万葉集であるく奈良/またいつか歩きたい町―私の町並み紀行―/沖縄 琉球王国ぶらぶらぁ散歩/荒木経惟 トーキョー・アルキ
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とんぼの本編集室だより 2024/05/03
\編集部おすすめ本/
うららかな春の日差しの下、あちこちを散歩しよう。おススメの4冊です。
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飛鳥、藤原、平城京――
古都をめぐるタイムトラベル
『万葉集であるく奈良』
上野誠、蜂飼耳、馬場基/著
〈コラム〉
奈良に恋をする
とんぼの本編集室

 現代を代表する『万葉集』研究者の上野誠さんは、本書の中で「日本の詩歌の原点は、土地を褒める、その土地に立ったときの感動を歌うというところにあるのです。それは日本という土地への恋そのもの」と語っています。
 なるほど『万葉集』には日本各地の地名が登場します。なかでも、奈良の地名が登場する歌は全約四千五百首のうち約九百首におよびます。なぜなら、ちょうど『万葉集』の歌が詠まれた時代、都は大和盆地のなかを転々としており、その都を中心に文字の文化が発達し、日本の歌の文化は育まれていったからです。
 本書はそんな“日本の歌のふるさと”奈良を美しい撮り下ろし写真と万葉歌でたどるものです。特に三つの古都――石像や古墳が古代ロマンを伝える飛鳥京、たった十六年の都・藤原京、虚空の宮跡を抱える平城京――を軸に案内します。

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 たとえば飛鳥川に三輪山。若草山に生駒山に多武峰。千三百年以上昔の人々がその心情を投影した山河は、いまも変わらずそこにあります。華やかなりし都の遺構もあちこちにのこっています。上野さんは、『万葉集』を歌で綴られた写真アルバムのようなものだといいます。万葉歌を口ずさみつつ、古代の人々が歌にスナップした土地を実際に訪れれば、「その土地に立ったときの感動」を追体験できるのではないでしょうか。それは心動かされる光景に出会い、スマホで写真を撮り、SNSで投稿する、そんな現代の私たちの感覚に通ずるものなのかもしれません。

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 ところで本書の元となった「芸術新潮」2010年の特集は、平城京遷都千三百年を記念して組まれたものです。前述したように、『万葉集』が詠まれた時代、特に710年の平城遷都にいたるまでの間、都は大和盆地のなかを頻繁に移動していました。なぜならば都とは天皇がいますところを指し、天皇があそこへ行きたいと言えば、都はすぐにそこへ移り、天皇が旅すれば、そこは都――というものだったからです。つまり「遷都」は天皇の権力を示す行為であり、都とは物理的には常にかりそめのものでした。その転々とする都の歴史と、歴史のうねりのなかで転々とする人々の哀歓も、上野さんがたっぷり説明してくださいます。

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 さらに上代文学に親しむ詩人の蜂飼耳さんは「春過ぎて 夏来るらし白たへの 衣干したり あめ香具山かぐやま」でもおなじみの天香具山、さらに畝傍山うねびやま耳成山みみなしやまを加えた大和三山を、眺めるだけでなく、実際に登山し、紀行文を寄せてくださいました。藤原京を囲む、穏やかな三つの山の頂から見える光景とはどんなものだったのでしょう。
 奈良文化財研究所の馬場基さんは、平城京などで出土した木簡と万葉歌から、当時の人々の暮らしぶりを楽しく解説してくださいました。恋に仕事に精を出しつつ、ときにボヤキのような歌も詠む。生活実感のこもった歌の数々には思わずクスッとしてしまいます。
 是非本書片手に、遥か古代の人々と心かよわす旅へお出かけください。
 

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『万葉集』約4500首のうち、奈良を詠んだ歌は約900首。古代ロマン溢れる飛鳥、たった16年の都・藤原、虚空の宮跡を抱える平城(なら)。3つの古都を軸に、万葉びとが情感豊かに詠った日本のふるさとを歩く旅へ。名峰「大和三山巡り」や木簡と歌から当時の生活を知るコラムなども充実。
書籍詳細・試し読みへ
いい人、いい宿、いい町並みのあるところへ
『またいつか歩きたい町―私の町並み紀行―』
森まゆみ/著
「生きている町」には、昔からの住民も移住組も旅人も、みんなが気持ちよく居られる場所がある。秋田・増田町、富山・城端、島根・大森町、兵庫・塩屋町、愛媛・内子町、大分・臼杵市……古い町を愛してやまない著者が、何度でも訪ねたい、奇跡のような景観がのこる12の町を案内する。
琉球王国の精神と歴史を訪ねる旅
『沖縄 琉球王国ぶらぶらぁ散歩』
おおき・ゆうこう、田名真之/著
珊瑚礁の浜辺を舞台に語り継がれた不思議な伝説、世界遺産の壮大な遺跡、祈りの文化が今も宿る風景――「沖縄県」と呼ばれる以前、この島は独立した「琉球王国」として豊かに繁栄していた。その波乱に満ちた歴史と、不思議な神話とが入り交じる遺跡を訪ねながら、島の魂に触れるガイド。
国民的写真家が、こよなく愛する街・東京を歩く!
『荒木経惟 トーキョー・アルキ』
荒木経惟/著
高層ビルの谷間で、下町の路地裏で、山の手の住宅街で。アラーキーが歩けば、そこには夢と幸福が待っている。美女との出会い、子供たちの笑顔、昭和の再発見。「女はすべてすばらしい。街もすべてすばらしい」。散歩と路上写真の極意を名ショットと名言で綴る、かつてない東京案内。
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