してお手軽ではない。日本の読者に理解しやすくするための行き過ぎた単純化はしていません。単純にできるところはさらっと、できないところは立ち止まって考えられるよう、メリハリをつけて書きました。おそらく世の中には二種類の読者がいます。ああ自分はよく知っていると思って満足する読者と、まだ知らなかったことを読んで満足する読者。この本は後者に向けて書かれています。中東についてよく言われがちな、威勢のいい、耳に聞こえのいい話では満足できず、本当のところ、もう少し突っ込んだところが知りたいという読者がターゲットです。

――しかしそうすると売れますかね?

 ちょっと苦しいと思います(笑)。というのは冗談で、潜在的な読者はかなりいると思います。私は過去十年ほどで過熱した「新書戦争」をあまりよく思っていません。かつては長く読まれる定番の、教養主義的な高尚な内容のものが多かった新書という媒体が、近年大きく変わってしまい、各社が競って数多くの新書を毎月刊行して競争しています。ものによっては、ほとんど月刊誌の特集一つぐらいの内容ではないかと思われるお手軽なものが出ていて、しかもそういうものが良く売れたりする。
 新書戦争に火をつけたのは、他でもない、新潮社です。二〇〇三年に創刊した新潮新書は、それまでの教養主義的な新書とはスタイルを大きく異にして、ジャーナリズム的な速さ、斬新さを重視して、新書ブームを巻き起こしました。四百万部以上売れた養老孟司バカの壁』は新しいスタイルの新書の金字塔であり、同時に戦後の日本の教養主義を支えてきた新書という媒体への決別宣言(ヴァレディクション)であったと思います……これ検閲されないかな。

――え、いえ、大丈夫です(汗)。

 もちろん、それによって出版界が大いに活気づいたことは確かです。専門家にとって、新書という読者が手に取りやすい媒体によって、高度な内容を噛み砕いて伝えることができるのは魅力的です。私自身が『現代アラブの社会思想 終末論とイスラーム主義』(講談社現代新書、二〇〇二年、大佛次郎論壇賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書、二〇一五年、毎日出版文化賞特別賞)と、もともと論文の形で出ていた研究成果を少し読みやすくして新書にしたところ、思いがけないほど多くの読者に届けることができた幸福な体験を何度もしています。
 しかし新書では書き切れない内容と歯ごたえの本をどうやって出すか。今回は、サイズの大きな地図も多く入れる必要がある。そこで浮かんだのが選書。内容を思いっ切り切り詰め、要点だけ詰め込む。さらっと読み飛ばせるほど軽くはないけれども、落ち着いてひとつながりの論理を読み通すと、世界がクリアーに見えてくる。そんな媒体として「ブックレット化した選書」を思いついたのです。

――発案から刊行までが早かった。

 読者の関心が高まりつつある重要なテーマを察知し、研究蓄積を踏まえて“一筆書き”で書いて届ける。まさに「オンデマンド(要望に応じて)」出版です。

――通しタイトル「中東大混迷を解く」とあります。シリーズ化するのですか?

 同じような薄さで、中東というテーマで二冊目も三冊目も出すつもりです。中東の混乱は近い将来には収まりそうにありません。耳目を集める事件や事象が起こって、私に書けること、書きたいことがあれば出していきたい。もしこの本の評判が良くて、売れれば、どんどん出るでしょう(笑)。結果的に他社も模倣して「新潮社が今度は選書戦争に火をつけた」と言われるぐらいになりたいですね。

説教癖を直すために?

――最初薄すぎるかな、と思ったのですが、意外にしっくりくる。文章が引き締まり、内容も濃い。読後感も重い。

 ですよね(笑)。これはインターネット用語かもしれませんが、「小一時間説教」することを意図しました。よくいるんですよね、講演で中東情勢やイスラーム思想について話すと、質問で本題と関係なく「わたしゃね、思うんですよ、諸悪の根源がサイクス=ピコ……」などと一席ぶって一向に質問に入らないおじさまが(笑)。それはまあ実際に重要で、今に至るまで影響を与えている面はある。でも何もかもそれでは解けないし、正しくは解けない。じゃあそれぞれの民族や宗派ごとに国を作ればいいのか。そんなことをしたら旧ユーゴスラビアのように分裂を繰り返して内戦が終わらなくなります。逆に、国境線を引くのはやめて、オスマン帝国のようにトルコ人など征服民族の下で諸民族が服属して暮らしていくかというと、いまやそんな境遇で満足する民族は少ないでしょう。
 私も短気なので、「サイクス=ピコが重要というなら、どう重要なのか、言ってみてください。言えませんか。実際には……」と、小一時間ばかり説教したくなるんです。悪い癖です。あまり外で人様に説教していると評判が悪くなるので、これからは、ここぞとばかり微笑んで「ブックレットにしてありますからお買い求めください」と言いたいですね。
 この本では、要所要所では隅々まで理屈を通して考えるので、ちょっと面倒くさいかもしれませんが、知っておくべき基本的なポイントを、ひとまとまりの論理でまとめてあるので、読み終わる頃には、それまで全く脈絡がないように感じられていた中東情勢が、かなりスッキリと見えてくるのではないでしょうか。

(いけうち・さとし 東京大学先端研准教授 イスラーム政治思想史・中東地域研究)
波 2016年6月号より

関連コンテンツ

索引

〈欧文〉

EU(ヨーロッパ連合、欧州連合) 14 68 69 87 139
KDP(クルディスターン民主党) 91 92 94
KNC(クルド国民評議会) 94
KRG(クルディスターン地域政府) 90 91 92
NATO(北大西洋条約機構) 55 65 87 99
PKK(クルディスターン労働者党) 67 68 74 76 89 95 96
PUK(クルディスターン愛国同盟) 91 92
PYD(民主統一党) 70 72 74 76 90 95 96
YPG(人民防衛隊) 70 74 76 95 96

〈あ〉

アイユーブ朝 84
アサド、ハーフィズ 89
アサド、バッシャール もしくは アサド政権 52 67 71 72 89 94 95 96 97 119 121 134 135 136 137
アシュケナージ 115
アシュケナジーム 115
アストラハン・ハン国 57
アゼルバイジャン 60 65 84 99
アダナ 32
アッシリア教徒 13
アッシリア人 42 86 96 97
アテネ 110
アナトリア 32 34 35 37 38 39 40 44 45 64 77 78 79 84 86 88 93 105 106 110 112 114
アナトリア半島 35 64 110 112 114
アフガニスタン 101
アブドッラー(ハーシム家) 78 80
アフリーン 88
アメリカ(米〔米国〕も参照) 20 130 131 132
アラウィー派 94 116
アラビア語 85 116
アラビアのロレンス(T・E・ロレンス) 36 78 125 126 128 129 130 131 132
『アラビアのロレンス』(映画) 78 124 125 128 130 132
アラビア半島 32 36 45 77 78 79 80 126 128 130 131 138
アラブ人 13 25 32 42 45 76 77 78 79 80 82 86 89 92 96 97 98 105 115 116 128 129
アラブの春 15 19 47 50 70 71 94 122 136 139
アラブの反乱 36 78 79 126 130 131 132
アラブ民族主義 74 76 89 118 119 125
アリー(ハーシム家) 78 80
アルジェリア 80
アルメニア 13 25 34 37 39 40 42 45 60 64 65 67 78 84 85 86 99 100 101 102 105 106 109 110 112 115 117 118 120
アルメニア共和国 39 44 108
アルメニア人 13 25 34 37 39 40 42 44 45 64 67 78 85 86 100 101 102 105 106 108 109 110 115 118 120
アルメニア人虐殺 37 67 86 105 106 108
アルメニア人難民 100 101 105
アルメニア正教 106
アレクサンドリア 115
アレッポ 78 88 94
『アレンビーと共にパレスチナで、及びアラビアのロレンス』 131
アンカラ政府(政権) 44 112 114

〈い〉

イエメン 47 133 138
イギリス(英〔英国〕も参照) 13 19 20 32 39 40 77 78 79 80 112 116 125 128 130 132
イスタンブル 32 38 42 44 45 60 61 64 110
イズミル(スミルナも参照) 38 110
イスラーム教 および イスラーム教徒 25 71 80 85 94 104 106 116 119
イスラーム国 15 20 23 26 27 52 67 69 71 72 74 76 95 96 97 98 119 120 121 133 134 137
イスラーム主義 97 119
イスラーム法 25 26 27 57 58 106 120 121
イスラエル 32 115 116 117 122
イタリア 32 38
イラク 13 15 19 23 24 32 34 39 40 45 47 80 82 84 87 88 89 90 91 92 93 94 95 101 115 120 130 133 136 138
イラク戦争 15 92
イラン 39 48 59 71 82 91 92 99 121 137 138
インド 130

〈う〉

ウィーン 30 58
ウィーン会議 63
ウィキリークス 36
ウィルソン、ウッドロー 39 112
ヴェニゼロス、エレウセリオス 38 112
ウクライナ 53 54 55 56 59 60 65 66 98 99
ウクライナ紛争 54 55 56
『失われた楽園 スミルナ、1922』 115
ウラジオストク 61
ウラル山脈 56

〈え〉

英〔英国〕 13 15 22 32 34 35 36 37 38 39 42 45 48 59 60 62 63 64 102 108 109 112 130 132
「映像の世紀」 100
エーゲ海 38 110 114
エジプト 15 32 70 77 78 84 115 129
エルサレム 34 115 118
エルドアン 52 67 68

〈お〉

欧州連合 → EU
オーストラリア 36
オーストリア 30
オジャラン、アブドッラー 89
オスマン帝国 13 25 26 27 28 30 32 34 35 36 37 38 39 40 42 44 45 46 52 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 71 77 78 84 85 86 88 100 101 102 104 105 106 108 109 110 112 115 117 118 120 122 126 128 130 136 138 139
オデッサ 60
オバマ 48 134

〈か〉
カージャール朝ペルシア帝国 60
カイロ 36 128 129 130
カタール 71
カリフ制 26
カルロヴィッツ条約 58

〈き〉

北大西洋条約機構 → NATO
北朝鮮 20 21
キャピチュレーション 58
旧約聖書 115
キュチュク・カイナルジャ条約 58 62
共産主義 64 65
キリキア 32 39 79
ギリシア 38 39 40 44 60 68 104 105 108 109 110 112 114 117
ギリシア人 13 25 37 38 40 42 44 45 85 86 102 109 110 114 115 118
ギリシア正教 および ギリシア正教徒 58 61 62 102 104 116
キリスト教 および キリスト教徒 25 38 60 61 78 79 104 116
金角湾 61

〈く〉

クウェート 91
グリーン・ライン 91
クリミア 54 55 56 57 58 59 60 62 66
クリミア・タタール人 55
クリミア・ハン国 57 58
クリミア戦争 59 62
クリミア半島 30 32 54 56 57 62
クリミア併合 54
グルジア 60 65 99
クルディスターン 84 85 86 88 93 96 97
クルディスターン愛国同盟(PUK) 91
クルディスターン地域政府(KRG) 90 91
クルディスターン民主党(KDP) 91 94
クルディスターン労働者党(PKK) 67 74 95
クルド語 82 84 92 96
クルド国民評議会(KNC) 94
クルド人 13 25 34 37 39 40 42 44 45 67 72 74 81 82 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 104 110 112 117 135 136
クルド(人)難民 91 100
クルド民族主義 70 71 72
クルマンジー語 84

〈け〉

経済移民 101
ケマル、ムスタファ(ケマル・アタチュルク) 42 77 88 114
ケリー 134 135
ケリー・ラブロフ合意 134 135
ゲルマン民族の大移動 101

〈こ〉

紅海 32 78 130
コーカサス 25 30 34 39 56 59 60 64 65 84 85 102 104 105
国際連盟 112
黒海 30 32 38 54 55 56 57 59 60 61 62 64 65 102 104 110
黒海艦隊 55 61
コバニ 88 96
コンスタンチノープル 61
コンスタンチノープル条約 57

〈さ〉

サイクス、マーク 32
サイクス=ピコ協定 13 14 15 16 17 19 20 21 22 23 24 27 28 30 32 34 35 36 37 38 39 40 42 44 45 46 47 48 49 64 71 79 88 110 116 128 132 134 135 136 139
サウジアラビア 48 71 80 99 137 138
サウド家 80
ザカフカース 59
ザザ語 84
サゾノフ 34
サブサハラ・アフリカ 100 122
サラディン 84
サロニカ 114 115
『サロニカ 亡霊の街』 114
サン・ジャン・ド・モーリアンヌ協定 38
サン・ステファノ条約 59 63
山岳トルコ人 82 93
三国協商 36

〈し〉

シーア派 71 90 94 116 119
シオニズム 115 116
自治政府設立宣言(シリア北部クルド人) 70 72 74 76 88 90 97
ジハード 121
シベリア 56
ジャジーラ 88
住民交換 109 110 114
小アジア 32
ジョージア(グルジア) 60 99
植民地主義 15 16 20 21 32 36 109
シリア 13 15 19 22 23 24 32 34 35 39 45 47 48 51 52 56 66 67 68 70 71 72 74 76 78 79 80 82 84 88 89 90 93 94 95 96 97 98 99 100 101 105 106 116 119 120 121 126 128 130 133 134 135 136 137 138
シリア王国 80
シリア国民会議 126 128
シリア難民 68 101 121
シリア民主部隊 97
神聖同盟 58
人民防衛隊(YPG) 70 95

〈す〉

ストーズ、ロナルド 129
スミルナ(イズミル) 38 110 114 115
スレイマン1世 58
スンナ派 80 85 116 119

〈せ〉

正教(※ギリシア正教、ロシア正教、アルメニア正教も立項) 58 61 62 102 104 106 116
青年トルコ党革命 105
セーヴル条約 34 35 37 40 42 44 45 46 47 49 72 88 112
セファルディーム 115
セルビア 59 60 62 104 108

〈そ〉

ソビエト・ロシア 106
ソビエト連邦(ソ連、ソ連邦) 20 39 44 65 106 112 117
ソラニー語 84

〈た〉

ダーダネルス海峡 32 37 45 54 55 61 64
第一次世界大戦 13 14 30 35 37 45 64 72 77 100 104 105 108 109 112 114 115 116 118 122 126 129 130 138
第二次世界大戦 64 65 89 114 119 121 122
大ブルガリア公国 59
太平洋戦争 20
タタール人 55 57 104
ダマスカス 36 78 79 94 126
タラバーニー、ジャラール 92

〈ち〉

地域大国 45 47 48 49 50 97 99 137 138
チェチェン人 59 104
『知恵の七柱』 131
チェルケス人 59 96 104
地中海 32 39 56 59 60 61 64 79 94 115 122 139
中国 21 138
チュニジア 32 70
チュルク系諸語 57 104
朝鮮半島 20 21

〈て〉

帝国主義 15 20 129 132
デヴシルメ制 26
敵対行為の停止 134 137
テッサロニキ 114

〈と〉

ドイツ 25 59 63 65 77 86 87 102 114 115 130
統一と進歩委員会 105 109
東漸 56 61
東方問題 30 51 53 54 56 62 63  64 66 67 69 102 126 139
ドデカネス諸島 38
トマス、ローウェル 131
トラキア 114
トランスヨルダン 80
ドルーズ派 116
トルクメン人 89 96 97 98
トルコ 13 25 32 37 38 40 42 44 45 48 49 51 52 53 54 55 56 57 62 64 65 66 67 68 69 72 74 76 77 79 82 85 86 87 88 89 91 93 94 95 96 97 98 99 100 101 104 105 106 108 109 110 112 114 115 121 122 136 137 138 139
トルコ共和国 44 45 65 79 88 93 114 122 138
トルコ語 85
トルコ人 13 25 32 37 42 44 45 55 57 77 82 85 86 87 93 104 108 110 114 115

〈な〉

ナチス・ドイツ 25 114 115
南下政策 30 34 54 55 56 57 59 61 62 64 65 85
難民 14 17 24 27 59 68 69 84 91 100 101 102 104 105 108 109 110 114 115 116 117 118 119 120 121 122 139

〈に〉

二月革命 36
西クルディスターン 88 96 97
日本 16 20 21 22 76 87 98 124 137
日本海 61
ニュージーランド 36

〈ぬ〉

ヌスラ戦線 97 137

〈は〉

ハーシム家 78 79 80 128 129 132
バグダード 32 40 92 115 130
バスラ 32 40 130
パナマ文書 36
ハプスブルク帝国 30 32 58 60 62 64 102 117
ハマー 78 94
バルカン 59 60 104
バルカン戦争 112
バルカン半島 30 32 60 62 63 64 102 104 114
バルザーニー、マスウード 92
バルト海 60
バルフォア 79
バルフォア宣言 79 115
パレスチナ 13 32 34 45 79 80 115 116 117 131
パレスチナ人難民 116
パレスチナ問題 117
汎スラブ主義 60

〈ひ〉

ピコ、ジョルジュ= 32
飛行禁止区域 91
ビザンチウム 61
ビザンツ帝国 61 110
ヒジャーズ王国 80
ヒジャーズ地方 80
ヒズブッラー 71
ヒズボラ 71
ビスマルク 63

〈ふ〉

ファイサル(ハーシム家) 78 79 80 132
プーチン 52 54 55 134
フサイン(ハーシム家) 36 78 79 80 128 129
フサイン=マクマホン書簡 78 79 129
フセイン、サダム 90 91 92
仏(フランスも参照) 13 15 22 32 34 35 36 37 38 39 42 45 48 59 60 62 63 64 102 108 109 130
ブッシュ、ジョージ・W 48
不法移民 68
フランス(仏も参照) 13 19 20 32 34 35 36 39 40 44 45 79 80 89 108 116 128 130
ブルガリア 59 60 65 104
プロテスタント 116

〈へ〉

米〔米国〕 20 22 37 39 48 52 53 54 55 65 66 67 68 71 72 74 76 86 87 90 91 92 95 96 99 108 112 115 116 121 122 125 126 128 132 134 135 136 137 138 139
ベイルート 32
ベドウィン 124
ペルシア語 82
ペルシア帝国 60 85 138
ベルリン会議 59 63

〈ほ〉

ポーランド 56
ホガース、デイヴィッド・G 129
ポグロム 25
ボスニア・ヘルツェゴビナ 100
ボスフォラス海峡 32 37 45 54 55 61 64
ホムス 78 94
ボリシェビキ 16 36
ホロコースト 25
ポントゥス・ギリシア人 110

〈ま〉

マクマホン、ヘンリー 77 129
マゾワー、マーク 114
マロン派 116

〈み〉

ミズラヒーム 115
ミルトン、ジャイルズ 115
民主統一党(PYD) 70 90 95
民族主義 15 36 38 42 44 45 55 60 64 70 71 72 74 76 77 78 82 84 85 86 89 94 105 110 116 118 119 122 125 132 139
民族浄化 24 98 109 110
民族の故郷 79 115 116 117
「民族の悲劇果てしなく」 100

〈む〉

ムスリム(イスラーム教徒も参照) 59 78 85 104 105
ムスリム、サーレハ 90
ムドロス休戦協定 37 38

〈め〉

メガリ・イデア 38 112
メッカ 36 78 79 80
メディナ 78 80
メドヴェージェフ 52
メフメト2世 57

〈も〉

モースル 40
モンテネグロ 59 60

〈や〉

ヤズィーディー(ヤズィード)教 および ヤズィーディー(ヤズィード)教徒 13 23 119

〈ゆ〉

ユーゴスラビア 60
ユダヤ教 および ユダヤ教徒 25 79 115
ユダヤ人 25 79 114 115 116
ユダヤ難民 115

〈よ〉

ヨルダン 13 32 80 121
ヨルダン川 80

〈ら〉

ラズ人 42
ラタキア 94 116
ラッカ 95
ラブロフ 134 135

〈り〉

リビア 32 38 47 133 138

〈る〉

ルーマニア 59 60
ルワンダ大虐殺 100

〈れ〉

冷戦 20 48 49 64 65 66 106
歴史的シリア 32
レバノン 71 79 80 116 117 121
連邦化宣言(シリア北部クルド人) 70 72 74 90

〈ろ〉

露(ロシアも参照) 35 38 48 51 99 134 135 136 137 138
ロイド・ジョージ 38 112
ローザンヌ条約 34 35 42 44 45 46 47 49 72 88
ロードス島 38
ローマ・カソリック 61 116
ローマ教皇 58
ローマ帝国 61
ロシア(露も参照) 13 16 20 21 25 30 32 34 36 37 39 40 44 48 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 71 72 78 84 85 96 98 99 101 102 104 105 106 108 109 112 117 121 130 134 136 137 138
ロシア革命 65
ロシア空軍機撃墜事件 51 52 53
ロシア正教 61
ロシア帝国 30 36 37 39 55 59 60 65 84 85 102 104 117
ロシア連邦 65
ロジャヴァ 96
ロスチャイルド男爵 79
露土戦争 51 53 54 55 56 57 58 59 62 63 64 65
ロレンス → アラビアのロレンス

〈わ〉

ワッハーブ派 80
湾岸戦争 48 90 91 100

担当編集者のひとこと

歴史と国際情勢なら、この「物騒な男」に訊きたい

「テロを呼ぶ男」と、池内さんは学者仲間から呼ばれている。研究のためチュニジアにしばらく滞在すると、バルドー博物館をイスラーム過激派が襲う。ブリュッセルの空港で国際線を乗り継ぐと、直後に爆弾テロが起こる。滞在先で意見交換する専門家の間では「池内が来るとやがて何かが勃発するから、要注意だ!」というやりとりまで交わされるのだ。

 何とも物騒な人物のように響くかもしれないが、端正な容貌の写真からもわかるように、いたってまっとうな、物事の本質を追究する学者の中の学者、それが池内恵さんだと思う。ついつい現場に出くわしてしまうのは、勘がよく、しかも情報・情勢の分析力が限りなく高いので、自然とホットスポットに足が向いてしまうからだ。おそらく、自分でもそうとは意識しないうちに“現場行き”を決めてしまうこともあるのだろう。

 そう言えば、2011年、「アラブの春」がエジプトで拡がった際には、ムバラク政権崩壊後に3月11日からタハリール広場を見下ろすホテルに滞在していたところ、今度は日本の東日本大震災が起こった。中東の政府系メディアが「アラブの春」から国民の目をそらすために日本についての報道を“利用”するさまを、つぶさに見ることになったという。

 的確な分析には材料が必要で、日々刻々のニュースから専門論文まで、これほど海外の情報に目を配っている専門家もそうはいないだろうと思える渉猟ぶりだ。アラビア語や英語その他の文献を幅広く読みこなし、正しい問題意識と鋭い懐疑心をもって分析し、新潮社のウェブ「フォーサイト」や自らのSNSで連日発信する。中東に関する何かが起こったとき、池内さんの判断をまず読みたいと思い心待ちにする人が、いまや万、いや十万以上の単位で存在する。

 そんな彼と、専門家と呼ばれる人たちすら信じ、また唱える俗論について話をしていた時、代表例として出てきたのが、2016年でちょうど100年となった“悪名高い”協定「サイクス=ピコ」だ。現在の中東の大混迷のすべてについて、メディアに登場してはこの協定に原因を求める半可通が何人いることだろう。ここは、歴史の深い読み方と、混乱を極める国際情勢の正しい観察法を、ハンディに伝えられる本を作ろうと意見が一致した。池内版「中東ブックレット」誕生の瞬間である。

 これからも、池内さんの知見を惜しげもなく披露してもらい、目からウロコの落ちる、本格的でかつ読みやすい書籍を新潮選書から送り出していきますので、どうかご期待ください。

2016/12/16

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著者プロフィール

池内恵

イケウチ・サトシ

1973年、東京都生まれ。東京大学先端科学技術研究センター准教授。東京大学文学部イスラム学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(大佛次郎論壇賞)、『書物の運命』(毎日書評賞)、『アラブ政治の今を読む』、『イスラーム世界の論じ方』(サントリー学芸賞)、『中東 危機の震源を読む』、『イスラーム国の衝撃』(毎日出版文化賞特別賞)、『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』などがある。第12回中曽根康弘賞優秀賞受賞。

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