7月に入って、この秋から運行されるJR九州の豪華クルーズトレイン「ななつ星in 九州」の車両が、工場から相次いで九州に回送されました。新しい車両は、常にファンから注目されます。しかも今回は機関車も客車も厳重にラッピングされて回送されました。ただでさえ超豪華列車として話題になっているのに、その姿がはっきりとわからないので、焦らされて、ますます想像をかきたてられます。
私も少なからず興味を持って注視しています。というのも、この「ななつ星in 九州」(以下「ななつ星」)の運行開始に合わせて、「日本鉄道旅行地図帳」九州・沖縄編の改訂版を出す予定だからです。2009年4月刊行以来、すでに4年が経過し、九州新幹線全線開業や新駅開業もあり、企画ページの刷新もしなければなりません。「ななつ星」のようなあらたな展開は、内容を刷新するよい機会です。9月の発売を予定しています。
「ななつ星」の豪華車両の紹介もできるだけ詳しく掲載したいと思っております。その豪華さでは、日本の鉄道車両史上でも屈指の車両になることは間違いないでしょう。発表されている車両の豪華さを見て、これは是非「イ」を復活させて欲しいと思いました。
▲東京鉄道管理局発行の絵葉書(東京下関間特別急行列車ニテ)
▲(左)鉄道省発行の絵葉書集「FAIR JAPAN 麗しの日本」より (右)南満洲鉄道発行「特別急行列車あじあ」より
50歳代の半ばを過ぎた鉄道ファンですが、「イ」のついた車両を知らない世代です。子供の頃に見た特急「こだま」には、確かに「1」と表示されたパーラーがついていましたが、形式はクロ151でした。「ロ」が1等車でした。昭和35年にそれまでの1等を廃止して、2等と3等をそれぞれ格上げして1等と2等にしました。しかし記号は変わらず、「ロ」と「ハ」のままにしたのです。昭和44年にはその1等を「グリーン車」に、2等を「普通車」にして今に至っています。
JR東日本が新幹線E5系に「グランクラス」という車両を連結しました。これなどグリーン料金の倍額を取るわけですから、「イ」をつけてもいいところですが、そもそも新幹線車両にはイロハの記号がついていません。
例えば「ななつ星」1号車には、オープンデッキこそありませんが、大窓ガラスが入ったダイニングカーがあります。これなど「テ」と「イ」と「シ」、それに重量記号は「マ」でしょうか、この組み合わせにしたらどうでしょうか。その他の車両も贅を尽くしているのですから、是非「イ」を使ってほしい。戦前と同様、誰もが乗れる列車ではないからこそ、「イ」が似合います。
JR化後、国鉄の象徴でもあった「つばめ」を走らせてファンを驚かせたJR九州のこと、「イ」を復活させるぐらいのことはできると思いますが、いかがでしょう。
編集部 田中比呂之(ひろし)