新潮社

2023 賀正 新潮社

いつだって、出会ったときが最新刊

「40代になってようやく漱石適齢期に入りました」とは、あるエッセイストの言葉。著者の執筆時の年齢で読むというのが彼の主義。

ある作家は、「古希過ぎて『赤毛のアン』を初めて読んだが、大いに感動した。いい物語との邂逅に年齢は無関係」と言います。

夢を膨らませる時期、力を蓄える時期、人生を振り返る時期……。書物は、人生の様々な局面に応じて知恵や勇気や癒しをくれます。

何十年も前に書かれた小説、遠い外国のノンフィクション、一昔前のエッセイ、大正期の詩集――。
よい書物は私たちに寄り添い、箴言をささやき、背中を押してくれます。

昔刊行された本でも今月の新刊でも、出会った時が一番のタイミング。
今年も書店の棚いっぱいに並んだ新潮文庫3000点は、未来の読者に連れて帰ってもらうのをドキドキしながら待っています。

紹介した5冊

老人と海

ヘミングウェイ/著、高見浩/訳

八十四日間の不漁に見舞われた老漁師は、自らを慕う少年に見送られ、ひとり小舟で海へ出た。やがてその釣綱に、大物の手応えが。見たこともない巨大カジキとの死闘を繰り広げた老人に、海はさらなる試練を課すのだが――。自然の脅威と峻厳さに翻弄されながらも、決して屈することのない人間の精神を円熟の筆で描き切る。著者にノーベル文学賞をもたらした文学的到達点にして、永遠の傑作。

572円(税込)

未来いそっぷ

星新一/著

時代が変れば、話も変る! 語りつがれてきた寓話も、星新一の手にかかるとこんなお話に……。楽しい笑いで別世界へ案内する33編。

737円(税込)

ビタミンF

重松清/著

38歳、いつの間にか「昔」や「若い頃」といった言葉に抵抗感がなくなった。40歳、中学一年生の息子としっくりいかない。妻の入院中、どう過ごせばいいのやら。36歳、「離婚してもいいけど」、妻が最近そう呟いた……。一時の輝きを失い、人生の“中途半端”な時期に差し掛かった人たちに贈るエール。「また、がんばってみるか――」、心の内で、こっそり呟きたくなる短編七編。直木賞受賞作。

737円(税込)

しあわせのねだん

角田光代/著

最新の電子辞書にえいやと24000円を払ったら、品物と一緒にうたぐりぶかい自分がついてきた。アジアン定食8NZドルで寛容に触れた。人助けにと出した1000円には今も怒りが収まらない。生きていれば自然とお金は出ていって、使いすぎればサイフも気持ちもやせるけれど、その全部で私は何を買ったことになるんだろう。家計簿名人のカクタさんが、お金を通して人生の謎に迫る異色エッセイ。

649円(税込)

暇と退屈の倫理学

國分功一郎/著

「暇」とは何か。人間はいつから「退屈」しているのだろうか。答えに辿り着けない人生の問いと対峙するとき、哲学は大きな助けとなる。著者の導きでスピノザ、ルソー、ニーチェ、ハイデッガーなど先人たちの叡智を読み解けば、知の樹海で思索する喜びを発見するだろう――現代の消費社会において気晴らしと退屈が抱える問題点を鋭く指摘したベストセラー、あとがきを加えて待望の文庫化。

990円(税込)
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