ホーム > Web日本鉄道旅行地図帳 BLOG 悠悠自鉄 > その他 > デジカメの効用 被写体を見ないで撮る
デジカメの効用 被写体を見ないで撮る

 先日東急大井町線下神明駅ホームから東海道新幹線の撮影を試みました。1年ほど前、下神明駅の階段から品川方面から坂を登ってくる名古屋方面行き新幹線列車がよく見えていたので、階段窓から撮影しようと思ったのです。

 行ってみると下神明駅は大工事中で、窓はなくなっていました。ではホームの壁越しに撮ろうと思ったのですが、背伸びをしても目線が壁の上に行きません(身長は178センチ)。架線柱が立っている場所に壁の切れ目があり、そのわずかな隙間から、新幹線の高架がちょっとだけ見えます。
 デジカメによっては液晶画面が下を向いて、高く掲げても狙った構図を見ながら撮影もできるようですが、私のデジカメの液晶画面は動きません。こういうケースは今までにもありました。それでまずカメラを壁の上に持って行き、適当な方向に向けてシャッターを切ります。その画像を見てズームを調整し、カメラの角度を左右上下に調整しながら確認します。
 何回か調整を繰り返しているうちに、架線柱の隙間からN700がちらりと見えました。右手が覚えた方向にカメラを差し出し、ゆっくりとシャッターを切りました。それが下の写真です。
20140430_01.jpg 20140430_02.jpg
20140430_03.jpg 20140430_04.jpg
20140430_05.jpg
 見えないながらも少しずつ角度を変えています。ファインダーを覗いて撮影しても、車両の顔が架線柱にかかることがあるのに、この時はうまく撮影できました。
 自慢話はさらに続きます。この「見ないで撮影」することを覚えたのは、平成18年に中国の青蔵鉄道でチベットのラサに向かっていたときでした。この年、青蔵鉄道が5000mの峠を越えてラサまで開通しました。何年も前からラサまで開通したら乗りに行くと決めていましたので、開業から1ヶ月も経たないうちに乗りに行きました。
20140430_06.jpg 5000mの高地を走る列車ですから窓が開かないことは覚悟していました。車内の気圧を調整しているとのことでした。乗車してみると確かに窓ははめ殺しになっていました。2日間煙草が吸えないのかと覚悟をしましたが、そこは中国、そんなことはありませんでした。トイレの窓がわずかに開くんですね。定期的にトイレに行って、煙草を吸っていました。トイレで煙草を吸うのは軽い罪悪感がありますね。
 2日目のお昼頃だったか、標高5068mと発表されている駅に近づいてきました。世界最高所の駅です。その唐古拉(タングラ)という駅が近づいて来たとき、窓が開かないことの重大性に気づいたのです。列車は停車しません。
 世界最高所の駅の写真をどうしても撮影したい。窓は開かないし、ドアも開かない。それで思い出したのが、わが喫煙所であるトイレの窓でした。外側に30度ぐらい開きます。カメラを持ってトイレに入りました。
 ストラップを腕に通し、ちょっと背伸びをしながら開けた窓の隙間からデジカメを差し出してみました。手を捻りながらなんとかデジカメを外に出せるぐらいの隙間でした。1回シャッター切っては確認し、ということを何度かやっているうちに、列車が停車しました。駅かと思いましたが、駅の手前でした。幸運だったのは、ここから右に急カーブして駅に進入するところで、対向列車がすでに駅に停車していたのです。肉眼では見えなかったのですが、デジカメがそれを教えてくれました。
 満足な写真ではありませんが、開業間もない「世界最高所の駅」の写真を撮影することができました。
 最高地点(5072m)を過ぎてからさらに6時間近く標高4000m台の高原を、右に左にカーブしながら列車はラサに向かいました。なんとかこの景色をガラス越しではなく、カメラに収めたい。それでまたトイレに行き、さきほどいろいろ苦労した経験を活かして撮影したのが、下の写真です。この旅行中で会心の写真を撮ることができました。デジカメだから撮ることができた写真ですね。
 これはフィルム世代ならではの「感動」です。
20140430_07.jpg
追伸
 「dategaseki42」さま、静岡鉄道駿遠線の廃止日についてご指摘ありがとうございました。ご指摘の通り新藤枝〜大井川間の廃止は8月1日です。その他の廃止日も最終日の日付が入っていました。早急に訂正いたします。

編集部 田中比呂之(ひろし)

2014年04月30日   その他 / 関東

PAGE TOP