昨年7月に最終巻となる第12巻を刊行して完結した『プリニウス』ですが、嬉しいニュースが飛び込んできました。なんと、今年度の手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞いたしました! これも読者の方々のご支援・ご声援があってこそ。あらためて感謝申し上げます。
以下、作者ふたりの受賞コメントです。
【ヤマザキマリ】
『テルマエ・ロマエ』の連載中から次作として描こうと決めていた大プリニウスですが、彼が生きた二千年前の世界や思想を二次元でどう蘇らせるか、読者にどれだけ興味を持ってもらえるか、まるで古代ローマからの使命を司っているような気持ちで描いてきた立場として、今回の賞は大変栄誉なことです。全ての道、つまり漫画の道もまた「ローマに通ず」。
【とり・みき】
物心ついたころ、最初に「面白くて怖くて、でも切ない不思議なマンガ」と認識したのが鈴木出版版手塚治虫全集の『大洪水時代』と『太平洋X點(ポイント)』のカップリングでした。やがてそのひねた少年は長じてマンガ家になるわけですが、そのきっかけになった新人賞の審査員の一人が手塚治虫でした。めぐる因果を喜ばないわけがありません。
2021年7月9日に、「プリニウス」第11巻が発売となりました。本巻では、プリニウスの少年時代から青年時代までを描きます。
北イタリアの街・コムムで生まれ育ったプリニウス。アルプスの麓にあるその街は、森と湖に囲まれた自然豊かな景勝地。そこでプリニウスは動物や昆虫、植物と触れ合い、世界を観察する悦びに目覚める。当地で、親友との悲しい別れを経験したプリニウスは、帝都ローマへ。青年となったプリニウスは、書物に没頭し、学問に明け暮れる日々を過ごす。さらに心惹かれる女性も登場するが......
そしていよいよ2022年春に発売予定の第12巻で、物語は終幕を迎える予定です。さて、どのようなラストが待っているのか――。お見逃しなく!
第10巻のカバーは、藝術を愛した皇帝ネロ鎮魂の意もこめて劇場に(モデルはマルケッルス劇場)。奥に見えるは、レバノン杉。周囲には、何やら不穏なモノが蠢いています(ぜひ実物を手に取って確認してみてください)。そして帯に登場するのは、インコです。作中では、「オウムのアケロン」として登場。 皇帝ネロの寵愛を受け、彼の話し相手、唯一気の許せる友と言える存在でしたが...。冠羽のあるものがオウムで、作中登場するアケロンは、冠羽がないので正確にはインコとなります。また、「アケロン」という名前はギリシア神話に出てくる冥府の川、つまり正者と死者の境界を流れる川のことで、さしづめ日本だと「三途の川」でしょうか。このあたりも、第10巻のネロの運命を象徴するネーミングとなっています。
『プリニウス』の第10巻が、9月9日(水)に発売されます! 「皇帝ネロのもとに続々と届く、反乱蜂起の報せ。側近の裏切り、過去の因縁がネロを窮地に追い込む。一方、プリニウス一行は、神話の森を抜けて、砂漠の都市・パルミュラへ――」。第1巻での登場から物語を盛り上げてきた皇帝ネロ。いよいよその最期が描かれます。
また、第10巻刊行を記念して、9月13日(日)19:00~ヤマザキマリ&とり・みき両氏によるトークをオンライン配信いたします。詳細およびお申込みは、下北沢B&Bのホームページにてご確認ください。http://bookandbeer.com/event/20200913b_plinius/