◎千葉雅也「エレクトリック」(220枚)を発表する。あの年、阪神・淡路大震災とオウム事件が連続して起き、世界を根底から変えたインターネット革命の出発点である一九九五年の物語だ。自らの同性愛に気づきつつある高校生の主人公達也と、広告業で成功を収めた父(達也は父を「英雄」と、自らを「継承者」と呼ぶ)を軸に、達也は性的成長の冒険を、父はネットにより激変する事業環境の冒険をともにおこなう。
 
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2023年2月号(定価1200円)1月7日発売
新潮メールマガジン[2023/01/06] うまく表示されない場合はブラウザでご覧ください
編集長から
千葉雅也「エレクトリック」
中西智佐乃「狭間の者たちへ」

千葉雅也エレクトリック」(220枚)を発表する。あの年、阪神・淡路大震災とオウム事件が連続して起き、世界を根底から変えたインターネット革命の出発点である一九九五年の物語だ。自らの同性愛に気づきつつある高校生の主人公達也と、広告業で成功を収めた父(達也は父を「英雄」と、自らを「継承者」と呼ぶ)を軸に、達也は性的成長の冒険を、父はネットにより激変する事業環境の冒険をともにおこなう。そう、本作は時代の大転換期という歴史の次元と紐帯で結ばれつつも、実に爽快で胸躍る親子の冒険譚なのだ。千葉氏は、旧作の私小説的側面を引き継ぎながら、いま、決定的な切断と進化を遂げたのではないか◎中西智佐乃「狭間の者たちへ」(160枚)の主人公はサラリーマン男性。会社と家族というふたつの狭間で抑圧され、満員電車という肉体の狭間で一人の女子高生から「元気」を得ていた。切実だが危険な男の魂はどこに辿り着くのか。気鋭の全力投球にご注目を!

編集長・矢野 優
新潮2023年2月号表紙
目次

エレクトリック[二二〇枚]/千葉雅也
一九九五年、雷都・宇都宮。高校二年の達也は東京に憧れ、父はアンプの完成に腐心する。性と家族の旋律が高らかに響く気鋭の渾身作!
狭間の者たちへ[一六〇枚]/中西智佐乃
少年は大人になり、痴漢加害者になった。抑圧の連鎖に呑まれた生を繋ぎ止める飛翔作。
フィードバック古川真人
外部視覚装置でついに光を取り戻した妻の視覚。見えてきたのは不可視の社会の影だった。
■■ 連載小説 ■■
生活(九)[連載完結]/町屋良平
大使とその妻(十七)/水村美苗
漂流(四十)/町田 康
チェロ湖(四十二)/いしいしんじ
■■ 新潮 ■■
やどり龍青葉市子
エスニック風カウント石田夏穂
秋の祭りとフィリップ・ケーヌの舞台美術久保宏樹
ゴダールが海辺で自殺を語った日松浦 泉

■■ 本 ■■
◆筒井康隆・蓮實重彦『笑犬楼vs.偽伯爵』/大谷能生
◆山崎修平『テーゲベックのきれいな香り』/川本 直
◆大濱普美子『陽だまりの果て』/豊崎由美
◆多和田葉子『太陽諸島』/沼野充義
◆藤野可織『青木きららのちょっとした冒険』/山崎まどか

【対談】
「命のものさし」で歴史を測る斎藤真理子 黒川 創
『彼女のことを知っている』を契機に、四半世紀ぶりに集う韓国文学翻訳者と作家の対話。
ぼくはあと何回、満月を見るだろう坂本龍一
最終回「未来に遺すもの」
最後のピアノ・ソロ。日記のように生まれた新アルバム。今だから明かせる幾つかのこと。
精神の考古学(最終回)/中沢新一
第十部 いかにして人は精神の考古学者になるか
遂に明かされたアフリカ的段階の思想の本質。
弔辞 映画作家吉田喜重を追悼する蓮實重彦
嫉妬と階級の『源氏物語』(二)/大塚ひかり
温又柔『祝宴』を読む小竹由美子 長瀬 海
【リレーコラム】街の気分と思考(13)
ハシビロコウ川上弘美
「ここがあなたの場所よ」塩田千春
小林秀雄(九十二)/大澤信亮
地上に星座をつくる石川直樹
第百十三回・日常への帰還
見えない音、聴こえない絵大竹伸朗
第二一二回・途上の匂い
【私の書棚の現在地】
橋本輝幸編訳『Rikka Zine Vol.1』/【書評委員】高山羽根子
ダビット・サンデン『この本はよまれるのがきらい』/【書評委員】乗代雄介
第55回《新潮新人賞》応募規定 [ウェブ応募受付中!]
【選考委員】上田岳弘/大澤信亮/小山田浩子/金原ひとみ/又吉直樹


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「新潮」から生まれた本
「神」より上位の存在であるGODが美大の老教授の身体を借りて、公園に降臨した――。
『モナドの領域』筒井康隆/著
【第163回 芥川賞受賞作】記録したい、この島のすべてを。クイズが孤独な人々をつなぐ感動作。
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