女による女のためのR-18文学賞

新潮社

選評

第22回R-18文学賞 
選評―友近氏

ややこしい関係の中で光る魅力

友近

「子供おばさんとおばさん子供」を友近賞に選びました。私は物語を読んでいて、関係性がややこしかったり、生い立ちが複雑な登場人物が出てくると、「おっ」と興味をひかれてしまうんです。この子はどうやって成長していくのかなと気になってしまう。そういった設定が好きな私にとって、この作品は冒頭から前のめりでエンジンがかかりました。
 主人公は母親を亡くした女性。父親は十年前に離婚しておらず、母親と暮らした古い家に一人で住んでいます。そんな主人公のもとに、父親の再婚相手の連れ子である少女が、遊びに来るのですが、とにかくこの少女が面白い。彼女はまだ九歳なのに、義姉との微妙な関係性を物ともせず、敬語を巧みに扱い、料理や掃除までこなしてしまうんです。
 そんな少女の姿に最初は「複雑な環境下にいながら、どうしてそこまでまっすぐに生きていられるのか。全世界の同級生の中で人生経験一番してるだろうなぁ」と感嘆しつつ、疑問に思うのですが、彼女の魅力に惹かれるようにぐいぐいと読めてしまう。
 そして物語の中盤、少女は亡くなったおばあちゃんの幽霊に会いたくて、義姉の家に遊びに来たことを打ち明けるのです。古い家なら幽霊が出ると信じていることも。
「これこそが子供! しかも純粋で間違ってなくて、やっぱりこういう環境下にある子はおばあちゃんが好きなのよ! わかる、わかる!」と大きく共感。ほっとしました。大人びた少女の謎が分かって気持ちよかったです。
 視点人物は主人公の女性であるのにもかかわらず、私は最後まで少女にフォーカスを当てて読んでしまいました。それくらい彼女が魅力的だったのだと思います。展開が楽しく、爽快な読み心地でした。
 優秀賞を受賞した「鬼灯の節句」はタイトルにまず興味を惹かれました。「鬼灯」の文字を見た瞬間に、堕胎の話かなとぴんと来たんです。五社英雄監督の映画『吉原炎上』で、鬼灯を使ったシーンがあったんですよ。映画では女郎が堕胎するために鬼灯の芯を使うことを教えられ、冷たい川に入るのですが、タイトルからそういったことを想像していたので、作品でも妊娠した主人公が、鬼灯を食べて、冷たいお風呂にどぼんと飛び込むラストを読んだときには、感情を揺さぶられてしまいました。
 図書館で見つけた本を読んで鬼灯を食べて堕胎する方法を知った主人公は、自宅の玄関にある鉢植えの鬼灯をぼうっと眺めるのですが、彼女のおばあちゃんはそれを見た瞬間に孫の妊娠を察知するんです。恐るべし、おばあちゃんの察知能力。命の尊さを教えるおばあちゃんであってほしいという気持ちもあったのですが、主人公のしたいようにさせてあげることを選んだ、その選択もわかるな、新しいなと思いました。秋田弁や、じゅんさい小屋など、地方の感じを出すのもとても上手で、その世界観に引き込まれて読みました。(談)