「いつかジョン・チーヴァーを訳したいんだけどね」
村上さんは、海外文学の復刊・新訳を目指して作った村上柴田翻訳堂の柴田元幸さんとの解説セッションで、いつもそう語っていました。
でも、「いつか」と言いながら実はコツコツと、チーヴァーの短篇を翻訳していたのです!
本書の元となった原書は“The Stories of John Cheever”。チーヴァーの短篇をすべて収録した700ページ近い大著で、1979年度のピュリッツァー賞と全米批評家協会賞を受賞しています。村上さんはこの中から選りすぐりの18篇の小説とエッセイ2篇を選んで翻訳しました。
チーヴァーは50年代アメリカ東部を舞台に郊外に住む人々の憂愁を短篇小説に結晶させ、ニューヨーカー誌に多くの作品を発表しました。サリンジャーと同時代です。
村上さんは、「チーヴァーを抜きにアメリカ50年代の文学は語れない」と巻末に収録した柴田元幸さんとの解説対談で論じています。
まずは、どの短篇でもいいので読んでみてください。きっと現代の日本にも通じる何かを感じとっていただけるのではないでしょうか。
各篇すべてに、村上さんは短い解説文を書き下ろしています。翻訳者村上春樹の並々ならぬ熱意を感じます。