『十五少年漂流記』への旅
1,100円(税込)
発売日:2008/05/23
- 書籍
旅する作家、座右の書。世界的ベストセラー冒険小説の謎を追った大紀行!
十五人の子供たちが漂着した無人島のモデルは、およそ一世紀の間、マゼラン海峡にあると信じられていた。が、記述とそっくりな島が実はニュージーランドにもあった!? 果たしてヴェルヌは、どちらを意図して書いたのか。物語の背後に隠された作者のメッセージを読み取りながら、南太平洋に「あの島」を探した3万キロの旅。
一、小さくて多すぎるいやらしいものたち
二、アレウト族の鼻の横骨
三、マゼラン海峡へ
四、ハノーバー島への航海
五、アザラシの吠える声
六、絶海の孤島で何を食うか
七、太平洋ひと回り
八、世界でここだけしかない時間を持つ怪し島
九、漂流者をのせてさまよえる島
本書で紹介された本
書誌情報
読み仮名 | ジュウゴショウネンヒョウリュウキヘノタビ |
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シリーズ名 | 新潮選書 |
雑誌から生まれた本 | 考える人から生まれた本 |
発行形態 | 書籍 |
判型 | 四六判変型 |
頁数 | 208ページ |
ISBN | 978-4-10-603604-0 |
C-CODE | 0395 |
ジャンル | 文芸作品 |
定価 | 1,100円 |
関連コンテンツ
担当編集者のひとこと
椎名さんの頭に刷り込まれた「超名作」の謎とは?
「本の雑誌」の編集長でもある椎名誠さんは、大の本好きであり、スグレた書評家でもあることは、皆さんご存じのことでしょう。「週刊文春」の連載コラム「風まかせ赤マント」などでも「最近、胸躍る本」を突発的に紹介したり、不定期連載ながら、岩波書店の「図書」でも、けっこう長文の書評を書いています。
そうした原稿で取り上げられるのは、意外にも(文系かつ体育会系の作家なので)、理系や自然界をテーマにしたものが多いのです。中でも十八番(おはこ)のテーマが、「漂流」「遭難」「冒険」モノ。古今東西、海や山、自然の中で、意図せずにさまよってしまう個人やグループの話であったり、すごい場所やすごい物を探しに行く冒険譚です。
例えば最近、「すげー、面白い本があるんだよ」とツヨく推していた本を2冊挙げると、漂流モノでは、『凍える海 極寒を24ヶ月間生き抜いた男たち』(ヴァレリアン・アルバーノフ、海津正彦訳、ヴィレッジブックス)、冒険モノでは――手前味噌になりますが――『コンゴ・ジャーニー』(レドモンド・オハンロン、土屋政雄訳、新潮社)です。内容紹介は書き出すと長くなるので、書店でぜひ手にとってください。いずれも、ノンストップ・ノンフィクションでコーフン間違いなしです。
さて、「生まれた瞬間、見たモノを親と思う」と言ったのは、ハイイロガンの雛を観察した動物学者ローレンツですが、ヒトの読書傾向もこれに似ているような気がします。初めて読んだ本は、大なり小なり、今の自分の人生に影響を与えるのではないでしょうか。椎名さんが小学校の図書館で初めて読んで感動した1冊が、今回の本のテーマでもある、ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』でした。これが決定的な経験となり、椎名さんは世界各地の秘境を旅する作家となって、今でも頻繁にテント生活を楽しんでいます。そして、今に至るまで膨大な数の「漂流」「遭難」「冒険」本を読み、かつ探し続けています。
「もう何度読み返したか分からない」と言う『十五少年…』ですが、いつかモデルになったと言われる南米の島へ行くのが椎名さんの密かな夢でした。その夢がとうとう叶い、かつ、この名作に隠された「謎」を解明しに南太平洋をグルリと回ってしまう……というのが、今回の紀行文です。
が、実はこの本には、もうひとつのテーマがあります。今まで椎名さんが読んできた「漂流」「遭難」「冒険」本の数々がコンパクトに紹介されているのです。この本の編集中にそのことに気づき、校了間際になって、巻末に「この本で紹介されている本リスト」を付しました。
最後に、いつもこのテの話になると出てくる椎名さんの決まり文句を紹介します。
「本当に迫力のある漂流物語は、帰還できなかった人たちの話なんだよなあ。帰って来れなかったから、それは無理なんだけど……」
さらにもうひと言だけ――。300冊ほどの単行本を出してきた彼にとって、この本は初めての「選書」です。「新潮選書」は、大人のためのシリーズです。年若き頃、『十五少年漂流記』をワクワクしながら読んだ大人の読者にこそ、楽しんでいただきたい1冊なのです。
単行本刊行時掲載
2016/04/27
著者プロフィール
椎名誠
シイナ・マコト
1944(昭和19)年、東京生れ。東京写真大学中退。流通業界誌編集長を経て、作家、エッセイスト。『さらば国分寺書店のオババ』でデビューし、その後『アド・バード』(日本SF大賞)『武装島田倉庫』『銀天公社の偽月』などのSF作品、『わしらは怪しい探検隊』シリーズなどの紀行エッセイ、『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)『岳物語』『大きな約束』などの自伝的小説、『犬から聞いた話をしよう』『旅の窓からでっかい空をながめる』などの写真エッセイと著書多数。映画『白い馬』では、日本映画批評家大賞最優秀監督賞ほかを受賞した。