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幸福駅の再建にちょっと複雑な気持ち

 久しぶりに北海道の話題を書きたいと思います。広尾線幸福駅が建て直しになるというニュースを最近耳にしました。廃線になった路線の駅舎が建て直しになるという話は初耳のような気がします。現役の名駅舎もうかうかしていると壊されてしまう時代に、なんと「幸福」なことかと思います。

 このブログでも何度か書いたような気がしますが、生来の天の邪鬼で、みんなが注目するところには行きたくないという気持ちが強く働きます。それで布原や銀山など同世代がせっせと通って、格好いい写真を撮ってくるのを横目に、C58やC11などを撮影地でもないところで撮って満足していました。今思えば、それがどれだけの価値がある行為だったか疑問です。
 教科書よりも時刻表が好きでしたから、広尾線幸福という面白い名前の駅があることは知っていました。いずれちょっと寄ってみようか、ぐらいには思っていましたが、突然全国的な脚光を浴び始めたのです。NHKは今も昔も日本人の生活に絶大な影響力を持っていますね。「新日本紀行」という番組で、この幸福駅が取り上げられたばかりに、大ブームとなり観光客が押し寄せました。こうなったら私の出番ではありません。友人知人に「幸福駅には行ったのか」と何度となく聞かれて辟易しました。
rgkou.jpg▲広尾線最終日のさよなら列車 撮影:RGG
 広尾線にはいつか乗る機会があるだろうと思っていましたが、それも果たせず昭和62年に廃止になりました。幸福駅も廃止です。廃止になれば忘れられるというのが、廃線の宿命ですが、この駅だけはそうではなかったのですね。廃止後も観光客が絶えず、駅舎というより待合室はそのまま生き残りました。写真を見てわかる通り、建物に生気があります。使われなくなった建物はすぐに生気を失いますが、この待合室は生きています。廃止から四半世紀を経過して、なお生き生きとしているのは、希有な例と言えるでしょう。
0000001900.jpg▲解体前の幸福駅 投稿:KINUさん
 それでも廃線の駅の待合室です。老朽化すれば取り壊しでしょう。それが建て直し。しかも現在の建物に使われている材料をできるだけ活かすというのです。それほど観光客が来るなら、広尾線を観光路線として活かす手はなかったのでしょうか。
 皮肉なことに現役時代から、多くの観光客が車でこの駅を訪ねてきたそうです。いまブームになっている「あまちゃん」のロケ地にも車で訪れる人が多くて、三陸鉄道の利用者がそれほど伸びていないと聞いたことがあります。
 車で訪れる観光客のために廃線になった駅の待合室を再建する、これほどの皮肉はありません。

編集部 田中比呂之(ひろし)

2013年09月12日   北海道   タグ : 広尾線

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